「え、俺が・・・ですか?」

思わずそう聞き返した9代目直々の命令に、俺はボスとしてじゃなく沢田綱吉として困っていた。

にっこりと笑って静かに頷く9代目。リング争奪戦から1年ほど。やっとボスになるという事を受け入れてこれている不安定な状況で、リボーンに誘拐まがいの状態でいきなりイタリアにやってきてこんなことを言われた。

9代目の横にいる父さんは親指を立てて気持ちのいいくらいの笑顔を俺に見せている。

それに内心突っ込みながら、9代目の言葉が嘘であってほしいと願うばかり。けれど超直感はそんなことないよー。といわんばかりに感情とは裏腹に否定する。

「ヴァリアーに挨拶にいっておいで。」

いえいえ、お使いじゃないんですから。

 

 

 

首が痛くなるな。と思った。

「うーわ・・・大きー・・・」

「じゃあなツナ。俺は帰るぞ。」

え。と振り返ったのは後ろ斜め下。リボーンが見上げて帽子の唾を持ってしょうがねぇだろと言う。

「大体ヴァリアーはお前より俺のほうを警戒している。死ぬ気弾しかりだ。まぁ安心しろ。アイツらはお前を殺す事はないだろう。」

9代目の釘指しがあるからな。なんて、今から動物園の凶暴な人食いライオンに会いにいくかのような状況だ。足が震えてきた。

「で、でも・・・」

「安心しろ。一人助っ人に来てくれているらしい。」

「ちょ、ちょっと待ってくれよリボーン・・・お、俺やっぱり・・・」

「ぐだぐだ言ってねーでさっさと行きやがれこのダメツナ。」

がちゃっ、と銃を向けられ、ひぃぃ!と情け無く叫んで、大きく開いた門の中に走っていくことになった。そんな俺の後姿を見てにやりと笑っていたなんて知らなかった。

恐ろしいほど豪奢なヴァリアーのアジトは恐ろしかった。いや、その高級感についてだ。こんなの世界遺産に登録されてもおかしくないと思えるほどに歴史を感じさせて、宮殿のようだった。

またマフィアの恐ろしさの片鱗を感じ取った瞬間だった。

人気の無い廊下を歩いていて、どうして誰か案内してくれる人がいないのだろうと思う。だってこんなに広いんだから迷ってしまうし、それにもしかしたらいけない部屋に入ってしまうかもしれない。けど悲しいかな。ボンゴレの超直感で何となく恐ろしい気配を感じ取って進んでしまった。

眼の前で立ち止まって、見上げるのは歩いてきて一番豪華な扉。ああ、此処だ。きっと此処にいるはずだ。

できればノックなどしたくないけど、震える手をドアの前に掲げて、こん、こんっ、と、弱々しくノックした。

ああ、ドアの向こうから足音がする。きっとドアが開いたら、其処には骸骨とかがあるのかもしれない・・・背筋を震わせてガチャ、と開いた扉にゆっくりと眼を開けた。

「・・・・へ?」

「あ、ツナさんいらっしゃい!」

「・・・・・・・へ?」

「どうぞどうぞー!あ、ボスいらっしゃいましたよー」

「・・・・え。ええええええええ!!?」

何にも臆すること無く部屋の主に笑顔で呼びかける三浦ハルは幻覚か、それとも幻聴か。ポニーテールが揺れるところなんて凄くリアルだ。きっとこれはマーモンが俺に対しての嫌がらせに決まってる。そうに違いない。じゃなきゃこんな所居るはず無い。

「ツナさん?どうしたんですか?」

「あ・・・いや・・・」

「早く入ってください。ボスが待ってますよ?」

くいくいと袖を引っ張られ、悪の巣窟に丸腰で入ってしまった。前のめりになりながら、やっと部屋をちゃんと見渡せ、そして椅子に座るザンザスの顔もまともに見れた。

「ひぃ!」

リング争奪戦の時の恐怖が蘇ってくる。殺気を孕んだその視線は明らかに俺に敵対心を燃やしている。

がたがたと膝が笑っている中で、ハルが俺を心配そうに見つめてきた。

「ツナさん・・・大丈夫ですか?なんだかおかしいですよ?」

「あ・・・・」

手をぎゅっと握って引っ張り起こすハルのぬくもりが伝わってきた。幻術ってこんなにリアルなものなのか。

そしてさっきよりも更に倍増した殺気が間近でひしひしと感じる。眉根が寄って、皺が恐ろしく増えている。

失神しそうになりながらも、何とか意識を保つ。気絶したら、次目覚めれるかも分からない。

「あ、あああの!俺此処に来たわけは・・・えっと、あのそのえっとぉぉ!」

「ジジイからの命令だろーが。」

「っ!」

俺のしゃべり方に苛々している様子のザンザスは、ジロリとにらみながらそう言った。

あれ、あっちにも話は通ってあるのかな。こんな馴れ合いみたいな理由をよく許可したな。今までの短い期間の戦いで、ザンザスの性格はそれなりに理解しているつもりだ。

「俺達の監視なんて、やってくれるじゃねぇか。」

「違いますーーー!!」

「うじうじしてねーでさっさと監視するなり煮るなり焼くなりしてみろドカスが」

完璧に頭にきているらしい虚偽の言葉。監視役を勝手に担わされている俺はただ此処から逃げる用意をするために開いたままのドアに方向を変えた。

だけど、肩を掴まれた。

「大丈夫ですよツナさん。ボスなりのコミュニケーションですから!」

「んなわけあるか。」

「照れ隠しですよっ!ボスってああ見えて照れ屋さんなんですよ」

「・・・・・・・」

ぎぎぎ、と、ブリキのように首だけ振りかえるとあきれた顔をしているザンザスがいた。怒りをしゅるしゅると収めて、はぁ、と溜息を吐いて椅子に背中を預けていた。

ハルの幻術はとっても高性能なのかもしれない。あのザンザスの怒りを静められるなんて。

ザンザスを大人しくさせるキーワードは、照れ屋・・・・なのか?

 

 

 

「はぁあ!?じゃ、本物のハル!?」

「はい、正真正銘の三浦ハルですよ?」

偽者がいるんですか?と首をかしげるハルに俺は顎が外れそうなくらい口を開けていた。だってそんなこんな場所にどうして。だいたい此処はイタリアでヴァリアーのアジトで。

「リボーンちゃんに助っ人よろしくなって言われたんです!」

え。と、呟き、頭の中で回想を始める。ぶっちゃけていうとザンザスの眼の前に来たときに今までの事はもうどこかにすっとんでいってしまったから、もしかしたら記憶にそのような話は出てこないかもしれないが、一応思い起こしてみよう。

あの家庭教師リボーンの事だ。遠回りな言葉で俺に言ったに違いない。

 

「安心しろ。一人助っ人に来てくれているらしい。」

 

「・・・あれ、結構直球で言ってる・・・」

記憶を引っ張り出して、そう言ったリボーンの言葉をどうして俺が聞いていなかったのか理由を確かめるまでもなく、一人でヴァリアーの中に行けと言われてパニックになっていたからだ。

とりあえず、助っ人は居る事はよく分かった。ハルが幻術じゃない事もよく分かった。だけど人材のチョイスを間違えた事に関しての落胆はあまりにも大きい。

「・・・っていうか、お前ザンザス怖くなかったのか?」

「ボスがですか?」

「・・・その、ボスっていうもの、何で?」

「皆さんがボスボスって呼んでるから、ボスにしたんです。ニックネームです!」

「・・・・・・・・」

「?」

「うん・・・ああ、・・・えっと、なんていうか、今日知り合ったのに凄いフレンドリーだなぁって。」

「ずっと前から知り合いでしたけど。」

「・・・・え?」

「えっと、リングそーだつせん。って時ですかね?マフィア同士の熱い戦いがあったんですってね!」

にっこりと笑顔で拳を作って言うハル。デンジャラスなバトルをしたんですってね!危険です!とか、そんな風に言うだろう事件なのに、そんな笑顔で、憧れのような視線を送られても。

「拳と拳で語る男の友情だったんでしょう?ルッスーリアさんが言ってました。」

「・・・ゆ、友情・・・かなぁ?」

あはは、とごまかしながらハルに道案内してもらう。廊下を歩いていると誰にも会わなくて、そして人の気配がすると思っていたら前から来たのはあのナイフ使いのベルフェゴールだった。

後ろには幻術使いのマーモンが歩いていた。

「マジなんなのコレ。なーマーモンこれ何するもん?」

「さぁ。」

「ベルさんマーモンちゃんいいところに!ほら、ツナさん居ましたよ!」

「え、あ!」

「あー、来たんだ。俺達を監視しに。」

「本当だったんだ、僕達を視察しに。」

すぅ、と殺気を僅かに出して、低い声で俺にそう言う二人はすぐさま話を変えて持っていたソレをハルに渡した。

「ハルそれ何か知ってる?」

「はひ?何でコレが・・・」

「何かしんねーけどレヴィが持ってた。」

「ま、孫の手・・・?」

「孫?」

思わず呟いたそれはとても慣れ親しんでいる日本のものだ。使っているような雰囲気をただよわせるそれは、よく父さんが使っているのを見ていた。

冬になると遠くのものを取るのに使っていたけれど。

「何で孫?日本の子供って手切り落とされんの?しかもこんな木みたいになんの?」

「孫の手・・・結構スプラッタなものがあるんだね。平和馬鹿の国にしてはいいものなんじゃない?」

「違いますよー!これは人間の手ではありません!これは、こーやって、届かない背中をかくものです!」

ハルがそういって、掻く真似をすると、ベルフェゴールがべぇ、と舌を出した。

「マジで!?んじゃそれレヴィが使ってたやつ?菌が映る!」

「さすが日本人。自分が楽につかう道具はピカ一だね。」

両手をぶんぶんと振ってその孫の手を奪って窓から放り投げた。

くるくると円を描いて木の間に引っかかったらしく、地面に落ちる気配は無い。

「よし。」

「よしって・・・」

俺が呆れているとベルがつまらなそうにハルに抱きついた。

「え!?」

「テンション下がったー。な、遊ぼーぜ。」

「駄目ですよー。ハルはツナさんを案内しなければいけないのですから」

頬と頬をくっつけているから、唇は結構近くて俺はえ、え、と頬をつい赤らめてしまった。なんていうか、スキンシップなの?これ。

ベルフェゴールが、ふーん。と不満そうな声を漏らしてハルに見えないように俺に顔を向けて睨んだ。いや、眼は見えないけど確実に睨んだと分かるような視線だった。

「ひっ・・・」

「・・・じゃ、終わったら遊ぼうぜ。部屋で待ってるからな。」

「はい!」

ベルフェゴールが納得せざる終えない状況を判断したのかどうかは分からないけど、とりあえず危ない事にはならなくてよかった。

ほっ、と胸を撫で下ろしていると、マーモンがこちらをジッと見たまま動いていない事に気がついた。

足が地に付いておらず、何となくこちらに微妙にじりじりと近寄ってきている気がする。

「・・・・・・」

すっ、と一瞬で消えていきなり俺の頭付近に近づいて、耳元でそっと呟いた。

「ハルから離れない方がいいよ。此処では君よりハルの方が強いからね。」

え。とわけが分からず固まっていると、ベルフェゴールが歩いていった方向にてくてくと地面に足をつけて歩いていた。

「恩を売る相手を選ぶのは権力だよ。」

何か名言っぽい事を言ってまた歩き出した。一体、どういう事なんだろう。

思わず呆けているとハルが俺の肩を叩いてきた。

「ツナさーん?」

「・・・あ、うん・・・・」

「大丈夫ですか?」

「うん。まぁ・・・」

「そうですか?なら次は誰に会いましょうか。ボスにもベルさんにもマーモンちゃんにも会ったし、次はレヴィさんかな。」

ハルが着々と予定をたてて歩き出し、次はあのレヴィって人かぁ。と憂鬱になった。あの人って怖いんだよなぁ。いや、皆怖いけど。やっぱりランボの時の事があるから少しトラウマだったりする。

平気で子供をあんな風に殴れるなんて。

「何だか凄い丁度いいですね。」

少しだけ歩いた所でハルがそう呟き、前を見てみるとなにやら口論しているレヴィとルッスーリアが居た。

ハルが駆け出して二人に手を振っているけど、二人はお互いに相手になにやら叫んでいてハルには気付いていない。

「どうしたんですか二人共。」

「あら、丁度よかったわハル!もう聞いて頂戴よ!レヴィったら本当にくだらない事ばっかりいうのよ!」

「くだらなくはない!貴様、しらをきるのもいい加減にしろ!」

「いい加減にするのはそっちでしょー!?」

「まぁまぁ、落ち着いてください!」

ハルが仲裁に入り、しっかりとした言葉で理由を話してください!という。なんていうか、凄いなじんでる。

「それがねぇ、・・・えっと、なんだったかしら、何かをとっただろ!っていちゃもんつけてくるのよ!」

「何かではない!マゴノテだ!」

「もう!そんな変な名前覚えられるはずがないでしょ!」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・あら、どうしたの変な顔して・・・って、あら!アンタは!!」

今俺に気がついたように声を荒げて俺を指差す。小指という所が脱力を誘う。そしてレヴィがぬ。と声を出して俺を睨みつけてきた。ザンザス大好きって聞いてたから、多分俺の事嫌いなんだろうけどとは思ってたけど。

「何をしにきた。ボスにその首を差出にでもきたのか。」

「ち、ちち違います!」

「ねぇ了平ちゃんは元気?あの筋肉は健在かしら?」

んふっ。と楽しそうに笑うルッスーリアは、今まで会った中で何となく信用というか、大丈夫なんじゃないかと思える人物かもしれない。

何となくそう思ったのだが。

「あぁ、早く死体にしてしまいたいわぁ・・・」

うっとりと、恍惚に頬を染めてそう呟いた。ああ、そういえばそんな趣味だったっけ。思わず鳥肌が・・・

価値観がまったく違うこのメンバーとハルが知り合いという異色の組み合わせに俺はまだ納得が出来ていない。こんな直接的な言葉を聞いてもなんとも思わないのかな。とふとハルを見てみると冷や汗をだらだらと出していた。

今の会話で恐怖したのだろうか。

「ハル、大丈夫か・・・?」

「・・・は、はい!大丈夫ですよ・・・!?」

顔が少し青い。やっぱり、ハルは俺と同じくそういうスプラッタな世界になれないからなぁ。

同情ににた感情を抱きながら、此処はもう帰るべきだろうと言おうとしたら

「どうしましょう・・・あの孫の手ベルさんがなげちゃって木に引っかかってますよね・・・ハル、木登りは得意ですけど、あんな大きな木に登れるかどうか・・・」

「そっち!?」

困惑したように、レヴィに言うべきか悩んでいる様子。その後俺が話しかけてもぶつぶつと呟いていて聞いていない。

もしかしてさっきもこんな状態で聞こえていなかったのかも。

「ハル、ちょっと、あの、次いこう!な?ほらまだ会ってない人とかいるだろ?」

「え、あ、そ、そうですね・・・」

ハルの腕を掴んでまた思い出したように口論を始めた二人から逃げるために、走って曲がり角をまがって暫く走り続けた。

曲がり角を4回くらい曲がった所で走るのをやめて胸を撫で下ろした。

「はぁ・・・怖かった・・・」

「はひっ、はひ・・・ツナさん、いきなり走り出すから、ハルとっても吃驚しました・・・」

お互いに息を整えた後、ハルがそれじゃあ行きましょうかと歩き出した。

「え、いやいや、もういいって」

「だってツナさん会ってない人がいるって・・・スクアーロさんですよね?」

「いや・・・それはあの場でつい逃げるためにいった言葉っていうか・・・」

「きっとスクアーロさんは談話室で珈琲を飲んでると思いますよ」

簡単に俺の話をスルーするハルは軽やかな足取りで整った息をそのままにして歩き出した。これだけ曲がって曲がって曲がって曲がったのに、ハルはこの屋敷をすべて把握しているらしい。俺が一人だったら完全に迷ったー!と頭を抱えて叫んでいただろう。

とりあえずハルの後ろをついて行かないと想像通りの未来を描くことになるので大人しくついていく。

マーモンにも、ハルから離れない方がいいといわれたし。

ハルの行く先には、あの鮫に食べられる事も厭わない、プライドのザンザスと同様の剣士のプライドを持っているあのスクアーロって奴。

どうしよう。どうしようと心臓がバクバクとなっている間に談話室にはついたらしく、ドアを開けたハルに思わず後ずさり。

「あ、やっぱりスクアーロさんいました!」

「あ゛ぁ?ハルじゃねーか。何だぁ。」

「ほら、ツナさんいましたよ!」

「う、わっ」

ハルに背中を押されて中に入ると、本当に珈琲を飲んでいるスクアーロが居た。俺を見たとたん怪訝そうに眉を寄せて完璧に睨みつけていた。

椅子から立ち上がって俺の眼の前に来た。うわ高い!うわ顔怖い!

「なんだぁ。俺達に喧嘩売りに来たのかぁ?あぁ!?」

「ひぃぃぃ!!」

「違いますよスクアーロさん!ツナさんは遊びに来たんです!」

という言葉には事実も虚偽も混じっていない。どちらかというと嘘に近いような気がするけど、そこは否定しなくてもいいと判断してそのまま頷いた。

静かに心からの頷きでは無く、高速で頷いているので真摯な気持ちは完璧に見られないと思う。

「遊びにだぁ?」

「そうですよ!」

「・・・・・」

「まぁ、それならそれでいいけどなぁ・・・」

渋々といった様子で納得したらしい。苦笑をして誤魔化してその場をしのごうとする。ああ、なんていうか時間早くたたないかなぁ。

そわそわとしている俺を無視してハルはスクアーロとフレンドリーに話している。

「スクアーロさんにお願いがあるんです・・・」

「何だぁ?」

「あのですね、庭園に大きな木があるじゃないですか?右から二番目の・・・あそこの木に引っかかってる孫の手をとってほしいんですが・・・」

それを頼むのーー!?

「まごのて?なんだそりゃ。」

「えっと、木でできたもので・・・なんていうか、棒、みたいなものです。」

「まぁ、いいけどよぉ・・・」

それを了承するのーーー!?

なんていうか本当に一体何なんだろう。この身体の脱力感は一体・・・

スクアーロがハルの頭をぽんぽんと叩いて、そしてじろり、と俺を睨んだ。

「あんまりハルから離れねぇ方がいいぞぉ?」

「え・・・あ・・・」

「どうしてですか?」

「道に迷うからだ。あといろいろとなぁ。」

意味深な言葉を使うのは、ハルがいるからだろう。もし俺一人だったら死ぬぞぉ。とか、暗殺されるぞぉ。みたいな直接的表現をするはず。

なんとなく、いろいろの意味を分かる俺って凄いのか凄くないのか。

とりあえず怖がっておこう。いや、感情をコントロールするなんて事出来ないけど。

「よし、スクアーロさんもクリアしましたし、ボスの所に戻りましょうか。」

スクアーロと別れてそう言ったハルに、最後の最後でまた大ボスとご対面。いやシャレじゃなくて。

別れる際に貰ったクッキーを食べながらハルは意気揚々と歩いている。俺は足取りは重く、貰ったクッキーも食べていない。なんていうか親戚のおじさんみたいにクッキーをあげている姿を見たらあの時の恐ろしさが霧散してしまった。

最初に会って最後にまで会う。まぁ、挨拶しなくちゃ。そこは、一応日本人だし。

本日二度目に来た豪奢な扉をノックして、返事は無い。ハルは開けてしつれいしまーすと声をかける。

「何だ。」

「ツナさんがもう帰るって言うものですから・・・」

「えっと、あの、お邪魔しました!」

精一杯頭を下げてそう叫んだ。とにかくもうこの場所から早く逃げたい早く帰りたい早くクッキー食べたい。

そうするとザンザスは俺を引き止める理由も無いので、そのままさっさと帰れとオーラで示していた。

「もう!ボスってばさようならくらい言ってくださいよ!」

「るせぇ・・・おい、ちょっとこっち来い。」

俺かと思って顔を上げると、手招きしている相手はハルだった。俺はもう帰りたくて、頭を低くして後ろ足で扉に近づいた。

「そ、それじゃあ俺はこれで・・・」

「あ、ツナさん玄関までハルが見送りに、」

ぺろ。

「・・・・・・・・・」

「カスにカスつけててどうするんだ。」

「あ、すみません。」

いや、だから。

シャレじゃ、なくて・・・

 

 

 

最後を激甘にしてみました。あれ、激甘?ギリギリ甘みたいな感じだけど・・・

なんていうか普通のほのぼのヴァリハルになってすみませんでしたぁぁぁぁ!!