3年前。謎の少年が現れた。

3年後に人造人間がくると言って、また未来に帰っていった。

3年後、孫悟空が心臓病にかかった。

だが、あの少年のおかげで何とかなった。

そして、セルが現れた。

セルゲームが始まり、皆悪戦苦闘。

そして、孫悟空が自分の命と引き換えにセルを倒す。

だが、セルは死ななかった。

悟飯が倒した。

世の中は平和になった。

神殿から飛び降りた悟飯は家に一直線に向かう。

母親が出迎えてくれる。

父親の存在をさがす母親。

そして、泣き崩れる、女の人。

 

 

 

 

 

 

その日から、チチは元気がなくなっている。

眼が赤く腫れてしまい痛々しく、だが、子供には作り笑顔で笑う。

心の奥底では悲みが支配しているのだろうが、自分だけがつらいんじゃない。

目の前にいる子供も自分と同じ顔をしている。

ごめんね。

何も言ってあげられなくて。

ごめんね。

何も言おうとしなくて、ごめんね。

 

 

心の中で呟くが、口にはできなかった。

言ってしまったら、その瞬間泣いてしまうかもしれないから。

そして、分かってしまう。

やっぱり、あの人はいないんだ・・・・ そう思うと涙がまた溢れ出してくる。

どれくらい時が経っただろう。

どれくらい涙を流しただろう。

どれくらいあの人を思っただろう。

どれくらい子供に悲しい顔をさせてしまったのだろう。

「お母さん・・・」

悲しい表情のまま、話しかけてくる。

「んだ?どうした悟飯?」

こうして笑顔を作っていると、余計に泣きたくなってしまう。

「あのね・・・お父さん死んだの・・・・僕のせい・・・なんだ・・・」

今にも泣きそうな悟飯の声がチチの耳に入る。

「え・・・?」

いったい・・・どうゆう・・・ことだべ・・・?

「僕が・・・早くセルを・・・倒してさえいれば・・・っ」

とうとう悟飯は泣き出してしまった。

その様子をただ見ていることしかできない。

なんだ、そうだったのか。

子供は自分だった。

この子は、自分に遠慮して、ずっと一人で悩んでいたんだ。

自分の事にしか頭に入らずに、この子の気持ちをよく考えようともしなかった。

子供は、自分のほうだと気づいた。

自分は、この子の母親である事を忘れていてしまった

考えていると抱きしめていた。

「お母・・・・さん?」

びっくりした顔で呼ぶ。

「ごめんね・・・ごめんね・・・・!」

涙が溢れ出していた。

「悟飯ちゃ・・・ごめんだ・・っ」

今、自分がどんな顔をしているか分からない。

今抱きしめているこの子がどんな顔をしているのかも分からない。

だけど、今この悲しみを埋めていく方法を考えているだけだった。

「っ・・・お母さん・・・!」

その日の夜。

二人は声を上げて泣いた。

抱き合ったまま、あの人を思って。

どこからか、窓も開けていないのに風が吹いた。

やわらかく、自分たちを包み込むように。

 

『ごめんな。』

 

切なく。低く、呟いた。

二人は横を見た。

何も無い、だけど、安心するような感じが、一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、そこにあった。

いつの間にか涙は止まっていた。

二人は顔を見合わせて微笑んだ。

「悟飯ちゃん。明日、塾は無しで、一緒にどこかへ行こう?」

「はい!」

窓を開け、夜の星空を見上げた。

来てくれてありがとな、悟空さ・・・

その時、夜空に光る月があの人の顔に見えた。

さようなら

もう泣かない、あなたと会えるその日まで。

 

 あとがき

チチさんは強がってはいるけど、本当は弱かったりしたらいいと思うw
時々目の前が見えなくなってしまうときが絶対あると思う。
だって、母親の前に一人の女の人だから
でも、やっぱり自分は母親なんだって気づけばいいと思う。
セル戦は・・・・本当に切なかった・・・・