雨が振り続けて二日間。外にも出られず、体力が有り余っている年頃の二人にはきつかった。
「なー。ハルー」
ティアラも無造作にベッドのしたに落ちてしまっているが、それすらハルも咎める元気が無い。
「なんですかー」
「じめじめしてやなんだけど。動きたいんだけど。」
「ハルもですー」
ごろり、と寝返りを打つとベルの脚が眼の前に見える。其れすらも受け入れてしまうほどだらける。
「ハルー。足舐めてもいい?」
「生クリーム塗りたくってですか?」
「せーかい。」
「べとべとするからヤなんですよねー」
手を伸ばして目の前にあるベルの足を抱き寄せる。すねの辺りに額がぶつかって少し痛かった。
「けどさー。なんか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・暇。」
「ハルもですー」
「おい。王子が暇だってんのに、何で何もしねーの」
「だってハルもやる気起きないんですもん。もう、動きたいの通り越してだらけちゃったんですもん。」
「・・・ま、王子もだけどさー」
うだうだと時間が過ぎるのを待ち、お互いの足を眺めあっているしかなかった。
時偶に、ベルがハルの足を舐めるのを注意していたのだが、何回かされると言うのをやめてしまった。
反応が無くなり、つまらなく思って歯形をつけてみたが何の反応もなし。
つまらなく思い、仰向けになって寝転んでも、薄暗い。灰色の天井しか見えない。
「ひー」
「まーですー」
二人で続けて言葉を発しても、何にもならない。
沈黙の音は雨の音と化したこの二日間で、また雨の音しか聞こえなくなってしまった。
そんな部屋にノック音が響いた。
「どうぞー」
そうやる気の無い声で許しを部屋の主の替わりに告げると、ドアが開かれ、マーモンがむすっとした顔でやってきた。
「君達二人、だらけてるね」
「だってー。」
「暇なんですもんー」
「だろうね。じめじめしすぎて僕の部屋に茸生えてきたんだけど。」
見せたのはシメジくらいの茸。ハルがはひー。と力なく発する。
「何てデンジャラスなんでしょう」
「何が。」
「食えば?せっかく生えてきたんだし。節約節約―」
「嫌だよ。じゃあ君の料理に混ぜとくよ」
「は?ヤだし。日本人は風呂場に生えた茸食べて節約してんの見習えば?」
「日本人はそんな事しませんー」
うつぶせになって枕を抱えながらそう言われ、あっそ。とベルも寝返りを打った。
二人を見て溜息を吐いた。
「若いんだから、もっと動けばいいじゃないか」
「動こうとしましたよー。でも、でも無理なんですもんー。雨なんですもんー。」
怠惰の塊になってしまったベル、しかもハルまで、と嘆きの溜息を吐き出した。
「普通に廊下とか走り回ればいいじゃないか」
そう言うと、二人はチッチッチッ。と指を振ってニヤリと笑う
「やっぱりマーモンちゃんもそっち派なんですねぇー」
「ちげーし。ばっかだねー」
「・・・・何が」
「ハル達はそんな安い存在じゃないんですよ。本当の真実を知っているトレジャーハンターなのです」
「意味分からないんだけど」
「同じく。」
「はひっ。何故ベルさんまで・・・!」
「だって、何だよ。トレジャーハンターって」
「意味を追求してしまったら其処でおしまいですよ!」
「また分けわかんない事を・・・」
「ねぇ。」
ぺちゃくちゃと話で花を咲かせていた二人に割り込んで、一つ言いたい事があった。
「雨、止んだよ。」
そう言うと二人は信じられない速さで部屋を飛び出していった。
振り返っても二人の姿は無く、廊下を走り回っているであろう事が分かった。
「嘘だけどね。」
ボスから怠惰な二人を動かせって、金まで貰ったんだから。報酬分は働かないと。
多分ものすごい勢いでこの部屋に帰ってくるであろう二人を推測して、足早に部屋を出た。
鬼ごっこの始まり。