季節は梅雨、でも、気温は夏と同じように暑かった。そして梅雨のじめじめした湿気が組み合わさり、人々は汗を流して歩いていた。ふと、空を見上げればあまりにも大きく眩しい太陽がいた。蒼すぎる空は生意気にも雲ひとつ無かった。

それでも、二人は歩いている。彼は汗一つ掻いてはいなかった。しかも暑いのに学ランを着ているにもかかわらず。彼女はそれが不思議だった。ちらちらと横目で見る。本当に何で汗を掻いていないのだろうか。どこか汗が一粒でもないのだろうか。そう思いながら彼女は見る。それに気が付いた彼は横の彼女に顔を向ける

「ねぇ、何?」

「・・・暑くないんですか?」

「暑いよ?」

「でも、汗掻いてないじゃないですか」

「・・・・・」

「どうしてですか?」

「・・・さぁね」

「何ですかそれっ」

答えは出なかった。彼は誤魔化すかのようにニヤリと笑った。

小学生らしき三人が二人とすれ違った。いつもならランドセルを背負ってる子供たちは、片手にサッカーボールを持って走っていった。きゃっきゃっと楽しそうに、きっとこの先にある空き地に良くのだろう。

そんな三人を温かい眼で見た。自分にもあんな時があったなー。と、思いながら。

「あ。」

「ん?」

「そういえば、雲雀さんも小学生の時があったんですよね?」

「失礼だね。当たり前だよ。」

「・・・・・」

「何、その眼」

「いや、想像ができなくて・・・」

「うん。しなくてもいいよ」

と、また前を向く。それに少しムッとしながらも彼女もまた前を向いた。額に汗が滲み出る。

「・・・子供、かー・・・」

「・・・・」

「ほしいですー」

「・・・・・」

ぴたり、と、彼は止まった。彼女は数歩進んだところで振り返った。彼はそのまま止まったまま、彼女を見ている。その眼は少し動揺しているようだった。

「雲雀さん?」

「・・・・」

「・・・あのー」

「・・・うん。そうだよ。うん。」

「え?」

「なんでもないよ」

と、彼はまた歩き出した。彼女は不思議な顔をして彼の背中を長めながらまた歩き出す。少し距離ができてしまった。でも、彼女は歩みを速めようとはしない。額の汗は頬を伝い顎から落ちた。じりじりと太陽が彼女の体力を奪っていった。だが、彼はいつもと変わらず歩いている。そんな彼の肩でゆれている黒い学ランがよけい暑く感じる。足が重く、くらくらしてくる。

彼はそんな彼女に気が付いたのかスピードを落とす。そして珍しく

「ねぇ、大丈夫?」

と聞いてきた。

「は・・・ひ・・・」

「さっきまで元気だったのに」

「・・・そうでも無いです、よ・・・」

「・・・・」

彼は彼女の腕を引っ張って近くのコンビニに入った。店員がいらっしゃいませ。と最後まで言わず、顔がさぁっと青くなった。彼はミネラルウォーターを手に取り、何事も無かったかのように店を出て行く。彼女はその慣れた行動にいろいろ質問したくなったが、そんな力は残ってはいない。

「これ。飲みなよ」

「・・・・いいんでしょうか・・・」

「良いに決まってるよ」

「・・・すみません」

彼女は少し遠慮がちにペットボトルを受け取り飲んだ。乾いた喉が潤っていく。ごくごくと飲み干し、ぷはっと気持ちよく息を吐き出す。

「生き返りましたっ!」

「そう、それはよかった」

彼は少し微笑んでまた歩き出す。彼女もそれに続いて歩き出した。

 

その優しさに触れた時

胸が温かくなるんです。

 

あとがき

途中でネタ切れになって、100のお題で使えるんじゃね?ということで使いまわし(?)をしました。

はい。ま、いいや、あと少しだし・・・がんばらなきゃなー。