そういえば、と省みる。

時間をさかのぼって10年前。あの時はこの扉をただノックする事も出来なくて、ただただ震えて勇気を振り絞ってノックしていた。

懐かしいような懐かしくもないような記憶は、すぐさましまったノックした。

あの時よりも更に豪奢になった扉はとてつもなく大きく、とてつもなくノックしづらいものだった。

「返事ねーな。ツナ。」

後ろで山本が首をかしげてそう呟いた。

俺も最初はそう思っていた。あの時初めてこのヴァリアーを訪れた時は。俺は臆することなく扉を開ける。

「いらっしゃい。ツナさん。」

 

 

今回は残念ながら出席者が少ない。

もちろんの事なんだけど、それでも三人は少し寂しいなと思う。普通ならば7人居るはずなのに。

雲雀さんは一回目の会議だけでもう十分だとご立腹で、あっちの勝手な都合でわざわざたずねて第二回目の会議をするなんて事は絶対にしないだろう。きっとどこかの国で匣の秘密について調べているんだろう。

ランボは此処にくるはずなんだけど、待機しているホテルで緊張で下痢になってしまって今寝込んでいる。知恵熱も出ているらしい。

お兄さんは残念ながらルッスーリアと修行の旅に出ている。確かタイにいるって言ってたな。

クロームは前の会議にも出席していない。骸を脱獄させるための作戦を考えているとか。骸も最近は体力が無いとかで憑依するのも出来ないと言っていた。それが本当か嘘かは定かではない。

あの時、ハルがこの空間に居る事はとてつもなく違和感を感じたけれど、いまとなっては当たり前となった。

いや、普通に当たり前だろう。

まさかあの時のアレが、この未来に紡ぐものだとは思いもしなかった。

後ろに控えている獄寺君と山本は始めてみる光景に少し戸惑っているようだ。

「・・・あの、こんな状態で、本当・・・すみません・・・」

「ああ、いや大丈夫。」

俺がそう答える。多分後ろの二人はまったく大丈夫なんかじゃないんだろうけど、此処で大丈夫と言っておかないとね。社会性としてもザンザスの逆鱗に触れないようにという事も。

いろんな感情が交じり合って、とりあえず獄寺君は何だか苛々しているというかとにかく怒っているというか。

「お前・・・な、なななんでソイツと居るんだよ!アホか!?」

「なっ!失礼な!」

「迷ったのか?日本からはるばるイタリアに迷いにきたのか!?」

「そんなわけないじゃないですか!そんな事しません!」

「しかもそんな・・・・そうか、お前捕虜になってるのか。何て最悪なことを・・・」

額を覆って嘆く獄寺君に、ハルは頬を真っ赤にして完全に怒っている。ああ、やばいザンザスの顔がどんどん怒ってる。

膝に抱きかかえているハルのお腹を腕で更に引き寄せて顎を掴んで真横に無理矢理向かせている。

頬を押さえられてむごむごと言うハル。押さえつけるザンザスは獄寺君に睨みを利かせている。俺の後ろ側だから俺も被害者になってしまう。僅かに山本側にずれてみた。

「んだテメェ・・・ソイツ捕虜にしても何にもなんねーぞ。食えねぇし。」

「テメェに言われる筋合いはねぇが、とりあえず食えるっちゃー食える。」

「な・・・」

ニヤリと笑ったザンザスに獄寺君は言葉を続ける事が出来なくなった。ああみえて女性関係とかまったくないから初なんだよなぁ。

山本はどうだか知らないけどとりあえず笑ってる。

「ははっ。俺も食べてみてぇな」

「ちょ、山本・・・」

冗談でもそんなこと言ったらザンザスの銃が火を噴くよ。いや、シャレじゃなくて。

明らかに機嫌が悪くなったザンザスに、ハルがいい加減にしろと無我夢中に伸ばした手でザンザスの眼を覆い隠した。ぺちっ、と音がした。

「ふごふご!」

大人しく頬を掴んでいる手を放して、ハルが頬の筋肉を解している。

「お前等は一体何をしにきた。」

「何しにきたって・・・。この間の会議絶対に来てって言ったのにこなかったから、わざわざ来たのに。」

「お、ツナ強気な発言だな。」

後ろで山本がわざとらしい言葉を出す。いや、わざとじゃないんだろうけどさ。こんな虚勢ばかり張った姿を見てよ。脆くて今にも壊れそう。

新品のスーツは見た目はいいけど戦場では何にもないただの布に変わってしまうんだからね。変えるような発言は謹んで欲しいな山本。

「え、会議って・・・もしかして1週間前くらいにありました?」

「うん。知ってたの?」

俺がそう聞くとハルは暫く黙って、勢いよくザンザスに顔を向けた。そしたらザンザスは勢いよく更に反対側に向いた。

ハルが明らかに攻めるような眼で、ザンザスは真顔で窓の外に視線を向けている。

「・・・もしかして、あの時ですかね?起きてっていったのに、なかなか起きなくて・・・・」

「・・・・・・・・・」

「いっつも寝起きは悪いですけど、その時は本当に悪かったですもんね・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「ハルの言った言葉、覚えてますか?お仕事をしない人は嫌いです。って・・・・」

ハルのあんな眼始めてみた。この世の終わりを見せてやろうか?と問いかけている悪魔のような目。真剣な眼差しを真っ直ぐ受け止めたらどうなるか。

俺達はただただ傍観者として、ラブラブカップルの行く末を見なくちゃ。あ、後ろの二人はあの二人がカップルだって事も知らないのか。

とりあえず、この緊迫とした空気の中、あの二人の関係を聞くようなこともないだろう。一言も発する事は出来ないし。

膝の上に座ったままで、威圧感たっぷりな様子は汚染されてるなぁ。って。悪い意味でもいい意味でも。

「あー、とりあえず会議したいんだけど・・・」

「・・・そうですね・・・すみません・・・」

じろり、とザンザスを見て膝から下りたハルは俺達に頭を下げてザンザスの腕を引っ張って立たせた。

「もう!ツナさんたちに迷惑かけちゃ駄目ですよ!」

更に詳しく言えば、一週間前の会議に来たのはスクアーロで、何にも情報が無く何も言う事も聞いても何が何やらの状況で、何の収穫もなしに帰ったとザンザスに言ったら殴られた。っていう情報は要らないかな。

ザンザスの背中を押すハルは必死で、ザンザスは僅かに後ろに体重をかけているように見える。

いやいや、早くしてほしいんだけど。そんなイチャついてもらっても俺達困る。

早く帰って二人で何でもしてしまえばいい。

とりあえずハルの腕力が何倍にも跳ね上がってザンザスを押してくれたらいいのになぁ。と思う。

 

 

 

 

「馬鹿女とザンザスが!?」

大声でそう言った獄寺君は明らかに動揺している。

ああ、うんうん。俺もそんな反応したなぁ。まぁ、その後時間が経ってしまえばなんてことない事実として認識できるように思えるから。

山本も驚いて、そっか。と笑顔。

なんでも受け入れられる所が長所だと思う。けどそんな直ぐに受け入れられるその器、俺もほしい。

「あー、けどなんとなく分かるなー。何かいい雰囲気だったし。」

「そういう問題じゃねーよ!あんな危ない奴と付き合ってるって・・・」

「だってハル昔からマフィアの妻になりたいって言ってたじゃねーか。」

「それは10代目のことだろーが!」

「別にいいじゃねーか。ツナと付き合わなくたって」

「そういう事じゃねぇ!別にアイツが誰と付き合おうと俺にはまったく関係は無いが、」

「関係ないんだったら・・・ああ、そっか。嫉妬か?」

「違えよ!」

山本のズレた感性と、獄寺君の一般論はかみ合わない。

見てるこっちが疲れてくるような会話に、はぁ、と溜息を漏らした。それにしてもどうしようか。会議って言ってもザンザスはずっとムスッとしたままで何も聞いてないみたいだし。いや、聞いてたのかもしれないけど。

ずっと外を見ていて、俺の眼なんて見てなかった。ああ、人間としてのコミュニケーションの不足を補う事はできるのだろうか。サプリメントがあればいいのに。

俺達三人は空気の重さに絶えられず、そそくさと終わらせてしまった。

いい判断じゃないとは思ったけれど、事務的に終わらしてしまった。予定していたものとは大幅に崩れてしまった。

あ。

「獄寺君、山本。ちょっと二人は先に帰っててくれる?」

「え・・・どうしてですか・・・?」

「ちょっとザンザスに言いたい事があって・・・」

「うっし、分かった。んじゃどっかでラーメン食べて帰るか、獄寺」

「ラーメンなんてあるかボケ!此処はパスタだろーが!」

男二人でパスタを食べる場面を想像すると少し残念な気持ちになるのは何でだろう。獄寺君もある意味一般的な感性を持ってないよね。

山本が無理矢理肩を組んで廊下を歩いている。嫌がる獄寺君と二人消えていったのを見て歩き出す。

ハルと二人きりの時間を邪魔するのは忍びないけど、けれど此処で言わなきゃ。面と向って言わなきゃきっと後悔するだろうから。

すっきりと手早く帰りたい。

初めて訪れた時とは違う、僅かな余裕。

足取りも軽やかで、僭越ながらの言葉を胸の中で整理してみる。ネクタイをちゃんと締めて、あれ、これって何だか娘さんをください!みたいな気持ちなんだけど。

まぁ、いいや。

またやってきた豪奢な扉。ノックしてみる。返事は無い。一応もう一度、ノックする。返事はもちろん無い。

返事が無いのは当たり前のことで、俺は扉を開けた。

 

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「まだ何か用か。」

「いえ、何も。」

抑揚の無い声は動揺を隠せていたように見えて実はさらけ出すに等しい声だった。

そのまま間抜けに扉を閉めて、回れ右。

額にじわぁっ、と冷や汗を滲ませて大股で歩いていく。まるで競歩の選手のように。

ただただ無心で廊下を歩いていると、玄関にたどり着いた。そのまま階段を下りて歩いて門の外に出て、それでもまだ歩いて歩いて街に出た。そしたらレストランに入ろうとしていた二人が視界に入った。

「え、10代目!?」

「どうした?ツナ。」

それでも歩き続ける。ネクタイを緩めて、喉に引っかかる呼吸を何とかしなきゃと頭の中でかんがえているんだけどそれでも何にもならなくて俺の足はとまらなくてどうしようどうしよう。

大きな石造のある公園にたどり着いて、やっと心からの言葉を吐き出した。

「何でこんな真昼間からしてるんだよーーー!!?」

せっかく綺麗におめでとうっていう陳腐な言葉を言おうとしたのに、こんな破廉恥な言葉を叫ぶ事になるなんて。

はぁ、と四つん這いになって落胆する。後ろから二人が駆けつけてくれているけど、俺は10年間で折角手に入れた勇気と余裕を根こそぎむしりとられた気分だ。

多分、もうヴァリアーにはいけない。

 

 

 

最悪ですね。いや、ボスでもハルでもツナでも獄寺でも山本でもランボでも了平でも雲雀さんでも骸さんでもないの全部私が悪いのさぁぁぁぁ!!

ボンゴレじゃねーし。仲良し三人組、ズッコケ三人組になってしまってすみません雲雀さんとかがくるとまとまらないと思っていや了平ももちろんまとまらないキャラなんですけどね。ランボはある意味使いやすいキャラなんですけど10年後となると使いづらくてすみませんでもそんな状況になってるのにクロームか骸をつれてくるとかどんだけ異色なんだよってなってああ本当すみませんもうスランプとかいいわけつきませんよねすみませんこんなに長くなってすみませんこんなにムダにグダグダしてすみませんリクエストに添えられなくてすみません最悪ですね。私・・・

 

orz

 

あぁ、何かもう・・・・

リクエストありがとうございました・・・す、すみません本当に・・・・っ