全てが終わった後の爽快感。

血生臭いその充満した匂いとは裏腹のその感情は生まれながらにもっていた殺し屋としての宿命にもにたものなのだろう。

その死がそこらじゅうに横たわっている中で、一人だけ立っているのがすきだった。

死を蹂躙し、自分が生を掴み、意気揚々として生きているという証だったからだ。

 

 

 

ぷつ、

血管が切れる音、皮膚が破れる音。

皮膚の下の血管が切れ、破れた皮膚から血液がぷくりと丸く出てきた。

そして量が多くなり、丸いままでいられなくなったそれは指を伝って地面に落ちる。

赤は、命の印。

「・・・痛いだろ?」

「痛いです・・・」

小さい声は静かな部屋によく響いた。反響する場所はとても遠いが、こんなに近くに居れば嫌でも聞こえる。

本当ならば、もっと痛いことをして教えたい。

命が何なのか。

内臓をぐちゃぐちゃにして、そこらじゅう血溜りを作って、骨を軋ませて、折って・・・

 

「痛いだろ?なぁ、痛いだろ・・・?」

「痛いです・・・痛いですけど・・・・」

「いやだろ?痛いの・・・」

「・・・はい・・・」

「だったら、さぁ・・・」

 

コイツは、あまりにも馬鹿なんだ。

ずっと前から、そしてこれからもそう思い知る事になるだろう決定事項。

馬鹿みたいに笑うのは、馬鹿だからだったのかと知ったのはいつだったか。確か、この命についての授業をする前に気がついたんだ。

高いところから突き落としたら、人間はあっけなく死んでしまうのだ。と、いう事も教えなくちゃいけない。

コイツは馬鹿だ。

馬鹿は、刃物を持っていいはずが無い。

それなのに、料理はするし林檎は剥くし、紙ははさみで切るし。

その使っているそれらは、血を流す事になるかもしれないものばかり。皮膚を破り、血管を切り、骨に突き刺さるかもしれないようなそれら。

経験したことのない痛みが直ぐ其処まであるというのに、三浦ハルはへらへらと笑って作業に勤しんでいる。

それを見ていて苛々した。

それはそう使うんじゃない。

もっと違う。命を葬るためのもの。不躾に葬る道具だというのに。と、遠くから見ていてそう漠然と思っていた。

人の命を奪うもので、果実の皮を剥くもの。だが、人の皮も剥けるそれ。

奪うだけのそれは、お前の髪も切り落としただろう。

体温を維持できるのは、生きているから。生きているのは心臓が動いているから。そして血液が循環しているから。

骨があるから。と、人間の全てを教え込まなければいけないのだろうか。

カルシウムで骨は出来ているんだとか、人間はほとんど水分でなっているんだとか。

ほかにもたくさんコイツに知識を吸収させる必要がある。

人は空を飛べないんだとか、サンタなんていないんだとか、俺は人殺しなんだとか。

 

「痛いのは嫌ですけど・・・ハルはベルさんといたいのです。」

「・・・だから・・・」

「ベルさんといたいのなら、痛いことを我慢しなければいけないって言うなら・・・頑張ります・・・」

「・・・俺が言いたいのは、もっと違う事だって、わかってんの?」

「・・・一応は・・・」

「じゃあなんでそんな的外れな事言うわけ?」

「・・・だって、一つ一つハルが大丈夫ですって言わなきゃ・・・ベルさんとっても不安そうな顔してますから・・・」

「・・・・・・」

「安心、させなくちゃいけないでしょう?」

 

自愛。

それがあれば、刃物は人を傷つけない。

人の身体の一部となる食べ物を切ることだけしか出来ないはず。と。

 

「心配性ですよ・・・」

 

人となりがどんなものかもしらない。無知で、馬鹿な女。

王子が啓蒙するという事実の重みすら、理解する事は一生無いのだろう。

指から落ちる血はとても暖かいものだろう。だが、ひとたび床に落ちてしまえば温度は逃げて、ただの血となる。

もう、お前のものじゃなくなる。

指を親指でこすれば、滲んだ血はお前から逃げていく。

ほら、ナイフじゃない、俺の爪でこんな風になるんだ。

こんなに脆かったらどうするんだよ。

お前よりも脆いものは、どうすんだよ。

 

 

 

妊娠したハルに不安を隠せないベル。

あれ、私ベルの性格知ってる?あれ?知らない・・・・?

やっべぇ。これは誰?っていう質問はすみませんが受け付けません。私もわかりませんので・・・(ぇ

 

ベル・・・ベル・・・?

 

BGMは処女懐胎、あるいは白骨塔より少女達は飛翔する

もう惚れるっちゅーねん。