ああ。

と、眼を細めて前を見る。ずっと先ばかり見ていた目を、元の視線に戻す。

まだ、だったか。

早すぎたのか。

触っている手をどけて、顔も首筋から離す。

真っ赤になって涙を流して困った顔をしている少女を優しく抱きしめる。

うわぁぁと泣き出した少女にちくりと胸が痛む。

膝の上で抱っこするように抱きしめているからか、どうしても子供のように見えてしまう。

「うっ・・・・うっ・・・」

「悪かった」

背中をぽんぽんと叩く。

そうすると首を横に振り続けて、耳元で嗚咽が混じりながら違うんです。と繰り返す。

それがとても痛々しく、もう手は出さないと決めた。

「悪かった・・・」

心から思った。

だから、もう泣き止んでくれ。

そう言うと更に大きな声で違うんです!と叫んだ。耳元だから鼓膜が揺さぶられ、さらに脳まで響いた。

「違う・・・んです・・・違う・・・」

また声が小さくなり、鳴き声と嗚咽しか聞こえなくなった。

それ以上、どうする事も許されず。ただ黙って抱きしめるしかなかった。

首筋に顔を埋めたら、いい香りが自分を支配した。

支配されるのに、こんなにも安心感を覚えるものなのかと知った。

俺がしようとしていた事は、支配されるんじゃなく、支配しようとしていた事。

いつになったら解禁なのだろうか。と、気づかれないように溜息を吐いた。

 

 

ロリータコンプレックス