「いやー、たまたま偶然見つけちまってさー・・・もしかしてデートだったりしたのか?」

「どうだろうね。」

「あ、見てください!あそこのケーキおいしそうですよ!」

「お、アイスも売ってんじゃねーか?俺バニラ食おーっと!」

「・・・・・」

 

 

 

デートといえばデートと言えるが、そうじゃないといえばそうではない。

そんな曖昧なデートに雲雀恭弥がどうして時間を削ってまで付き合うのかと言えば、答えはきっと出るだろう。

だがその質問を雲雀は山本に投げかけはしない。

「新しい店を発掘する時はやはりショートケーキとおすすめのケーキの二つを買って食べるべきなんですよ!」

「新しいアイス屋を見つけたときはバニラから食べるのと一緒の原理だな!」

「そうです!あ、店員さん!ショートケーキとおすすめのケーキくださーい」

どうして時間を削ってまで雲雀恭弥が三浦ハルのショッピングに付き合うのかといえば、簡単明白。

どうして紙袋を片手に持ったまま三浦ハルを待っているのかというと、理由はそれしかない。

だが、山本武を待つ理由も、山本武と一緒にいる理由もまったくもって無い。

「お、雲雀どうした?お前もなんか食いてーのか?」

「・・・邪魔。」

「ん?・・・あ、ああそっか。ごめんな、これじゃあ注文できねーよな。」

レジのまん前に立っていた事に気がついたらしく、へらへらと笑いながらその場所を明け渡す。

紙袋でその顔を叩き割りたいと思ったのだが、残念ながらこの中には洋服しか入っていないのでそんな威力は出せないだろう。

ケーキの入った箱を持ってご機嫌なご様子の三浦ハルはスキップをしてこちらにきた。

「はひ?どうしたんですか、二人共・・・」

「いや、雲雀がアイス買うのかと思ったんだけど・・・」

「?買うんですか?」

山本がもぐもぐと解けないうちにアイスを食べ続けている。

「・・・いや。買わない。」

ハルが不思議そうに首をかしげているが、雲雀はそのまま歩き出してしまった。

その後を追いかけるようにハルが慌ててついていき、山本も慌ててアイスを食べ終わりゴミ箱へとすてて走っていく。

 

 

「雲雀さん、雲雀さん。」

無邪気な子供のような声音で廊下を歩いていた雲雀を呼び止めたハルは満面の笑みを見せていた。

「何?」

「うふふ・・・この間の仕事、ハルが回したアレあるじゃないですか?」

「ああ、うん。」

この間、任務の仕事内容が書類整理となっていて、沢田綱吉にその書類をたたき返してやろうとボスの部屋へと歩いていた時、部屋から出てきた秘書のハルにそれを返すと、ハルが呼びとめ、ハルの秘書室へと引っ張り込まれた。

そこでファイルの中に入っている書類を雲雀に新たに渡した。

「これは?」

「雲雀さんのその仕事をハルがしますので・・・ランボちゃんが泣いてやめたいと言っていたその仕事を、代わりにしてくれませんか?」

とある殺し屋軍団を消せというシンプルな内容だったその書類。

その名前の挙げられた殺し屋の中の数人が雲雀が眼を付けていた強い奴だった。という事もあり快くその仕事を引き受けた。

ハルもその仕事を他の人間に回すとなると、スケジュールの調整が面倒臭いと言っていたので交渉は成立。

事務処理からこんな楽しい仕事に変わった雲雀にとってはとてもラッキーな事だったので。

「この借りは必ず返すよ。」

と、言った。

それら全てを振り返った後、ハルの爛々とした瞳を見ながら。

「それがどうしたの?」

「あの時、この借りは返すって言ってくれたじゃないですか?」

「うん。」

「・・・今日雲雀さんスケジュールあいてるでしょう?」

「・・・多分。」

「・・・ちょっと、付き合って欲しい所があるんです・・・」

声を小さくしてそう言ったハルに、少しばかし動揺したのだが、ハルの口元が照れでゆがめられているのではなく、笑みを堪えているものだと気がついた。

「実は、カップル限定のカフェランチで単品では頼めないケーキがあるらしいんです・・・っ!」

などといわれ、確かに休日もあるし借りもある。それ以上に三浦ハルからの誘いに雲雀は素直に頷いた。

それは三浦ハルだからであって、それ以上の理由は無い。

それなのに。

 

「なー、もしかして雲雀なんか怒ってる?」

「うーん・・・そうかもしれません・・・どうしてでしょう、先ほどまでは普通でしたのに・・・」

「もしかして・・・あのアイスやっぱ食べたかったとか・・・?」

「そうかもしれませんっ・・・雲雀さんアイス買うのが恥ずかしかったのではないでしょうか・・・」

「それか俺がバニラ食べてるの見て遠慮したのかもな。同じの買うの遠慮したとか」

「はひ?どうしてですか?」

「んー、何か遠慮しねぇ?同じの食べるのとかってさ」

「そうでしょうか・・・ハルはおそろいは素適だと思いますけど」

「甘いもんたべねーと頭に血が回らないっていうしな。」

「え、ハルは聞いたことないですけど・・・」

 

こそこそと話している内容、一字一句全て雲雀の耳に届いている。

人込みの中にいるというのに、声を潜めて話している声が聞こえるとは一体どういう事だ。もしかしてわざと聞こえるようにして話しているのか。

雲雀が苛々を押さえながら、ハルの言っていたカフェについてしまった。

それを見て、さてどうしようかと後ろの二人に意識を向ける。

振り返らずに背中で気配を感じながら、三浦ハルがどう出るのか待っていたら、

「あ、カフェです!」

やっと店についた事に気がついたようで、次の言葉を雲雀は待った。

おいかえせばいいのに。

「山本さん、」

そうそう。

「さっきアイス食べましたけど食べれますか?」

雲雀のリズムが一気に崩された音がした。肩がかくっ、と下に下がったのは荷物が重いからではない。

山本が、んー。と呟いた後。

「まあ、大丈夫かな。」

「・・・・・」

「・・・・あれ、どうしたんだ雲雀?」

ぴりっ、と殺気を感じ取った山本がそう問いかけるが、雲雀は振り返りもせず、何も言わない。

無言で分かれ。と心の中で念じるのだが、山本武は人の心の機微には鋭い時と鈍い時が極端にある。

「・・・ま、いっか。入ろうぜ!」

「はい!」

「・・・ハル。」

「はい?」

「この場合はどうなるの。」

「・・・はい・・・?」

「三人。」

「・・・・・・・」

ハルがそれに気がつき、さあ、と顔色をかえて真剣に悩み始めた。

ちらりと後ろを向くと顎に指をあてて珍しく神妙な顔をしていた。山本がそんなハルを見ながら顔の前に手を振る。

「おーい、どうしたんだ?」

「・・・そうですね・・・・どうしましょう・・・」

「・・・・・・」

「・・・雲雀さんと山本さんがカップルと勘違いされたら、」

「殺していい?」

愛とか恋とか以前に殺意がわいたので素直にそう聞くと拒否された。

「あはは、冗談ですから・・・」

「さっきから何言ってんだ?」

カップル限定セットの文字が小さな黒板に書かれてあったのを見つめながら雲雀は山本に説明するハルの言葉を聞いていた。

全ての説明が終わった時に店からカップルらしき二人組みが出てきて。

「いやー、おいしかったなあのケーキ。」

「本当本当、またきちゃいたいなぁー・・・」

などと会話をしているのをハルが聞きながら、そのカップルの後姿を食い入るように見つめていた。

今にも涎が出てきそうなハルを尻目に、山本がさきほどのハルのように顎に指をあてて暫く唸り。

「ならさ、俺と雲雀で交互にハルと入ればいんじゃね?」

「何でそうなるの。」

「だよなー・・・っていうか、三人じゃ駄目なのか?」

「どうなんでしょう・・・」

雲雀は山本が帰ればいいと思っていた。

それなら全てが丸く片付いて当初の予定通りの時間を過ごせるはずだった。

それでも山本武は粘って食いついてくるので、小さく溜息を吐いた。

「三人でもいいんじゃないの。」

せめてもの譲歩、妥協で雲雀恭弥は時間を無駄に流す事はやめておいた。

だが、男二人女一人という、少しばかしシュールな光景をカフェの中で浮く存在になるだろうと思いつつも、こんな店先で立ち止まったままの方が余計に目立つ。

山本がお腹を鳴らしながら店にさっさと入っていってしまった。

「いやー、ちょっと考え事したら腹が減っちまって・・・」

「ケーキはどんな味なんでしょう・・・っ」

「・・・・」

山本もハルとは違っていたってシンプルな理由でケーキを待っている。ハルはうっとりとまだケーキも来てないのに恍惚とした瞳で宙を見据えている。

甘い匂いが充満している店の中で、思わず眉を顰める雲雀の顔を見てにっこりとハルが笑う。

「もう直ぐですかね?」

「・・・さあね・・・」

雲雀の不機嫌の理由も追求せず、むしろ気がついていないハルは店員が来るのを、店員が持ったケーキを待っている。

雲雀の横の席には持っていた紙袋を置いてある。前の二つの席には両方とも弾ける笑顔を見せているハルと山本。

重い溜息を小さく吐き。店員がトレイの上に珈琲の白いカップとケーキを持ってきた。

「きたー!」

と、言いたいがいえない三浦ハルの嬉しさを噛み締めた顔を見て、フッと静かに笑った。

「お待たせしました。こちら限定セットでございます。」

「あ、ハルですっ」

嬉しさを隠せないハルが手をあげてトレイからゆっくりと下ろされるケーキを食い入るように見つめている。

口の端から涎が出ている事を注意しようかと悩んでいる雲雀だったが、

「あ、ハル涎、涎」

「はへっ!」

隣の山本が注意してハルが袖でごしごしと拭き取った。

羨ましそうに山本もそれをじぃ、と見つめている。店員が消えた後、ハルがゆっくりとフォークに手を伸ばして、ごくりと喉を鳴らしている。

「その珈琲貰ってもいい?」

「どうぞ・・・」

心此処にあらず。

砂糖もミルクも入っていないブラック珈琲を飲みながら、ハルがゆっくりとケーキにフォークを突き刺してるのが見えた。

「お待たせしました。こちらのセットは、」

「あ、俺ッス俺ッス!」

限定ケーキとは違う二つのケーキが乗っているお皿を見た瞬間に、説明も聞かずに山本が挙手しながら自分自身を指差している。

店員からケーキを受け取った山本が一口食べた瞬間に、ハルもやっと一口目を口にすることが出来た。

「うめー!」

「―――――」

ハルは声も出ないようで、ぱちん、と片手で頬を叩き、そのまま頬を撫でながら眼を閉じて顔をほころばせた。

「んぅー・・・!」

「それうまいか?」

ハルが思い切り首を縦に振る。

「それじゃ俺ももーらい」

「!!」

横から簡単にフォークを突き刺し、一口持って行かれた山本に驚愕の眼を向ける。

そしていとも簡単に口の中にケーキを入れると、眼をぎゅうっと閉じて、確かにうめーな!と言っていた。

山本の一連の行動にハルは言葉も出ないようで、震える指先で山本に人差し指を向けている。

ハルが何かを訴えかけるように、喉に詰った声を出そうと必死に雲雀に口をぱくぱくと動かしているが、声は届かない。

「早く食べないと、また奪われちゃうかもしれないよ。」

珈琲を一口飲みながら、もう自分のケーキを食べ始めて一つ無くなっている山本の皿を見て、更に焦りながらケーキをバクバクと食べ始めた。

せっかくの楽しみにしていたケーキなのに。

漠然とそうハルの変わりに思っている雲雀が、まあいいやと眼を閉じる。

これでもし次に似たような用事があっても、山本を呼ぶことはないだろう。

次は邪魔はされない。

そう安心していたのだが。

「それマジうまいなー・・・また明日俺来よっかなー」

「あ、これカップル限定メニューですので一人じゃ無理ですよ」

「マジ?ならハル明日開いてる時間あるか?」

「お昼ならありますけど」

「んじゃ明日またこよーぜ」

「そうですね、ハルも味わって食べれなかったですし・・・」

という会話を聞いていた雲雀が珍しく咽ていた。

 

 

 

わけわかめですね。あはは、すみません・・・!

意味不明なのは書いた私が重々承知しております・・・いや、冗談はよしこさんとかいわないでください。マジです。本気と書いて・・・そう!マ・ジ!(ウゼ

実は山本は雲雀とハルのデートの事知っててわざと邪魔しに来たという設定があったのですが・・・まあ、いっかって事になりましたので、黒なのか白なのかは皆様のご想像にお任せします。

っていうかこれお買い物じゃないよね。もはやデート・・・?いや、デートでもないかな。ただのお出かけって感じが・・・

いえいえ、雲雀さんに紙袋を持たせていたのですから、買ったんです。そう服を!

ならばもうそれは買い物であると此処に証言する!(←

あ、すみません・・・ケーキの事書いてるとお腹がすいてきちゃって・・・

 

リクエストありがとうございましたーww

 

 

 

title 悪魔とワルツを