ふわり、と。
眼の前の髪が舞い上がる。
ハルよりも長いその髪に、嫉妬を覚えてしまう。
恋の病のような熱さが胸に宿る。
秋の赤に眼が眩む。
眩しいほどのその綺麗な色の中を果敢に歩くのは長い髪。
幻のようなその背中についていくのがやっとの状態。
「綺麗でしょう?」
此処が、好きなんです。
くすくすと、意地悪そうに笑う骸に、ハルは眼を細める。こちらを振り向かないその優しくない背中。
ゆらゆらと、ふわりと軽々と風にたゆたう髪の毛を引っ張りたい気分になる。
くしゃ、と小さな命が潰れるような音が歩くたびに鳴る。
枯葉は舞い上がり、落ちて。踏まれる。
山奥の紅葉に出かけようと、久々の任務が無いオフの日に誘ってくれたのは嬉しいが、何故こんなにも眼が開けられない状況なのだろう。
自然の中を堪能するには不似合いなブーツで踏み、歩き続ける。
あっちの方が、絶対に歩きづらいはずなのに。
ハルは追いつけなかった。
腕で目元を隠しながら、吹雪の中を歩くみたいに一歩ずつ。
その様子を見ていないのに、音で楽しんでいる骸。
ひらひらと紙ふぶきのように落ちる葉が、とても無残なものに思えてくる。
骸を引き立てる為にあるかのような。
作られた、ような・・・。
「さて、」
くるり、と振り返って。
意地悪に目元を緩めて。
「もう、分かってしまったようですしね。」
「・・・骸、さん・・・」
「また任務です。」
ぐらり、世界が歪む。
分からないまま、全部が分からないまま
「おやすみなさい。」
また、会いましょう。
耳に響くイタリア語で言われて、夢として片付けられた刹那の時間。
眼を覚ました時には現実じゃなく、脳裏の光景だけだとして作られる事実。
うそつき。
イタリア語の後に、日本語で呟いた。
いーみふーめいーーー!!
すいません。ちょ、もう一個まともなのを抱き合わせますので・・・(ぇ
title 悪魔とワルツを