ひと眠りをして起きた。寝てからまだ二時間も経っていなかった。最近滅法寒くなってきたと言うのに寝巻が肌にひっついていた。汗をかいた。

額に張り付いた前髪を退かしながらもう一度シャワーを浴びた。とてもすっきりして浴室へ出ると温まった身体が一気に冷えた。

もう秋も終盤。

腕を擦りながらベッドに腰掛ける。時計の音が嫌に大きく暗い部屋に響いた。

裸足に冷たい床は天敵だった。すぐに足を布団の中に入れてベッドに横になった。瞼を閉じれば意識は沈む。

 

「愛していましたか。ハルの事。」

「どうだっただろう。」

「ツナさんはどうしてハルと付き合ったのですか。」

「分からない。」

 

また眼が覚めた。今度も汗がびっしょりで、汗が頬を伝って布団に落ちてしみ込んだ。もう一度シャワーを浴びた。身体が冷えた。布団に入る。

時計の音が嫌に大きく聞こえる。

 

「幽霊が怖いんです。」

「子供じゃないんだから。」

「一緒に寝ちゃ駄目ですか?」

「うん。いいよ。」

「ツナさん。」

「何?」

「ハルの事、好きですか?」

「もちろんだよ。」

 

異国の会話のようだった。冷や汗程度の汗だったがハルは眼を覚ました。シャワーを浴びる気にならないのでそのまま瞼を下ろした。

そういえば、先ほどの夢はいつの頃の事だっただろうともう一度眼を開けた。真っ暗な天井が見えた。

冷たくなった指先を温めながら考えた。ぼんやりとした意識の中で記憶を呼び起こすのには時間がかかった。

アレは付き合い始めた頃のことだった気がする。お互いに若く、初々しい反応ばかりしていた頃。指先が触れるのも顔を発火させてしまうほどだった。

だけど温度は人を安心させる。だからこそ一緒に寝たんだろう。冬の季節は特に寒く、人肌が恋しくなる。

あの寒い国に行ったあの人は寒いだろう。蒲団だけじゃ、暖房だけじゃ、ヒーターだけじゃ、温まらない物がある。

お互いに冷たくなった指先を温め合った記憶を呼び起こして、右と左の指を絡め会う。

あの人は、もしかしたら見知らぬ女と指じゃなく身体を絡めあっているかもしれない。

 

また眼が覚めた。心なしか吐き気がした。考え事をしている最中に眠りに落ちたらしく、酷く憂鬱だった。

夜明けが近いのか、カーテンの闇に光が差し込みかけている。汗をかいた。シャワーを浴びた。身体が冷えた。布団に入る。もう瞼は下ろさなかった。

時計の音が嫌に大きく聞こえる。

ドアが開く音はしなかった。

天井を見上げていると鮮明に見えてきた。眼が暗闇に慣れたのではなく、外からの光が強くなっているからだった。カーテン越しなのに、朝を告げる光はあまりにも強かった。

そっと瞼を上げたまま涙を流した。嗚咽も無く、啜り泣きでも無く。ただ人形のように表情を無くして涙を流した。

沢田綱吉は帰ってこなかった。

明日もきっとシャワーを浴びる。何度も起きるだろう。時計の音が嫌になるだろう。いつか投げつけて壊すかもしれない。いっそ時計なんて無くしてしまった方がいいのかもしれない。

カーテンを開けると朝日が差し込んだ。何の奇の衒いも無く眩しさをハルの網膜に焼き付ける。思わず手で目元を隠した。

お願い、残像を消さないで。

異国のあの人の笑顔が光によって掻き消えた。

 

 

 

ダーク・・・なのでしょうか・・・!?(知るか

お待たせして申し訳ございませんでした。

アレです。全体的にスランプと普段の出来の割合が10:0なので、まあアレです。ごめんなさいという事です(←

 

御目汚し申し訳ございませんでした!

 

 

 

title 泣殻