「えーと、また手紙来てたんですけどー・・・どうしますー?」

 

日本をまだ離れない沢田綱吉の為に建設した日本、並盛に建てられた小さなビル。ミニボンゴレ日本支部、その中の一室に敬語戦隊ケイゴンジャーという達筆で書かれた看板があったのだが、骸が思わず蹴り飛ばしてしまったのでA4のコピー用紙にボールペンで書き直してドアにセロハンテープで貼られている。

そんな部屋の中に集められた敬語戦隊ケイゴンジャー。戦隊といってもそんなおおっぴらに活動することはまずない。

ケイゴンジャーだとリボーンに言われてから一週間、それなりに各自する事があり、ケイゴンジャーとしての活動は今まで誰一人としてした事が無い。

あの喫茶店の出来事から今までこうして全員そろう事は無かったが、今日は時間と都合が一致したらしく、五人が今日この部屋に集っている。

だが会話は殆どなく、骸はソファーに座って本を、フランはテレビゲームを、バジルは着物を着て日本の古書を、ユニとハルはお互いに向き合って静かにお茶を楽しんでいた。

各々ゆったりと部屋の中で待機という名の暇つぶしをしていると、フランが思いだしたようにコントローラーから手を離してそう言った。

「手紙・・・?」

骸が忌々しげにフランに視線を向ける。

「もちろん差出人はリボーンですよー」

「とうとう、我々に任務が・・・?」

バジルが正座したままフランに視線を向ける。ハルとユニも机に座ったままフランに視線を向けている。

「えーと、じゃあまたミーが代表して。」

びりびりと封筒を破って中を読もうとした瞬間に、天井からガコン、と音がした。全員が上に視線を向けると忍者の恰好をしたリボーンが落ちてきて着地した。

「ちゃおッス。」

「あのー、ミーが今手紙を開けた所なんですけどー」

「ああ、頃合いを見計らって下りてきたからな。」

それじゃあずっとフランが手紙を出すのを天井で待っていたのだろうか、と、リボーン以外の全員が思った。

「お前等とんでもなくだらけてたな。」

「だらけてませんよー!ハルとユニちゃんはずっと楽しくお茶してましたもん!」

「それは遠回りに僕達はだらけていたという事ですか?」

「あ、いえそういうわけじゃ・・・」

リボーンが下から見上げるようにして、部屋の中にいる五人を見渡す。そしてハルとユニの近くに来て、ハルを指差した。

「今日はお前から行くか。」

「ほぇ?」

「まあやっぱり最初はリーダーからだよな。」

「え?え・・・?」

リボーンがハルの腕を掴んでそのままドアへ連れて行こうと引っ張っている。

立ちあがろうとした瞬間に足の痺れで膝をついたバジルが、あわてたようにリボーンへ言葉を投げかける。

「リボーン殿、一体どういう・・・」

「任務だ・・・ああ、違うな、任務なんて大層なもんじゃねえ・・・まあ、あえて言うなら、カウンセリングだな。」

つーわけで行こうぜ、とハルを連れて部屋を出て行った。ハルが戸惑う声も、ドアが閉まる音がすれば遥かかなたから聞こえる虫の声のようなものになっていた。

全員がしーん。と閉まったドアを凝視し続ける中、フランが持っていた手紙を広げてそれを見た。

つけっぱなしだったテレビゲームの電源を消して、チャンネルを変えた。

「おー、作戦隊長ですー。」

フランの言葉に今度はドアとは反対側にあるテレビの方向へ、三人の首がぐるり、とまるで息があったように動いた。

そこにはまるで警察の取り調べ室のような真ん中にテーブル、そしてパイプ椅子に苛々した様子で座っているスクアーロの姿があった。

明らかに隠しカメラで映しているのが分かる角度だ。部屋の奥から撮っていて、スクアーロの後頭部しか見えないのだが、腕組をして貧乏ゆすりで安い机を上下にがんがんと音を立てていれば苛立っているとすぐに分かった。

そしてその部屋にやってきたのは、先ほど部屋を出て行った三浦ハルだった。

ビクッ、とハルが反応しているが、表情は残念ながら見えなかった。

「う゛お゛ぉぉい!なんだぁテメェはぁ!?」

「おチビ、音量を下げなさい。」

「はーい。」

フランがぽちぽちと音量を下げた。

結構な量を下げてしまったので、ハルがおそるおそるスクアーロに問いかけた言葉が全く聞こえなかった。

「おチビ、音量を上げなさい。」

「どっちかにしてくださいよー。」

下げた音量の半分を上げてテレビから離れて見る事でとりあえずはいいという事になった。

全員がなんとなくケイゴンジャーというふざけた名前の組織の活動内容が理解できていた。

 

 

「えー・・・コホン・・・は、ハロー?マイネーズミハル・・・あ、間違えました!マイネームイズハルです!ごめんなさい!」

「おい、ごちゃごちゃすぎるだろぉ!」

「アイムソーリー。」

「日本語喋れるんだがなぁ。」

「あ、そうなんですかー。早く言って下さいよもう!」

「帰ってもいいのか。」

「あー、それはちょっと困ります・・・ああ、でもハルが帰ってほしくないって事ではないのですけどね、リボーンちゃんがハルと会話をして敬語というものを身につけろとおっしゃっていて・・・」

「あ゛ぁ?んなもん俺には必要ねぇ!」

「えー、でも、ハルもリボーンちゃんに言われて此処にいるので・・・1時間話せって言われたんですけど・・・」

「1時間もこんな狭い部屋に居ろっつーのかぁ!?」

「えぇ!?結構広いと思いますけど。」

あっけらかんとハルが返事をする様子を見て、スクアーロは椅子から立ち上がる。

「あ゛ああぁぁあ!どうでもいい!とにかく俺は帰るぞぉ!」

「駄目です!ドアを開けると拳銃を持ったリボーンちゃんが・・・!」

「・・・・・。」

立ちあがったスクアーロが暫くドアを見つめた後、ハルの恐怖に染まった顔色を見てまた椅子に乱暴に腰をおろした。

「チッ、これじゃあ監禁じゃねぇかぁ。」

頭をかきながらそんな事を言っているが、出ようと思えば出られることは分かっていた。別にあのドアから出なくとも、後ろにある窓から飛び降りて逃げる事は可能だし、壁を壊して逃亡する事だって出来る。

「あああ!よかったです!貴方が逃げてしまったらハルは危うくタバスコ入りケーキを食べさせられる所でした・・・!」

「やっぱり帰ってもいいかぁ。」

「ノーサンキューです!」

 

 

「・・・まあ、とりあえず彼を落ち着ける事は出来たのでいいんじゃないんでしょうか。」

「何がですかー。」

骸が頷き、まあリーダーとしては上々なのではないですか?と上から目線で物を言っているのに対してフランが画面を見ながら冷ややかに突っ込む。

「さすがハルさんですね、相手の精神を落ち着けてからなんて・・・次は私達の誰かでしょうから、勉強しないと・・・!」

「ですが日本語があまり無い所が拙者としては残念ですね。もっと日本語を駆使してもいいのではないでしょうか。」

「相手がイタリア人ですから、きっと意識しているんでしょうね。」

「なるほど。」

ユニとバジルが頷きながらまた画面に視線を向けた。

「ミーにはついていけませーん。」

 

 

「えーと、ハルの目的は、貴方に素敵な言葉遣いをすりこめと言われて此処にいるのです。」

かさり、とハルの手の中にあるカンペ用紙が音を立てる。

スクアーロはくだらないと一蹴して、やはり帰ろうかと思ったが、どうせならこのまま今まで溜まっていた仕事とストレスを投げ飛ばすためにボイコットしてやろうと、腕を組みハルの話に耳を傾ける。

「ほぉ。」

「ですので、今日で完璧にとは言いませんが、適度に敬語を覚えてほしいと思うのです。」

ハルはスクアーロが見た目からして完全に外国人だと思っている。此処まで流暢に日本語をしゃべっているのだから、敬語も当然知っているはずなのだが、ハルはただ知らない、分からないだけなのだろうと思いこんでいる為ににっこりと笑って一から教えるつもりでいる。

ハルが膝の上に置いたカンペ用紙をちらりと見る。

「さて、スペルビア・スキュアロさん。まずは、」

「チェンジしろぉぉぉ!!」

 

 

 

「あの銀髪ロン毛クソ隊長、キャバクラと勘違いしてんじゃないんですかー?」

「クハッ!あり得ますね」

「しょうがないですねー、じゃあ此処はミーがチェンジされに行きましょうか。」

「更にチェンジと言われそうですがね。」

「そん時はししょーよろしく。」

「ノーサンキューです。」

フランが肩を回しながら部屋を出て行こうとしたら、テレビからハルの声が聞こえてきた。

「はひ?どういう事ですか・・・?チェンジ?チェンジっていうのはチェンジで・・・はひぃ!イングリッシュが分からなくなってきましたー!」

「意味分かってないようなのでミーが説明しに行ってきまーす」

「ただ暇なだけでしょう。まあ此処で暫く見ていましょうよ。」

「師匠は動きたくないだけじゃないですかー。これだから老人は・・・」

「殺しますよ。」

骸が笑顔で殺気をフランへ向ける。

「ちょっと二人共静かにしていてください!」

「そうですよ!お二人共喧嘩するのでしたらどうぞ外へ!」

バジルとユニの叱咤により、静かになったものの二人はバチバチと小さく火花を散らして睨みあっていた。

 

「えー、こほんこほん。とりあえずス、・・・スペルビ、スクアーロ、さんも早くお家に帰りたいでしょうから、早くてきぱきと本題をすませようと思います。」

「おい、俺の名前もう一度はっきり言ってみろぉ」

「はい!スペルビ・スクアーロさん!」

「よぉし!もう間違えんじゃねえぞぉ!」

「イエッサー!」

 

「何処がてきぱきなんですかー。いちいち苛々するんですけどー」

 

「えーと、・・・・・」

「・・・・・・」

 

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

画面の向こう側のハルが言葉を発さず、スクアーロは眉間に皺を寄せたままハルを待つ。

テレビを見ている三人もハルの言葉を待っているが、しーんとした静寂だけが耳に届くだけだった。

ハルがカンペ用紙を見て、スクアーロの顔を見て、そして真後ろのドアを見て、またスクアーロに顔を向ける。暫く見つめた後、にこっと笑いかける。若干冷や汗が出ていた。

 

「・・・あの、敬語ってどうやって教えればいいのでしょうか・・・?」

「チェンジしろぉ。」

 

「それじゃ今度こそ言ってきますねー。グリーンいっきまーす」

「いってらっしゃい。」

 

ドアが閉まる音がしてテレビの向こうの小さな部屋では重苦しい沈黙が降り積もっていた。

 

 

 

意味が分からない。(ぇ

なんか無駄に長くなったので此処で切ります。続きを書くかどうかは・・・そうですね。私に愛と勇気があれば、書くと思われます。はい。(←

 

無駄なお時間をとらせてしまいましてすいません。

つーか全然戦隊じゃねーし。(今更

 

 

 

title 泣殻