熱い息も凍てつく真冬の日。

ちらちらと控えめに降る雪は、小さな一歩のように地面に静かに白で染め上げていく。

誰もがクリスマスの後は年越しで、一年の自分達の怠惰に嘆く頃は学校には来ない。

嘆く時間を与える為でも、自由を与える時間でもない。

「ぁっ・・・・」

喉に一つ、呪いのような赤が見える。

綺麗な曲線を描く腰に腕を回して少し引き寄せ、ぷっくりとまるで小さな淡い果実のようなその唇にかぶりつく。

柔らかな、馥郁として香るのは媚薬のようだった。

喉に焼けるアルコールのような唾液は唇を濡らした。

ぺろりと舌で自分の唇を舐め上げ、恍惚の表情を晒す。

冬休みというものは、男と女の情事の為の時間だ。お互いの体温を分かち合う為、凍える冬を乗り越えるために。

 

 

 

 

「さ、寒いです・・・」

ぶるぶると身体を抱え込むハルは、服をゆっくりと着させる雲雀に向かって言う。

歯をかちかちと鳴らし、寒いと言っているのに身体は薄桃色になっている。その光景は生まれた赤ん坊が遊んでと鳴いているようだと雲雀は思う。

「ほら、次は足、だして。」

「だ、だしてって・・・」

渋々ながらも、雲雀恭弥が突発的に思いついた着せ替え人形ごっこに付き合う羽目になるのだ。

服は全て雲雀が独占し、肯定の意を出さなければそのまま服は燃やされて三浦ハルはこの真冬の応接室に置いてけぼりになってしまう。

もちろん、雲雀は優しくは無いから直ぐに帰ろうとするだろう。ストーブを消して。

丸裸の三浦ハルの生涯は虚しく消え去る事になるだろう。

だから、黒いニーソックスを持って履かせる雲雀に付き合うしかない。

脱がせた責任はそちらにあるのだから。当たり前の事なんです。と言い聞かせる。

両足が温かさで包まれ、ほぅ、と息を吐く。

「・・・やっぱりエロいね。それ。」

「はひ!」

「・・・そそられる・・・」

自分が一番嫌いな単語を耳元で、熱に犯されたような声で囁かれる。

情欲に濡れた眼は、戦前前の戦士の熱さのよう。

「な、何言ってんですか・・・!もう駄目ですからね!駄目ったら駄目ですから!」

ハルの顔に迫ってきた唇を押し返す。ぐいぐいと力を入れているにも関わらず。雲雀は涼しげな顔をしている。

余裕があるからこそのその表情に、このまま押されたら敵わない。

チッ、と舌打ちをして離れた顔。杞憂に終わった事に安堵の表情。

「っていうか!な、なな、なんで・・・何でソックスから履かせるんですか!普通は下着からでしょう!?」

「いいでしょ。僕のなんだから。」

「ハルのお洋服です!」

「・・・ふうん。なら、この服外に捨てちゃおうかな。」

ぴらぴらと、脅しの一言でしかないような台詞と、見せられる下着。

「うぐ・・・っ」

女子になんてことをするのだろうか。この男は。

寒さで身体が凍えて、あまつそんな恥ずかしい事をするなんて。なんて、鬼畜な・・・!

「―――っ、もう!早く着せてください・・・!」

身体を隠すように、寒さから守るようにして交差している腕。やけっぱちに叫ぶその表情に満足したのか、雲雀は口元を吊り上げてまた再開する。

「次はどれがいいかな。」

数枚の布を見て悩む姿はもう滑稽だと言ってやればやめるだろうか。

羞恥で頬が赤色に染まるハルが、恨めしげに視線を送りながら考える。

「腰上げて。」

「って・・・だから、何で・・・次は下着がいいです・・・!」

「・・・いつも僕直ぐ脱がすからね。ちょっとしたあれ。なんていうの?お試し?」

分けの分からない言葉を言って、スカートを履かせる。少しだけひらひらと揺れている黄色の布。足がやっと隠れた事に少しの安心を得たが、雲雀の視線でそれが奪い去られた。

「・・・な、なんですか・・・もう・・・!」

「・・・下が何もないって言うのもいいね。」

「・・・・・・・ひばりさん、来年まで禁欲するならハルはこのごっこに付き合ってあげてもいいですよ・・・?」

さっきからこのセクハラはもう許す範囲を超えている。

惚れた弱みがもう使用不可能なくらいになってしまったことを、賢い雲雀は瞬時に判断する。

こういった性的な意味を孕んだものが苦手なハルにはもう駄目か。

終焉を予告するハルの険しい表情に、悪戯をやめるように、降参するように両手を上げた。

ぷんぷんと怒りを露わにするハルが寒さから逃れる為にすばやく服を身にまとう。

「よし、ほら雲雀さん帰りましょう!」

茜色から直ぐに黒に変わった空を見てハルが宣言するように立ち上がった。

ストーブのスイッチを消して、電気は元からつけてなかったのでそのまま。鍵をかけて雲雀が持ったままだったマフラーをハルの首にかける。

行為が終わってから暫く、寒さの中にいさせたのが悪いのか頬が羞恥じゃない桃色になっていた。

「寒かった?」

「当たり前です。」

問いかけると、唇を尖らせて拗ねるように歩き出した。

薄暗い廊下を軽やかに歩くたびに、スカートがひらひらと揺れる。

ちらちらと見える白さは透き通るような白い肌が瞳孔を刺激するように現れる。

「・・・・ねぇ、寒くないの・・・?」

くるり、と振り返って

「・・・寒い、ですけど・・・?」

女子のファッションというものがいまいち理解されていないなとは思っていたが、と眉を潜めて素直に感情を吐露する。

その様子を見てふっ、と笑う。

「僕の家に来てもう一回するのと、自分の家に帰ってぬくぬくと平和な夜を過ごすのとどっちがいい?」

ポケットから出した雲雀の家の鍵を綺麗にハルの手の中に落ちた。

しばらくそれをじっと見つめて、銀色の鍵をぎゅっと握り締める。あの小さな鍵に熱が伝わって暖かくなっているだろうというほどに。

「・・・ハルはそんな簡単な女じゃないですから。」

にっこりと笑ってまた歩き出した。肯定とも否定ともとれるその言葉に、とりあえずついていけば分かるか。と、

雲雀家に足を向けて歩き出したハルの背中を追う。

 

 

 

甘々というリクエスト、エロと甘々の境界線が難しいなぁ・・・

と、思いながら書きましたー!

 

裸にニーソックスだけっていうのはすんごいエロいと思う。

マニアックなプレイが雲雀さんは好きそうd(強制終了

 

 

title 泣殻