息苦しくなるくらい、情熱的なものだったから。
酸欠状態にまで陥れるこの口吸いを、ハルは甘受している。
甘受というよりも享受に近い。
だって、愛を欲しているのはあの人なのに、どうしてハルが貰い受けているのでしょうか。
と、聞きたくなる。
これで、本当にボスは満たされているのでしょうか?
ハルだけが満足しても意味が無いのに。
ボス、ねぇ。だから一時キスを中断しましょう。
「はっ、がはっ・・・・あ・・・う・・・」
多分、アレは三途の川だった気がする。と、恐怖に身を包みながらあの光景を思い出す。
友達の死んだはずのペットの猫が走り回っていたような・・・・いや、違う。あれはきっと違う猫だったんでしょう。
涎が垂れているのでそれを袖で豪快に男らしく拭うと、息切れをしてもおかしくないだろうに、ザンザスはじっと見下ろしている。
あれ、殺される?
そんな、蛇に睨まれた蛙のような感じで見下されていたから。
「・・・ボス?」
「息は整ったか」
「はい?」
ソファーに倒れこんだハルにさらに覆いかぶさってまた唇を押し付ける。それからねっとりぬっとりと舌を絡ませてくる。何かを引き出そうというくらいに。恐ろしい。
非力なのはハル自身か、それとも女の性だからなのか。どっちにしろ、男には勝てない。ボスには、あの最強のヴァリアーの暴君のボスには勝てしないのだ。
「ボス・・・待って・・・」
「なんだ、何が不服なんだ」
「不服とかそういう事じゃないんです・・・」
自分のすること全てがうまく行かないとおもしろくない。そんなボスだから、そんな彼だからこそ修正しなければならないことがあるだろう。と、ハルは自分自身に問いかける。
「違うんですよ。もっと違う事なんですよ。」
「ああ?」
眉に深く皺を寄せて耳を引っ張る。
顔をずいっと近づけ、凶暴な眼でハルの瞳を抉り出しそうなほどの殺意の入った視線を送る。
唇がかすかに擦れ合う。腕を掴まれているその腕が、動かずにそのまま掴んでいるのに、どうしてか服を脱がしたそうにしているように感じてしまうのはハルの被害妄想なのだろうか。
「だからですね・・・」
言いたい事はあった。愛を注ぐのはもうやめてほしいと。こっちから注がせてほしいと。
でも、そのまま言葉に出すのはあまりにも恥ずかしい。だからもっと崩した言葉を頭の中にあったはずなのに。
無くなってしまった。霧散してしまった。
「あー・・・・」
口から出るはずの言葉が無く、虚しい声だけが出てしまった。
その声がボスの苛々を煽ってしまうのは重々承知しての事だったが。無意識だったのでもうしょうがないじゃないかと、怒り出したい気分だ。
「違うんですよ?違う、」
「黙れ。もう。」
徹夜続きのボス様は、いろいろと溜まっていらっしゃるようです。ストレスも性欲も、愛にも飢えているらしいのです。
「あー・・・・」
また虚しい声が出て、直ぐに塞がれてしまった口に、それは仕方が無いな。と許してあげた。
厳しく、ハルが愛をあげます。と決めていたのに。
あれ?甘いですか?これでも厳しいつもりなんですが・・・
離された唇はまず酸素を求めて、
「ボスの教育方針を考え直した方がいいかもしれませんね」
「なんだそりゃ。」
うーむ。
なんだそりゃ。は、完璧に読者様の声でしょう(ぇ
ああ!何だこの文はぁ!貴様、カッ消されたいのか。と。ボスに言われても仕方ないです。
何でしょうね。何ででしょうね。
何だか・・・あー・・・
とにかく謝らなくちゃね・・・!
すみませんでした!(スライディング土下座