ほろり、と涙を流している表情はとても綺麗だ。

口紅を拭った指先で、目元に触るのはどうなんだろうと思って手を引っ込めた。

ぽかんと開いた口は子供のそれで、ああ、何かすっごい背徳感と勝手に燃える。

別に手を出そうとか思ってるわけじゃ、ないけどさ。もし手を出したならそれはもう犯罪だろって事。

現実と妄想の世界の境界線はちゃんと分かってる。

分かってるけどさ。

俺のもんに、なるわけだしさ。

 

 

 

「・・・ぐす・・・」

「・・・・・・」

「・・・し、死んじゃったかと、思いました・・・」

「おいおい、勝手に殺すなよなー」

落ち着いてきたハルの頭を撫でながらそう呟く。いや、だってさ10年バズーガだし・・・って、わかるわけないか。

公園のベンチに座る俺の格好はスーツ姿で、背中には刀を携えている。

そんな男の横で涙を流している少女が、女子中学生が居たらそりゃもう目を逸らしちまうような光景だろうなぁ。

幸い人が居ないのがよかったけど、遠くできゃあきゃあ遊んでいるランボとイーピンに目を向ける。

ブランコか、そういえば最近乗ってねーな。

「ランボちゃんのあの玩具は、本当にデンジャラスです・・・」

「あー、まあな。見た目的には」

「・・・びっくり、しました・・・」

「ん。」

ハルのたどたどしい心境報告をちゃんと聞き入れ、頭を見下ろしながら和む。

ハルは今でも十分小さいけど、この時は更にちっちゃかったんだなぁー。

「んー、すげぇ撫でやすい。」

「ハ、ハルはベイビーじゃありません!」

ムキになって反応するハルが面白くって、いつだったか俺ハルを苛めてたんだよなー。無意識に。

ツナや獄寺に言われるまで気がつかないほどハルを苛めてて、何度か泣かせてしまった記憶がある。

結構不器用だったな。

「・・・それにしても、10年バズーガだなんて・・・なんてミラクルな道具なんでしょう・・・」

「未来から来たネコ型ロボットならよかったか?」

「うーん、どら焼き持ってないのでいきなり訪問されても困っちゃいますね。」

目元を拭いながらやっと笑顔を見せてくれた。

未来でもやっと任務から帰ってきたのに、笑顔じゃなくて泣き顔だったから結構ショックだったんだよな。

幼い顔でそうやって笑われるといろんなもんが吹っ飛んじまう。

野外っていうのも中々・・・いや、昼間だし、ランボとイーピンすぐそこで遊んでるしなー。でも他に人いねーからちょっとそこで・・・

「・・・それよりも、デンジャラスです・・・」

「え。」

ヤベ、もしかして口に出てた?それとも読唇術?エスパー?

「え・・・えっと・・・」

「時は人を変えてしまいます。」

「いや、10年前から俺ってこんな感じ・・・」

ハルが唇を尖らせながら、俺の顎に人差し指を突きつける。

まるで拳銃を突きつけられたかのように唐突に、思い切り敵意を持った指先が触れた。

今の時代には無かった俺の顎の傷に。

「どうしたんですか?これは。」

「・・・ははは」

「笑って誤魔化そうたってそうはいきません!今の山本さんはこんな傷ありませんでした!」

「・・・・・えーと。なんだっけ、野球のボールが当たって・・・」

「できません!」

「階段から転げ落ちて・・・」

「何かで切った痕です!」

「いや、転げ落ちた後で窓に突っ込んで顎に傷がついちまって・・・」

「嘘です。」

未来の俺の言葉を真っ向否定したハルは根拠があるように真っ直ぐな眼で俺をにらみ上げる。

「未来の事をそんな風にぺらぺらと話すわけありません。それは嘘だから話したに決まってます!」

何だか勝手に決め付けてる感じがあるけど、まあ否定も出来ないのでそのまま黙っていると、無言は肯定です!と更に言われて言葉に詰る。

顔に出やすいんだよ、テメーはと一昨日獄寺に任務中に注意されたばっかりなんだけど。

「やっぱり・・・」

「えっと・・・」

未来のことをあまりこの時代の人間に話すのはよくない。

それが些細な事でも。

「・・・別にいいですけど・・・」

ハルは、それを理解しているらしい。

深く追求せず、かといってまったく無視もせず。

ある意味いい反応というか、大人の対応と子供の探究心をミックスしたような14歳の三浦ハル。

まだこの時代の俺は手を出してないはず。っていうか告白もしてないだろうけど。

キスくらいいんじゃねえか?

外国に住んでて、あれだ、キスが挨拶になったとか言えばいいか。

「な、ハル」

「はい?」

無邪気な瞳がこちらに向いて、唇はかわいそうだからと頬に近づけた。

 

 

「おかえりなさいー!」

ぎゅうっ、と抱きつかれて、今度は泣き顔じゃなくて笑顔のハルが迎え入れてくれた。

思わず抱きとめると親指はまだ口紅の赤が残っていた。

「・・・ただいまっ」

唇にかすったよーな、かすらなかったよーな・・・

結果的に10年前に戻った山本武と三浦ハルがそのポーズのまま真っ赤になって固まった事などまったく知らない。

まあ、それはそれでいい。うん。この未来に繋がれば、結果オーライって事で。

 

 

 

すみません。山ハルってすきなんですけど・・・結構王道系なカプなんですけどどうにも苦手・・・っていうかハルと山本がそういう関係という前提で書くのって難しい・・・

誰かもう一人つっこめば・・・いや、それでもこの未来はかわらぬよ。だって私だもの。

 

すっごくゴミ箱に行かせたいのですが・・・う・・・今は、これで精一杯なのかな。と・・・

 

リクエストありがとうございましたー!

 

 

 

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