彼の好きなものは和食で、嫌いなものは人の群れ。

好むものは故郷の日本のものが好き。和風なものに囲まれていると安心できるといっていた。

でも日本の人の多さにはうんざりしていた。

そしてそして口癖はワォ、と噛み殺す。

丸い頭だと言ったら静かににらまれる事も忘れない。

秋刀魚をこの間出したときに大根おろしがないと少しだけすねていた。今度からは忘れずに入れておこう。

 

 

 

10年以上付き添っている草壁ですら、雲雀の性格はつかめていない。

ふらふらと軸が無い人間じゃなく、真っ直ぐしているのにどうしてかふらふらしているように見える人。

信念があるのは分かるが、その信念をあまりにも尊重しているからのぶれ。

直立不動の電柱が20度ほど傾いているけど、どんな強風に吹かれても揺らがないような。

そんな雲雀恭弥がボンゴレの守護者となったのは奇跡的だった。

さすらいの旅人みたいに自由奔放な雲雀恭弥が頷いた瞬間には、リボーンですらニヤリと笑ったくらい貴重な瞬間だった。

だが、次に提示された条件にはリボーンのたれ眉がぴくりと動いた。

シンプルに言うと「群れたくない。」という事。

口癖のように言っているその言葉。それだけぽつりと文脈もなければ前置きも無い。条件がある。群れたくない。の続き方はツナが首を傾げたのにも何ら不思議は無い。

不思議なのは雲雀だった。

「群れたくない。だから君たちとはつるまない。お互いに利益が得られる時には協力してあげてもいい。それだけ。」

提示された条件はただ一つ。自分は誰にも縛られたくないし、跪きたくない。

だから適当に、たまになら君たちの力になってあげる。という事だった。

ツナは自分達の欲をこの場で更に言えば、交渉は決裂。そんな結末を見越して汗を流しながら頷いた。

本来ならばこんな風に協力してあげると言わせただけでも大きなものだ。

だが、貪欲な家庭教師はそれを許さず、ツナの頭を蹴った後に雲雀に更なる要求を言ってきた。ぴくり、と今度は雲雀の眉が動き、首を横に振る。

「これ以上もこれ以下も無い。僕の譲歩はこれでおしまいだよ。」

そんな事があってから数年ほど、イタリアのボンゴレアジトの近くに風紀財団のアジトを建設した。

のどかなイタリアのヨーロッパな雰囲気とは裏腹に、純和風の大きな建物が建てられた。そして日本にも地下に似たような建物を建設する予定だ。

久々の守護者の招集に気まぐれに応じた雲雀が帰ってくるのはもう少し。

ハルは風紀委員の学ランと同じく、和服を着用する事が暗黙の了解で決まっていた。

ハルが洋服を着ていると少しだけつんとしていて、ハルが和服を着ていると微妙に饒舌だったりする。

その変化を見て、和服を着ると機嫌がよくなる。

ならば着るほかないだろう。

日本人としての当たり前のたしなみを、イタリアに来て覚えさせられるとは思わなかった。

ハンバーグを焼きつつ、野菜のお浸しを小さな小皿にのせていく。そのいい匂いに誘われ、やってきたのは主の雲雀ではなく、その付き人の草壁だった。

「あ、おかえりなさい。」

「ただいま戻りました。すぐ恭さんが帰ってきますので」

「はい、分かりました。」

ハンバーグを焼いている火を弱火にする。

雲雀がもう直ぐ帰ってくると言うのならば、早くお皿に盛り付けないと。

「・・・あ、お帰りなさい恭さん」

頭を下げる草壁に、ネクタイを緩める雲雀が今さっきまで一緒に居たのにそれはどうなんだという視線を向けるが、とりあえず適当に返事をした。

鼻を擽るいい匂いは直ぐ其処から漂っている。

中を覗き込むとハルがハンバーグを皿に乗せているところだった。

「・・・あ、おかえりなさい。雲雀さん」

もう出来たらしく、ぱたぱたと駆け寄ってスーツの上着を持つ。そして廊下を歩きながらネクタイを外してそれもハルに渡す。

自分の部屋の障子を開けて中に入ると、ハルはすぐさまスーツの上着をハンガーにかけて、ネクタイを真っ直ぐ伸ばしてかける。

Yシャツを脱ぐ雲雀に背を向けて自分は外へ出てまた料理をするために調理場へ。

「はひ・・・」

「あ・・・・」

中に入ってみると、草壁がハンバーグを一つ口に咥えていた。

珍しい様子に、暫く瞬きを繰り返しているハルと、冷や汗を流しつつ弁解の言葉を捜している草壁。

「いえ!これは、違うんです!・・・お腹が・・・すいていて、出来心で・・・」

「・・・はい、別にいいですけど・・・」

ハンバーグはたくさんある。雲雀一人のために作っているにしては量が多い。

多く作っててよかったと安心しながら微笑む。

「お腹がすいたんでしたら、次から草壁さんの分も作っておきますから。」

「! いいえ!そんな事はまったくいいです!・・・じゃなければ俺は恭さんに殺され、」

「何してるの。草壁。」

ハッとなり、二人は声のした方を見てみると和服に着替えた雲雀が不機嫌そうに佇んでいた。

「・・・それ、僕のハンバーグ・・・」

「!・・・こ、これは・・・・」

「あ、あのっ。雲雀さんのは、こっちにありますから。ね?」

机の上に置いてあった皿を焦りながら見せるハルなど眼中に無く、ゆらゆらと揺れる瞳は殺気にみなぎっていた。

きっちりとセットされたリーゼントが、少し萎びて見えるように思える。

袖から出したのか、それすらも分からない速さでトンファーを取り出した雲雀にぎょっと眼を見張る。

「ちょっと、雲雀さん・・・!?」

「・・・噛み殺す。」

 

 

 

ぺろりと平らげたお皿に、アジトの外に放り出された傷だらけの草壁をサンドバックにした雲雀は両手を合わせてご馳走様と言った。

頑張って作る料理をこうして食べてくれるのはとても気分がいい。ハルは頬杖をつきながら、おそまつさまでしたと言う。

口の端にご飯粒を一つつけている雲雀に、微笑みながらそれを人差し指でとりぱくりと食べる。

雲雀恭弥からは新婚気分。

三浦ハルからは親子気分。

合間見えない二人の思考は、なぜか微妙にかみ合う。

 

「明日は仕事休みだから。」

「なら一緒にショッピングにでもいきましょうか?」

「ううん。寝る。」

「はひ・・・」

「抱き枕になってね。」

 

 

 

こんな感じで雲雀さんの一方通行だったら萌えに萌えるなぁ・・・ww

お世話をするハルというのがとってもぴったりきていたのは、ハルがとてもいい妻になりそうだからだろうなぁ・・・(ぇ

 

 

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