「ミーは飲酒はしませんよ。」

誰も聞いていない場面で、何故か無性に言ってしまった。そんなムダな事を、普段ならしないのだが、このあまりの光景にそう呟いてしまった。

自分は違うんだ。という意味を込めて、此処に居るはずの無い誰かに向かって言い訳をする。

「あー。うるっさいですねー」

耳をふさいで後ろを向く。だが直ぐに背中にナイフが刺さったのでまた前を向いて構えておく。

無礼講。

祭り。

なんだろう、飲み会?

とにかく酒瓶やらビールの缶やらウイスキーの空き瓶やらワインがまだ入っているのに倒れていたりとか。

とにかく、面倒臭い状況になっていた。

倒れた瓶や缶に入っていた残りが、高級カーペットにしみこんで其処だけ色が違っていた。

ソファーの上にあるクッションの中身の羽が散乱して、今もまだ騒ぎ続けている連中に冷たい視線を向ける。

「う゛お゛ぉぉぉい!!俺は必ずザンザスを殺すっ!」

「カスが、出来るのかテメーに」

「ウルァ!舐めんじゃねぇぞぉ!!」

「ボスッ!何故俺を褒めてくれないんだ!時計をセットし忘れたからか!?それとも・・・・何故なんだぁ!」

「うしししししし。存在がウザいんだろ。存在が駄目なんだっつーの。死ねよ。俺が殺してやろーか?」

「嫌だぁ!せめてボスに殺されたいっ!」

「つまんねーの・・・・フラーン!お前相手しろよー!」

「嫌です」

「はひー!!もう駄目ですよー!限界ですよー!極限じょーたいですぅー!」

「ハルー。お前相手しろよ。もちろん夜のなー。うししっ」

「はれ・・・?ベルさん・・・スクアーロさんの髪の毛が何故か赤くなっているように見えるのですが・・・」

「んー?あー、ほんとだー」

「ガファッ」

「カスが。」

大乱闘ですね。もう。

あの傍若無人なボスはこの中の誰よりも飲んでいるというのに、酔っていなかった。

ミーが隠れているソファーにドカッと座って、足元に転がっているロン毛を踏みつけている。

何処までもドSなんですからー。

「フラン、何とかしろ。」

「何とかって言われてもー。ミーは知りませんよー」

「おら、ハル喘げよ。」

「ひゃひっ!痛いです!痛い痛い痛いっ!」

「きもちーんだろ?なぁ、ほらー」

「痛いですー!もう・・・やです・・・」

何かとてつもない会話を聞いてまた振り返って其処を見ると、泣いているハルセンパイの背中に乗ってぐりぐり踵を押し付けている変態王子が眼に入った。

「ウルトラミラクルプリティーフランキーック」

叫んで馬鹿王子に蹴りをかますと、酔っているからか避けられずにそのまま吹っ飛んでしまった。

「んだそのネーミングは。」

「今考え付きました。忘れてください。二度と使いませんから。」

冷静なボスの突っ込みにも対処して、とりあえずセンパイだけでもこの戦場から外さないととおんぶして部屋から出て行く。

「う゛お゛ぉぉぉい!付き合い悪ぃーぞぉ!フランもハルもまだ全然飲んでねーだろーがぁ!」

「黙れ、クソが」

「ぐえっ!」

「ボス!蹴るなら俺を蹴ってくれぇ!」

「今王子飛ばしたのお前か?お前だよな?やっぱり殺してやるよ。タダでな。」

 

 

 

「あー。騒がしかったですー。」

夜の静かな廊下を歩いていると今さっきまで居たあの部屋の騒がしさが引き立てていた。

歩いている足音すら聞こえるこの静かな空間。なんて居心地がいいのだろうか。

おぶっているハルの寝息まで聞こえてくる。

「ハルセンパーイ、寝たんですか?」

何て、聞かなくても分かってますけどね。と一人で答えを見つけて溜息を吐いた。

何であのカスアーロ作戦隊長のムダな100戦をして、ムダに大騒ぎしてお祝いだぁ!なんて言って。酒やらつまみやら持ってきたと思ったら、あの酒好きのボスが乗ってきて、そのまま全員のって。

あの家庭内暴力マシーンが飲んでいると変態雷親父がそれにあわせてどんどん飲んで、それを見たあの堕王子がまたどんどん飲んで、それを見たカスアーロが・・・って、もう無限ループじゃないですかー。

恐ろしいです。馬鹿ばっかりですー。

そしたら皆で酒癖の悪さを競い合ったりして・・・馬鹿ですねー。見てらんないです。

ミーも最初はちびちび飲んでいたんですが、だんだんとその馬鹿な様子を冷静な頭のまま高みの見物がしたいなー。と思ってストップしたら・・・。

あのまま酔ってミーも馬鹿の一員になったほうがまだましだったのでしょーか。

「むにゃ・・・はふ・・・」

いや、それは無いですね。

この危なっかしいハルセンパイを救出できたんですから。よしとしましょう。ああ、なんてミーっていい子なんでしょうか。と一人笑っているとハルの部屋に到着した。

別に普通の部屋なのだが、そこで立ち止まってドアを見る。

心の準備が出来てなかった。少し冷や汗が頬を伝う。

そういえば、今この寝ているハル、そしてこのハルの部屋。今あの遠い部屋で馬鹿騒ぎしている連中。

部屋だから、ベッドもあるし、鍵もついている。多分全員、もしくはあのボス以外はあの部屋でそのまま寝てしまうだろう。

これは、チャンスであり、試練だ。

「あ。」

そうだ、鍵といえばこの部屋も鍵が閉まっているんだった。

どうしよう。壊してしまおうか・・・それとも自分の部屋に、

そう悩みながらドアノブに手をかけるとあっけなく開いた。しばらく少し空いたドアを見つめて溜息を吐いた。

警戒しましょうよ。もうちょっと・・・

背負って無邪気に寝ているハルに言いたかった。

あまりにも無防備なものだから、そのまま部屋に入って電気を付けた。

ヴァリアーに似つかわしくない女の部屋。部屋に入った瞬間ハルの匂いに包まれて瞼が重くなった。

睡眠薬でも漂わせているんじゃないだろうか。

ベッドに運んで優しくおろして、寝顔を見ていると引き寄せられそうになるのでそのまま退散することにさせてもらう。

だが、

「・・・・・ハルセンパーイ・・・」

こめかみが動く。ぴくぴくと動く。手が震える。

お願いです。お願いですからその手を離してください。どうして裾を掴んでいるんですか?

「んにゃ・・・・」

んにゃ、じゃないですよ!だから警戒心を持ってくださいよ!

もごもごと口を動かしているソレが誘っているように見えてならない。

あー。よかったですー。本当酒飲んでなくて。飲んでたらこのまま襲ってる所ですー。

自分は紳士で、可愛い蛙って事になっているんですから。今までどれだけ頑張ったと思っているんですか。

自分の本能にそう説得を試みるも、たとえうん、と頷いても、この手が離れなければ必ずまたすぐに眼を覚ますだろう。

「あ。」

そうです、覚ませばいいんです。

「ハルセンパイ!起きてください!」

少々忍びないが、これが一番最善の方法だろう。

身体を揺さぶると、うーん。と唸って眼をゆっくりと開けた。

「おはようございますー」

「・・・はれ・・・えんかい・・・?」

「もう終わりましたよー・・・あの、手を離してくれませんかー?」

「・・・・はひ・・・」

「・・・・・・。」

「・・・一緒にねましょーよぉ・・・」

「はい?」

「フランちゃん・・・眠いんですよ・・・もう・・・・ふぁー・・・」

「ちょっと、ハルセンパ、」

「おやすみ、なさい・・・」

「・・・・・。」

そんな笑顔を見せられたら何もいえなくなってしまうじゃないですかー

この伸ばされた手をどうすればいいんですか。この掴まれた手をどうすればいいんですか。

この男の性をどうすればいいんですか。

この世の中は分からない事ばかりです。誰も教えてくれません。非情なんです。いっつも。

でも、

「まさか、ハルセンパイが裏切るなんて・・・」

いや、裏切りじゃないですけど・・・・もう裏切りよりも酷いですよ、コレは。

恐る恐る隣に入ると、身体を寄せてきた。胸にすっぽりと入ってきたその身体を抱きしめて、直ぐ傍にあった電気のリモコンで電気を消す。

「ミーは蛙、ミーは蛙、ミーは蛙、ミーは蛙、ミーは蛙、ミーは蛙、ミーは蛙、ミーは蛙。」

呪文のように呟いて、開いた眼は暗闇になれて部屋の間取りが全て見える。

このまま朝まで、ハルが目覚めるまで寝れないで居るのだった。

 

 

 

フラハルはどうしてか、フラン視点になっちゃうんですよねー。

フラハルはどうしてか、フラン片思いになっちゃうんですよねー。

フラハルはどうしてか、他のメンバーが入ってきちゃうんですよねー。

不思議ですねー。うふふ・・・・orz

リクエスト、ありがとうございました・・・っ(吐血しながら