それは野球にたとえるととてもすんなりと受け入れられる。
打って、走って、帰ってくる。
球をとって、投げて、防ぐ。
そんな簡単に説明する野球は、とても奥が深いものだ。だからあえてたとえを野球にしてみる。
そうすると、とりあえず仕方ねぇなーって、頭の中に保管できる。
難しい公式も、漢字も、英文も。全部野球のルールがテストに出れば俺は満点のはずなんだ。
きっと。
雲雀は最近変だと思う。
最近、とかじゃないと思うけど、前ももちろん変だと思ってたけど、まぁ、それは面白いという賛辞だ。
前は、目標に向って突っ走ってるっていうか、なんていうか、普通だったんだよな。普通の雲雀恭弥がそこにあるみたいな。
街の秩序とかなんとか言っていて、そしてそれを守ろうと頑張ってるって感じがする。
風紀委員長として、ちゃんと働いてたって感じがする。いや、あの体罰はやりすぎのところがあるけど、あれは愛の鞭だよな。
中身が凝縮して、やりたいことがたくさんある。体力だって有り余ってる。望みがまったく叶わない。ならば動こう。っていうオーラが凄くて、怖いと同時に凄い奴だと思っていた。
そんな雲雀が、何か変だ。
野球で言うと空振り三振した後のような、いや、あれは現在進行形。今もまた空振りしているようなものだ。
ボールになかなか当たらなくて、苛々して、でも原因が分からなくて、それでもバットを構えなきゃ当たるわけがないって感じで、がむしゃらっていうか。やけくそっていうか。
窓から見下ろしている場所は、え、俺?って意味合いで自分を指差してみても、雲雀は何の反応も示してなかった。
俺に視線を向けているわけじゃなかった。
夕日のグラウンドを、そんな眼で見つめるなんて、もしかして部活動をやりたいのかと思って次の日誘いに行ったら殴られた。
で、今日もまた夕方、ツナたちとわらわら帰っていると、じぃっと見つめている。
物欲しそうな、悲しそうな。
そんな眼で見下ろしている。群れてるのが嫌いなはずなのに、いつも俺達が帰るところを見ている。
獄寺とハルが喧嘩をしだしたので、今日は雲雀を観察するのはやめる。
雲雀は、一体どういう意味で見ているんだろう。
ハルはツナが好きなんだ。
それはいつも鈍感と言われる俺でも簡単に分かる事で、それはハルが分かりやすいからだ。
オープンにツナに猛アタックしているハルを見ていると、頑張れって応援したくなる。そうやって一直線に、真っ向勝負を挑むってすげー事だと思うから。
バッター勝負!って感じ。打ち上げてアウトにさせるなんて事はしないで、そのまま三振を狙う。たとえヒット打たれても、ホームラン打たれても関係ない。ただピッチャーとして誠心誠意の気持ちで投げているようなもんだ。
それにハルっておもしろいし、かわいいし。頭もいい。獄寺は馬鹿って言うけど、緑中に通ってるって普通に凄い。
俺はまったくいけそうにない、頭脳明晰な人間しかその地に足を踏み入れちゃいけないような場所に行っている。
それだけで少し距離置いちゃうんだけど、ハルはそういうのをまったく感じさせない。
くすくすと笑う顔だって普通に自然で、学校が違っても俺達人間なのにな!って、俺の言葉に嬉しそうに頷いてくれる所とか、凄いと思う。
だからハルとツナが付き合えばいいなと思う。
ツナだって、こんないい子と出会える可能性はとても少なくて、そして好きになってもらえたなんて更に可能性は小さくなる。
一生懸命に、頬を赤らめて、呼吸を乱して、真剣に、集中して。
ホームを片足のせて中腰で、盗塁するような寸前のハルは見てて応援したくなる。
頑張れ、ツーベースまでいけよって。
はらはらドキドキするんだ、ハルは、とってもおもしろくてかわいくて、一途な奴。
そんなツナは、ハルの事が好きじゃないらしい。
それは俺としてもとても遺憾なことだし、凄く寂しい気分になる。三浦ハル派の俺は、ツナはハルを好きになればいいと思っている。
だが、そんなエゴは叶うはずも無く、ツナに好きな奴が居るって事を最近知った。
そういえば、時々頬赤くして慌ててたり、喜怒哀楽が激しかったり、いつもより凄い落ち込んだり照れていたり。
笹川が好きだったんだなぁ。
俺は妙に納得していた。前からツナは笹川のことになると凄く頑張ってたから。ああ、そっかって。
思わず眼を細めるけど、じゃあハルは?
あんなに、俺でも分かるくらいすきすきアピールしてて、ツナはどうして曖昧にしているんだろう。
きっちり、終わらせるなら終わらせればいい。
打たせて塁に出すのも、牽制するのもいい。けどデッドボールばっかりだしているような、ボールばっかりだしてるみたいな。相手とちゃんと勝負してないようなその態度はスポーツマンとしてどうかと・・・ああ、スポーツマンじゃなかったっけ?
まぁ、思春期で、女の子に興味があるとか、ドキドキするとか分かるけど。いくらなんでもそれはかわいそうだろ。ちゃんと自分の中で好きな子がいるってはっきり自覚してるのに、それなのにハルを放置するなんて。
勇気がない。って事はないだろうけど。
それより、笹川が笑ってツナも笑っていて、ハルがとても暗い顔をしていた。それを見ていると獄寺がたたみかけてきて、獄寺も空気を呼んでくれよ。ハルこんな顔してんのに。
ツナは笹川と笑い合っている。照れて、落ち込んで、喜んで。
表情に、ツナも好き好きって書いてある。
キーポイントは笹川だ。
状況把握をした俺はそう腕組をして考える。
獄寺はハルと戦ってる。いや、口だけでな。ハルは獄寺で八つ当たりみたいな、ストレス解消って感じでけんかしてる。
そんな二人と少し離れた所で明るい声が止まない場所に二人は居る。
そう、笹川なんだ。最終的に。
ハルはツナで、ツナは笹川で、笹川は、誰なんだろう。
誰も居ないのかな。矢印が何処にもさしていないのなら、ツナを指し示す可能性はある。
ハッピーエンドでもバッドエンドでもある。終わりを告げる頃には、絶対に誰かが涙を流す結末になってしまう。
それは見たくない。絶対に見たくない。
ハルが泣いているのも、ツナが泣いているのも見たくない。
笹川はまったくノーマークだ。ノーマークでいきなりホームラン打たれたって感じの未来になるんじゃないかなーって。思う。
一番何を考えているのか分からない奴だ。先輩と話していても、笹川の色恋のことなんて微塵も出てないからなー
基本的にケーキか女友達で、男の話題は皆無。
やっぱ、こーなりゃツナとハルがくっついたら、全部丸く収まるな。
って、答えを出した所で。
「ねぇ、何やってんの。」
黒い悪魔と呼ばれていたようなそうでもないような、雲雀がやってきた。
さっき見た窓にはやっぱり居なくて、じゃあこれは本物の雲雀だとつい後ずさりをした。
銀色に光るトンファーを握って、獲物を見つけたとばかりにギラついた眼。
「よっ。」
「・・・・」
挨拶しても何にも反応してこない。
「ひ、雲雀さん・・・!」
「チッ、テメーには関係ねぇだろ!」
「はひ。」
「あ・・・・」
喧嘩してたため、感情が高ぶっている獄寺がいきなり畳み掛けるように大声で怒鳴る。
眉間に皺を寄せた獄寺に、殴りかからねーよな。と心配しつつ雲雀の顔色を伺ってみる。あり、視線は、獄寺じゃねーな。
少しずれてて・・・
「・・・・何してるの。」
「あ、いやなんでも。」
思わず雲雀と同じ目線になるように、そばによってじぃっ、と見つめていた。
笑って後ろに数歩下がって、あれ?と。頬をぽりぽりと掻く。視線がずれてた先は、ハルだったよーな気がする。いや、俺の見間違いかもしれないけど。
ハルはぱちぱちと瞬きをしていて、ツナや獄寺と同じような反応はしていない。ただ普通の反応だ。
「こんにちは、雲雀さん!」
「・・・・うん。」
ハルが俺にした挨拶みたいに、本当にナチュラルに雲雀に頭を下げた。驚いたのはそれじゃなくて、返事をした雲雀だった。
それに気がついたのは俺だけみたいで、他の皆は雲雀の恐怖にただただおののいている。
って、それもツナだけか。獄寺は完璧に喧嘩上等って感じでメンチ切ってるし。
笹川は・・・っと、コイツも怖がってる。顔真っ赤で・・・って?
「・・・・・・」
「・・・あ、こ、・・・こんにちは・・・」
「テメェ10代目に手ぇ出しやがったら果たすぞ!」
「未成年が煙草を吸うなんて、本当君は風紀を乱すよね。」
「るせぇ!!」
注目するのは獄寺と雲雀の喧嘩だけど。俺は挨拶した笹川をじっと見ていた。挨拶した後、赤くなった頬を隠すように俯いていた。嬉しそうな、悲しそうな。
挨拶できただけで十分って思ってるけど、挨拶返してくれなかったって思ってるような。
「・・・・・・。」
何か、頭痛くなってきたぞー?
「ちょ、獄寺君!」
「あ。」
「はひ!」
獄寺が果たす!とか叫んだのを聞いて、振り向いたときには爆風が俺に襲い掛かっていた。
至近距離の爆発で、ハルと笹川が危ねぇ!って振り向いたら、ツナが笹川を守っていた。ほっ、としたが、ハルは、ときょろきょろと砂煙の中探していると、黒い影が蠢いているのに気がついた。
「あ、ありがとうございます・・・・!」
「・・・別に。」
そんな会話が聞こえてきて、ハルが無事だと認識した脳は次に考えたのは、四角形。
正方形で、角にはそれぞれ名前があるんだよなぁ。雲雀にハルにツナに笹川。俺は図形は苦手だ。数学がそもそも苦手だ。
だから、そんな勉強以外でこんな悩ませるような出来事を理解してしまった事に、とりあえず嘆く。
頭が悪いんならそんなの気付くなよなー!と、日々の無意識の探究心が働いていた頭をぺちんっ、と叩く。
獄寺と雲雀は戦っていて、ツナは慌てて止めようとしているけど巻き込まれてボコボコになっている。
「はひ!ツナさん大丈夫ですか・・・!?」
「う・・・うん・・・・」
「ツナ君顔が腫れてるよ?」
笹川が声をかけて、痛そうに顔をゆがめている。ツナが何だか頬赤くなってるのは、腫れているからか嬉しいからか。
ツナから視線を上げて、獄寺と雲雀を見つめる。
「・・・大丈夫かな・・・」
と、小さな声で囁いていたのを聞いていた。
そしてそんな雲雀が、ちらりとハルの方向を見ると、一気にムスッとしていた。
いや、これは。結構誰にでも分かる事なんじゃねーの?
呆然と大きな音を発てて爆風を撒き散らす二人を見据えながら思った。
すみません。すっごく難しかった・・・!!
何より京子ちゃんを出すのが最近とても難しいんです。けど書いてる内にのりのりになってきた・・・って、殆どそんな感じだなおい。
とにかく書き出すと止まらない。悪い所も分からない。誤字脱字も読み返さないので分からない。という事なのでもしそういうのがあったらご指摘くださいませ!(←
山本視点とっても楽しかったです。傍観者的な位置は山本は書きやすいです。はい。
リクエストありがとうございましたーwww