世間で言う初体験というもの以上に、僕には初体験だった。

恋愛をしたのもしかり、触りたいと思ったのもしかり。

それ以上に、謝罪の言葉を述べた事が初めてだった。初体験。

残念ながら女の色っぽいものじゃなくて、ただ豪胆にそれがとても物珍しく、ありえない事だったから。

頭を下げて頭を撫でてもらう事よりも強烈・・・いや、そっちの方が強烈かも。

でも、いつか頭を下げて撫でられる日が来てしまうかもしれない。

三浦ハルと居ると予定が大幅に崩れてしまう。

受けの体制を持って、振られる日を待ち望もうと長期戦を覚悟したのに、その覚悟は一瞬にして消えうせてしまったり。

何か、狂ってる。

だけど、今現在は安心できる状態だ。

頭は撫でられては居ないが、こっちが撫でている。

「はひー」

これが罰です、なんて言って、膝に頭を乗せてゆるゆると相好を緩めている。

猫みたいなその顔をしてくれるというのならば、何日でも撫で続ける事が出来る。

「あうー」

耳をマッサージするようにやんわりと揉み解す。ぐり、と親指と人差し指で挟むと、ぴくっと肩が反応する。

楽しい。

猫みたい。

「あー」

やわやわと揉み解していると、頬を染めてうっとりとしている。

何か違う染め方のような気がするんだけど・・・

「ん、」

声も違う気がする。あっちの気がする。

少し確かめるのと、興味本位、もっと感じるのはどうかというのを模索する為。

耳の裏側を指で撫でる

「は、」

ズボンをきゅっと握られた。

どうしよう。自分でしといてなんだけど。

そう思っていると、頭を上げてこっちを見る。少し潤んでいる瞳。

「雲雀さん。」

咎められるのか。と思ったが、にっこりと笑って膝に乗っかってきた。

その行為に恥じらいを見せたが、それでも笑顔で誤魔化そうとしている。

「キス、してください」

そう言うと驚いた僕の眼に、さらに赤く染まった頬が眼に入った。

もしかして、また此処で僕は予定を狂わされるのだろうか。

頭を下げて、悲願しなくてはならないのだろうか。

唇を寄せて、熱い舌を絡ませて、離れた色っぽい顔。

「ひばり、さん・・・」

艶の入った声で呼ばれても、そっちは此処が駄目だという。絶対に学校では駄目だという。

試しているのかい?

僕が果実が重くなり、枝が撓るように落とせと。

「ハル、」

屈辱、だ。

 

 

 

女王様と下僕その3