「ぐすっ・・・ハルは、ハルは・・・!」

「はい、水です」

「どうも・・・・」

 

 

 

ボンゴレの廊下にて、うつ伏せに倒れていたハルを風が拾い上げたのは一時間ほど前。

夜の訪問者というものは少なくは無い。昼よりも夜のほうが多い時もあるくらいだ。

マフィアは基本的に夜の人間。

暗闇で動くのが基本中の基本。

仕事が終わり、事務員は昼働き夜休む。故にお酒を飲んでいてもなんら文句は言えない。

酔いつぶれ、仕事の愚痴を漏らすこの部屋はアルコールの匂いが充満しすぎている。

沢田綱吉に少し用があったのでアポも無しに来たのがいけなかったのだろうか。ちらりと顔見知りがベッドに横たわって寝息を立てていたり、床に転がって寝ているものもいる。

「ハルも力があれば・・・きっときっと、お役に立てたはずなんですぅ・・・!」

「そうですね」

「そうだったらごくれらさんなんかに・・・アホ女なんていわれないんですよぉ!」

また机に顔を伏せて泣き始めるハル。床で寝ていた獄寺が眉を寄せて寝返りを打った。

「・・・ところで、この状況は一体なんなのでしょうか?」

「・・・年末の、おしごとがおわってうれしーかいです・・・」

「ああ・・・」

ボンゴレは、年末に仕事を早めに終わらせて数日何が何でも休日を与えるという、マフィアとしては少しおかしい決まりごとがあった。

年の終わりというものは、世界共通で今年の汚れを綺麗さっぱり洗い流して年を明けたいものだ。

マフィア界でその名をしらないボンゴレファミリーは任務も多く、その報告書だの任務依頼書だのデスクワークの仕事が後から後に溜まっていく傾向がある。

ヴァリアーもそうだが、ボンゴレは基本的にデスクワークをする人間があまりにも少ない。

身体を動かして仕事をするまるで獣のような人間ならそこら中にたくさんいる。

同じアルコバレーノのベッドの上で帽子で顔を隠して寝ているリボーンもそうだし、床で一升瓶を抱えて寝ているコロネロもそうだ。

そういえば、どうしてコロネロまで此処にいるのかという疑問が浮上する中、ハルの頭も浮上した。

「うぅ・・・でも、ハルは・・・がんばっておしごとかたづけたんですよぅ・・・」

嘆くように呟いた。

「こんなまどろっこしーことなんて、できるかって・・・いったんですよ、ごくでらさん・・・」

「はぁ。」

「だから、きょうは、はるのかちですよねぇ?」

「そうだと思いますよ。よかったですね」

柔和にそう答えるよ、酔っ払って焦点の合わない瞳をぐらぐらと揺らしながら、にへらと笑った。

「ですよねぇ・・・」

まるで子供のような笑い方に、つい頭を撫でたくなってしまうのはどういう癖か。

くしゃり、と、綺麗な髪を撫でると、ぽかんと口を開けて。

「・・・はひー・・・」

あたまなでられたの、ひさしぶりですー・・・

と呟いて机に額を思いっきりぶつけた。

ゴンッ。と音がしたのはさすがに驚いたが、その後に聞こえてくる寝息も驚いた。

痛みで眼が覚めなかったのだろうか。

ふっ、と笑って、また引き寄せられるように手を伸ばして撫でる。子供のような髪の毛に手が吸い付く。

すぴー。と聞こえる寝息の後に、幸せそうな声を漏らす。

「あはぅ・・・だめれすよぅ・・・ケーキは一日いっこまでですってぇ・・・」

むにゃむにゃと。

くすり、と笑って。記憶をたどり寄せて繋がった糸。

イーピンの言っていた三浦ハルに違いない。

噂どおりの面白い人だ。

そのまま静かに笑い続けていると、ベッドで寝ていたリボーンが帽子を取ってこちらを見た。

「・・・何笑ってんだ・・・」

「ああ、お久しぶりですね。起きたんですか?」

「ちょっと前にな。」

「おや・・・」

「・・・何か用か?」

「・・・あったんですけど、もういいです。忘れてしまいました。」

「・・・おい。」

「はい?」

「・・・そろそろ手離せ。」

がちゃんっ、と銃口がこちらに向けられる。

ブラックホールのようなその銃口の奥には、おそろしい威力を隠し持っている銃弾がセットされているに違いない。

両手を上げて降参のポーズを見せると、つまらんとばかりに顔を背けられた。

「用がねぇんなら、此処片付けていってくれ。」

「それは御免です」

「チッ・・・まぁ、とりあえずさっさと帰れ。」

相変わらずなその態度に、苦笑しつつ椅子から立ち上がる。

一度眠ったハルの寝顔を見てから去っていった。

夜の静かな廊下を歩き、弟子の顔を思い浮かべる。

友達だといっていた。とても明るく元気で、ちょっとおかしいけど優しい人だと。

人の縁というものは何があるか分からない。故に、その出会いを大切にしなければいけないものだと思うのです。

と、勝手に一人で解釈し、呪われた仲間のあの態度を見てつつきたくなっただけという悪戯心だけじゃない。

帰ったら久々に酒を飲もう。

泥酔しないように注意を払って

 

 

 

これは甘々ですか?

これは甘々ですか?

これは甘々ですか?

ねぇ、違うよね?これ全然ちーわーうーよーねぇ?(何

駄目だわ。風ハル。つかめないわ風ハル。

つかめないなんてまさに風・・・!さすが風ハル・・・!(黙

 

まったく甘くない!砂糖がまったくたりぬ!!