高貴な血族を持っていると言っていたあの金色の王子さんはうちに定期的にやってくる。

あの日、ハルを手下と読んだ瞬間からハルはもうハルでは無く応じの手下という名前に変わってしまったんだよ。といわれた。

それでも、ハルは三浦ハルをこれまでずっとしてきたわけで。

そんな簡単に捨てられるほど軽いものなんかじゃないんです。と、3時間大口論をして、お前やっぱり変な奴。という言葉で締めくくられました。

ハルは勝手に三浦ハルを捨てる事は無いのだと解釈してそのまま。

そしてそのままから会いに来た回数三回、そして四回目の今日は真夜中。

王子さんは真夜中は忙しいと言ってたので珍しいです。

何でかお仕事だそうで。

ベッドに夢うつつに寝転がっていたハルをたたき起こす権利を持っているんです。

だって、彼は王子さんなんですから。

 

「なー、おいってば、てしたー」

あぁ、うん・・・。と寝返りを打ってうっすらと眼を開けると金色が夜の光に透けて光ってた。

ハルの眠りの邪魔をする王子さんは、ナイフをちらつかせる事は無くなった。

会いに来た二回目の時、本物の王子ならば女性にナイフを向けるのはマナー違反です。と言った。

王子だからいいのー。と、まったく理由になっていない理由をつけていたが、これまた3時間半という口論会によって勝利したハルの優勝トロフィーに似た結果の証だろう。

窓から侵入してくるのもマナー違反ですが、玄関から入って両親に見られるのも少し引ける。

王子は人に見られちゃ面倒だから。と言っていたので。

「なー、手下―」

ぺちぺちと頬を叩かれる。それが結構な威力で、ハルは渋々眼を開ける。

「・・・なんですか・・・も・・・」

「あそびきたー」

「・・・・・」

「ほら、賄賂。」

「・・・それ・・・」

「お前ケーキやったら何でもするんだろ?だから」

と、血の匂いをさせ、あまつ、白い箱に血をこびりつかせた箱を渡す。

上半身を起こし、その中身を見る。

ぐちゃぐちゃで、え、これもしかしてショートケーキだったものですか?と聞き返しそうになる。

だが、一番に言葉にしなくてはならないのはそれじゃなくて。

「この赤いのなんですか?」

「んー?血ぃ」

「・・・・・・返品します」

「返品できねーし」

うしし、と挟んで。

「悪徳です。」

血の匂いが部屋の中に充満するほど、匂いは濃くなかったが、手に持っていると分かるその匂い。

「手下、遊べ。」

「・・・・寝ましょう?」

「うわ、何それ。誘ってるとか?うける」

「あー、睡眠を・・・」

「トランプやろーぜ。うの、ってやつ。お前話してただろ」

下々の遊びって結構新鮮で楽しいんだよなー。といいながら、部屋の電気のスイッチをぱちり、

急に明るくなった部屋の中に瞳孔がびくびくっ、と反応。

うー。と唸って俯いて、光の加減に慣れようとしていると顎を掴まれる。

「寝るなよ?」

寝ませんってば、と言おうとすると、

「あー、けどやっぱそっちにしよっかな。」

どーしよ、手下。うしし、王子困ってるんだけど。

と、鼻と鼻を押し合いっこ。ぐりぐり、と。

その前の行動なんて何にもなかったかの如く。

光は王子さんの顔で影に、唯一光るのは彼の髪。

「きーめた。」

やっぱそっちにする。

ぱちり、

電気が消えた。

瞼の裏側でばちばちと暗闇と光で起こった線香花火

そしてまたあの感触。

 

開いた窓から見える月が、悪戯に笑っている気がした。

 

 

 

無作法の正当化について