あれは暑い夏の日だった。傘を持っていてもやっぱり暑い。足はいつもの3倍重く。道のりも3倍長く思えた。

「畜生・・・この太陽のヤロー・・・テメ、後で殺してやるヨ・・・」

と、危ないことを口走りながらよろよろ歩いていたら前方には暑苦しい格好をしたアイツがいた。

「おい。」

「何だ、テメェか」

「テメェか、じゃねーヨ。何だヨその服。暑苦しいんだヨ。見てるだけで、死ねバカヤロー」

「いきなり来てなに言ってんだ。こっちだってなぁ、こんな暑苦しい服好き好んで着てるわけじゃねーよ」

「だったら脱げヨ」

「そりゃ無理だ」

「何でヨ」

「俺が脱いだら隊の奴らも脱ぐ。だから俺は脱がねぇ」

その言葉が何だかかっこよかった。

「ふーん・・・じゃ、あな」

途切れていった言葉は一歩踏み出したらぐらり、と頭が揺れた。地面に激突するだろう。あの暑いコンクリートの上に。

こりゃ死ぬな。と思ったがコンクリートの感触はない。だけど暑い。

「おい。お前もしかして日射病じゃねーのか?」

「・・・だったら、何ヨ」

日射病だが何だか知らないけど、お前には関係ない

「・・・ハァー。」

ため息を吐いて隊服を脱ぎだすコイツ。何だ、やっぱり脱ぐんじゃないか。その事実に少し悲しくなった。だけど、その隊服の上着を自分の頭にかけ、背中におぶられた。

「って・・・ちょ、」

「いいから、黙っとけ」

「・・・・・」

そう言った後、黙った。そして揺れる背中に頬をくっつけてみた。かすかにトクン。と心臓の音が気持ちよくて眼を瞑った。

今思えば、あの時に好きになっていたのかもしれない

 

記憶を辿って

ねぇ、あの日の事、覚えてる?

 

 

あとがき

土方さんはナチュラルに女の人を落とすと思うwという産物w