喉に切り傷が出来ているかのような悲鳴を上げられる。

高い天井に届くくらいではない、か細く縷々とした声が鳴り響く。

血生臭い体をこすり付けるようにして身体に触れる。血が滴りながらする情事というのは野生の獣を連想させる。

「うっ、ひゃ、やっ・・・」

ぴくっ、と反応したのは脇腹を手が掠めた瞬間。

微妙に似つかわしくない幼い表情が一瞬見え、腰に添えていた手を更に下に滑らそうとしたのをやめた。

止まった事にハルがこちらを不思議そうに見つめる。

人を殺した事に罪悪感などまったく無い。血まみれになりながら抱く事に、多少違和感に似たものは感じている。

この三浦ハルが、血に濡れるのは似つかわしくない。

そう思っている理性の部分と、興奮剤として性欲を発散させようとしている本能の攻防。

微妙な、不安定アンバランスな今の精神状態を揺さぶったのは、なぜか、

「・・・なんだ・・・?」

「へ・・・?・・・何、が・・・?」

思わず呟いた自分の中で生まれたしこりのような物体。

その真意を確かめるべく、何故か脇腹を手を滑らす。身体をよじって逃げようとして、表情はくすぐったさから逃れる子供にしか見えない。

「・・・・・・・・・」

「・・・ボス・・・?」

くすくすと笑いながら問いかける。

問いかけられても分からない。

もう一度脇腹を撫でると、あはっ、と声を出して笑った。

無邪気なその表情に、背筋がぶるっと震えた。

その事実に、瞠目するしかない。血が激流する。頭が思うように動かない。

腰をがしっ、と掴んで一気に動く。

「あぁっ!」

背中を反らせて悲鳴を上げる。一気に覚醒した女の表情に、自分自身を探るべく見つめる。

ふざけんな。

なんつー事に気が付いたんだ。

「・・・・ドカス、が・・・!」

 

 

 

ロリータコンプレックス2