何となくだけど、多分、俺は音楽が好きなんじゃないかと思う。

音楽っていうのは少し違う。歌うのがすきなんじゃなくて、限定すると楽器が好きだ。

ふと眼に留める音楽室の楽器なんかに吸い寄せられるように手が伸びていたりする。ちょっと幽霊が乗り移ったんじゃねーの?とか疑っていた時期があったりしたが、楽観的に見ればそれは好きだからじゃなのか。という結論に至った。

友達におい大丈夫かと言われても、俺はぼんやりと楽器を見入っていた。

野球に対する熱意、好意とはまったく違う。

無くしたものを、とりもどそうとしているっていうか、返してほしいと思う気持ちは、何なんだろうか。

 

 

 

「・・ハル、それなんだよ・・・」

「はひ?」

ツナがそんな突っ込みをしている場面に出くわしたのはついさっきだ。公園のブランコに座っているハルが、傍らにランドセルを置いてリコーダーを吹いている場面を見たときは驚いた。

ツナが呆れたような顔色でハルを眺めていて、リコーダーを加えているハルは首をかしげていた。

確かにそれ、なんだよと聞きたくなる。

「あ、山本!」

「よっす。」

「こんにちはー」

中学生にもなって公園ってちょっとアレだよな。って野球部の先輩が何か言っていたのを思い出すが、結構いいもんだと俺は思う。

「それ、ハルのか?」

俺は指差したのは赤いランドセルだった。いくら何でもそれは気になる。リコーダーはともかくとして。

「あぁ、これですか。これは小さいお友達にハルのお下がりをあげようと思いまして・・・」

「それで何でこんな所にいるんだよ!」

「届ける途中です。途中と言ってもお家にいなかったので此処で暇つぶしをしていたらツナさんと山本さんが来たという次第です!」

にっこりと笑ってそんなこといえるハルって、何か凄い尊敬する。

なんていうか奇をてらわない感じが。

そんな俺の敬意は、ツナにはわいてこなかったらしく呆れの視線だけがあった。なんだよそれ。と、さっきとは違う抑揚で呟かれた。

軽く笑ったハルがリコーダーを吹いた。穴がちゃんと指で塞がりきれなかったのか音程が外れてピー、と音がした。

「ちょ、公園で吹くなよ!」

「大丈夫ですよツナさん。小学生の頃は帰り道吹きながら帰ってましたから!」

「そういう問題じゃなくて!」

「あ、それよくやるよなー!俺もしてたぜ」

「本当ですか?」

「あー!もう天然!」

ツナが叫ぶ声の方がよっぽど煩いと感じる。

だけどそれよりもハルがぴーぴーと音を外しながら奏でる音は何処かで聞いたことがある。曲は聴いたことはあるがどこでどうやって知ったのかは定かじゃない。

多分小学生くらいの時だろうと思う。きっと音楽の授業中に居眠りでもしてたんだと思う。

「それなんて曲だっけ?」

「はひ・・・なんでしたっけ?」

「それ小学生の時に習った曲だったよね?」

「そうです!ツナさんも同じ曲習ったんですか?」

「俺も多分・・・習ったと思うんだけどなー・・・」

「もしかして居眠りでもしてたんじゃないですかー?」

ぎくっ。

さすがハル。抜け目ねぇな。

「けど何となく弾ける曲だなぁ。」

「そうなんですよ、知らないうちに指が覚えて動いてるから不思議です!」

「俺はどーだろ・・・居眠りしてて覚えてないかもしんねーな」

そう言うと二人は笑い出した。自分から白状してしまったが、それよりそのリコーダーが凄く気になる。

いや、ハルが咥えているからじゃなくて、そういう吹く楽器が一番きになる。そういう楽器ってどういうのかよく分からない。小学生の授業もやっぱり大切だと思った。

かえって小学校の音楽の教科書を開いて調べてみよう。

「なぁ、ハルそれ貸してくんね?」

「はいどうぞー!」

「え。」

あっさりと貸してくれたハルに、それに驚くツナ。俺も内心は少し驚いてるけど、それでもやっぱり今吹きたいっていう衝動がものすごいから、それは従うべきだろって。

あの頃より大きくなった手で、穴をふさいでふぅー。って。

「・・・そ、それだよ。」

「凄いです山本さん!音外れてないですし完璧です!」

ハルが鼻唄で俺と一緒に音を奏でていると、ツナも懐かしそうな笑顔で一緒に混ざってきた。

学校帰りで吹いた曲とは違うけど、これはこれで思い出す、小さい頃の景色。

あー、何か凄い懐かしい。

 

 

 

初めて会った時には、朝利さんって呼ばれてた。

けれど時間が経つにつれて、接していく時間が増えるにつれて雨月さんに進化を遂げた。それはお互いに距離が近くなったっていう証拠で、雨月さん雨月さんって呼ばれるたびにとっても嬉しくなる。

Gから音楽馬鹿って呼ばれたりするから、その反動で更に嬉しいのかもしれない。

「雨月さんって、きっと音楽が似合いますよ。」

「どうしてだ?」

「和風の音楽がいいですね。笛とか、似合います。」

突拍子の無い言葉はいつもの事だ。久々に日本に訪れたジョットとプリマヴェーラ。守護者もちらちらといるけど仕事で出かけてしまった。残ったプリマヴェーラと俺しか残っていないこの家はとても静かだ。

外はしとしとと雨が降り続けていて、いつもジョット達が来る時に降る。雨男、とGに罵られるがアイツ結構雨好きだと思うんだよなー。

あ、けど煙草が湿気るか。

緑茶の香りが漂う部屋の中で、にっこりと、それがいいです。というプリマヴェーラ。

「音楽って好きなんです。私。」

「俺も好きだけど、けどなんで?」

「えー?インスピレーションですかね?」

もしかして、ジョットと同じ超直感かもしれない。でもこれって直感なのかあやふやだけど、とりあえずそうと言うなら、そうなのかもしれない。

「そっかー。ならやってみよっかな。」

「それがいいです!きっと似合います!」

「ははっ、んじゃ、うまくなったら演奏するからまた来いよ?」

「はい!」

たったそれだけの会話で、俺はきっかけを貰った。

 

それにしても、

まさかあんなに音楽にはまるなんて、と、苦笑するしかない。

 

 

 

 

ごっちゃにしました(ぇ

リコーダーの曲は覚えてるんですね。弟が煩いほど吹いてましたから。

曲名も音程もよくわかりませんが、その音だけは覚えています。頭が痛くなるほど聞かされて、ぶっちゃけもうあんまり聞きたくないですw(←

ていうかやっぱり山ハルは難しぃー

 

リクエストありがとうございましたーww