手に入らないものが欲しくなるのは、当然の心理だと骸は思う。

手中にあるが故、それを煩わしく思い投げ捨てる。飽きてしまったから、手に入った充実感と満足感。高揚した気分は一瞬だけ。

その刹那の喜びを求め、奪い、手に入れて、投げ捨てる。

満足はほんの一瞬。あったかなかったかという幻覚よりも虚無のもの。

もしかしたら、そんな空虚な満足感、充実感を満たしてくれるかもしれないという気持ちを込めて奪ってきたのかもしれない。

あの人も、そんな気持ちで手を出しているのかもしれない。

 

 

 

恍惚の瞳で捕らえられたら、女は直ぐに腰を砕き跪くものだと思っていたが、どうやら違うらしい。嘘の恍惚など見破っているかのような鋭い射抜くその瞳は、骸のオッドアイに果敢に睨み返している。倒れた先のベッドの柔らかさなど見知らぬ顔をする。

女ならば、その事実に怯え、うろたえ、恐怖に瞳を染まらせるはずなのに。

「やめてください。」

桃色の唇から発せられた言葉は、あまりにも強かった。

凍てつくかのように、鼓膜を震わせるその音は冷たさに反して骸の身体を熱く疼かせた。

拒絶を見せる手は封じ込め、ハルの顔に影を落とすのは男の骸。

これから、楽しいことをしようじゃないか。などと無粋な言葉は要らない。ただ、この雰囲気で、空気で、状況で、察する事が出来るだろう。

聡明な彼女は、心惹かれる女性だ。

「どこですか・・・恭弥さんは・・・」

「すみませんね。ボンゴレに脅しをかけて雲雀恭弥に大量の仕事を押し付けてしまいました。」

「っ・・・・」

「助けてなど、くれませんよ。」

息を飲んだ瞬間に、変わった絶望の色。だけれどそれは一瞬で、直ぐに鋭く真っ直ぐな眼で睨みつける。その真っ直ぐさがハルのいいところだ。その瞳に、何度手を伸ばした事か。

彼女が必要だ。

「酷いですね、こんなことするなんて・・・」

「酷くなど、ありません。」

「裏切り者です。クロームちゃんはどうするんですか・・・それに、M・Mちゃんだって・・・」

出された名前は、脳裏に顔を浮かび上がらせる人物。それで心動いたといえば動いた。それは、ハルが骸と他の女とどうなってもいいのかという、絶望。

「彼女達とはなんでもありません。」

「何でもないなんて事はないでしょう!?・・・だって、二人共骸さんが好きで・・・」

「けれど、僕は彼女達に恋愛感情など抱いていません。」

「・・・・・・」

揺れる瞳が潤っている。揺らぐその瞳が、情欲を灯しているものにしか見えないのは男の性。此処で服を剥ぎ取り、肌に触れるのは簡単だ。だけど、それで壊れてしまう関係性は眼に見えている。

タダでさえこんな行動に出てしまって自分の高感度は格段に下がっているだろう。

けれど、それでも譲れないものはある。たとえ下がっても、優しくしたいという気持ちがある。

思慕してきたこの気持ちは、生半可なものではない。

たとえ雲雀恭弥のものとなってしまっても、想いが風化することは無く、日々すくすくと成長している。爆発する前に、何とか処理してしまいたい。

このもやもやを払いのけてしまいたい。

それにしても、男の下にいるというのに、この威厳は一体何なのだ。まるで雲雀恭弥を相手にしている時の威丈高なオーラ。恋人にまで感染してしまうのだろうか。

鋭い視線、睨みつける眼。冷たい空気に、譲らない地位。

たとえどんな場面であっても、自分がまけを認める様子は決して見せない。

それが、雲雀恭弥の色に染まってしまっていると思えて、余計に悔しく感じられる。

手首を掴んでいる手に力がこもる。

一瞬痛みを感じた顔をしたが、それでもまだ睨みつけてくる。ぎゅっ、と下唇を噛み締めて。

「・・・安心してください。優しくしますから」

「嫌です。」

「貴方が暴れてしまえば、僕は手荒な事をしなければいけない。」

「・・・いや、です・・・!」

ゆらゆら潤んでいた瞳から、ぽろりと一滴涙がこぼれた。嫌です。嫌です。何度も繰り返される言葉に、傷つかないはずも無い。

そんな風に、心から言われてしまったらどうしようもなくなってしまう。

この心が軋むほどの恋慕を、何処にぶつければ自分は解放されるのか。

矛先が何故自分なのかと、悲観しているのだろうか。この想いを鬱陶しく感じているのだろうか。今、骸の中にはコレしかないというのに。

誰かの手に入る前から、気になって、恋焦がれて。

素直な言葉が、そのふっくらとした唇から零れ落ちるたびに高鳴った心臓。

開花したように輝いていたあの笑顔を。ずっと見ていた。

きっと、雲雀恭弥よりも早く、恋心を自覚して、想って、見て。

それなのに、横取りされたかのようなこの現状は、一体どういう事なのだろうか。

無情にも、信じていない神を呪う自分の愚かさも。全部、嫌になる。

ぎりっ、と歯を鳴らして眉根を寄せる。

「どうしたら、貴方は振り向いてくれるんですか・・・?」

「・・・」

こっちに視線を向けなくなってしまった貴女は。

「どうしたら、僕は報われるのですか。」

こうしたのは貴女だというのに。そんな無責任に僕を乱さないでください。

「・・・ハル、だって・・・」

薄らと、開いた唇は震えていた。指先も震えて、肩も震えている。これはもしかして、本気で泣いているのだろうか。

若干恐れ、手首を掴んでいる力を緩めてしまった。ハルがそれを狙って振りほどき、骸の首に腕を伸ばした。

「ハル、だって!骸さんのこと好きなんですもん!でも、ハルは恭弥さんのもので・・・もう、もう・・・無理なんです!!」

ぼろぼろと泣き崩れるハルに、胸に熱いものがこみ上げてきた。

ハルさん!と叫んでハルの唇にかぶりついた。

痺れる。

頭から、足先まで。

 

枕元のハルの携帯がなりだした。きっと、仕事が終わらない雲雀恭弥だろう。

部屋にある時計は午前零時を差していて、今、年が明けた。

今年は、いい年になりそうです。

 

 

「っていう初夢を見たんですが、これはやはり正夢にするべきですよね!?」

「黙れ変態。」

トンファーの餌食となってしまった。

 

 

 

正月ネタっていっても最後だけじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!!

駄文だぜ。最初はもっとヒバハル骸要素を入れたかったのに・・・ちくそう!

 

すみません。ちょ、正月ネタとかすっごい書いたことなくて・・・あの、しかもこんなことに・・・

・・・リクエストありがとうございましたーーー!!(逃