「ハールセンパーイ。あっそびーましょぉー」
「おいハル、俺の相手しろよ。」
何なんですか。この人たち。
せめて、せめてフランちゃんは譲歩しましょう。かわいいですし、年下で慕ってくれるのは分かります。
トランプだって本気を出さないでハルと対等に戦ってくれるような大人ですし・・・あれ。これって年下じゃないんじゃないんですか?まぁ、いいです。
でも、ベルさんはもう大人で、ハルを苛めては楽しんでいる極悪人です。
それに、フランちゃんだってベルさんといっつも一緒に居るんですから、二人で遊べばいいのに・・・
部屋でゆっくりと雑誌を読んでいたら、いきなり二人に闖入されてベッドの上で頬をぽりぽりとかいてしまう。
「二人とも遊びたいのなら、一緒に遊べばいいんじゃないですか?」
毎回の事なのですが、やはり言わずには居られないです。
「は?何で王子がこんなの相手にしなきゃなんねーの」
「ベルセンパイと一緒に遊ぶ意味が分かりません。」
ですが、毎回の言葉で直ぐに返却されるんです。七泊八日くらい持っててもいいんじゃないでしょうか。
「でも、ハルは今プライベート満喫中なんですよ」
「だから?」
「だから、ベルさんとフランちゃん、二人共暇なんでしょう?遊びたいんでしょう?だったら二人で遊べば問題解決じゃないですか」
「違いますよー。ハルセンパイ。問題が更に積み重なってしまいますー。」
「そーそ。殺し合いになるって、デスマッチだぜ?そんなのお前黙って見てられんの?」
こんな時だけお互いに顔みてねー!なんてして。本当子供っぽいですねぇ。とほほえましく思ったりするのですが、この団結力の根源は一体何なのか気になったりもします。
「ハルー!遊ぼーぜ!」
「ハルセンパイー!ミーと一緒にですー!」
「は、ひーっ!もげちゃいますー!マリオネットになっちゃいますー!」
仕舞いにはお互いに腕を引っ張ってハルの腕を引きちぎろうとばかりの力で引っ張り合うんです。
腕の付け根がぎちぎちと悲鳴を上げるのを叫びながら聞いていると
「う゛お゛ぉぉぉい!」
必ずスクアーロさんかルッスーリアさんかが助けに来てくれるんです。今日はルッスーリアさんは任務って言ってたのでスクアーロさんですね。
スクアーロさんは直ぐに二人を力で押さえつけて開放できるのですが、これも毎回、登場する際にドアを蹴飛ばして壊すのはやめてほしいです。助けてもらって何ですけど・・・
「チッ」
「お前等ぁ!まったハルを苛めてんのかぁ!」
「違いますー。ベルセンパイは苛めてますけど、ミーはただ遊ぼうって誘ってるんですー」
「う゛お゛ぉぉい!そんな事はハルの顔見て言うんだなぁ!腕が引きちぎれる寸前みたいな顔してんじゃねぇかぁ!」
「うわ、マジだ。おい、ハル大丈夫かよ」
「お前もだぁ!」
そう言って刀で切りかかってきたスクアーロさんから、対比するフランちゃんとベルさん、真ん中のハルに刃が迫ってきて・・・本当にどうしてこんなに危険なんですか。デンジャラスすぎますよ
ハルの顔面スレスレで刀は急停止して、微かにぱらぱらと落ちている髪の毛はあえて何も言いません。
二人は壊れたドアから颯爽と抜け出したようで、残ったのはドアの残骸とハルとスクアーロさんだけ。
「ったくよぉ。餓鬼共がぁ」
「・・・あの、ありがとうございます・・・」
「ん?ああ、ドア悪いなぁ。後で直してやる。」
「はぁ・・・」
「・・・アイツ等は若いからなぁ。体力が有り余ってんだぁ。俺達はアレだ・・・その・・・仕事だしなぁ。」
だが、若さにかまけてたらろくなことにならねぇぞぉ。と続けて髪の毛を掻き揚げるスクアーロさん。その視線が遠くを見つめているのを見て、心の中で貴方も十分若いですよ。と言った。
書類を届ける途中だったらしく、ドアは後でなぁ。と言われてそのまま出て行ってしまった。
残ったのは自分だけ、今からまた雑誌を読む気にもなれず、あの若い二人をどうしたものかと考える。
次の日になって、前日の夜中に直されていたドアに起きて吃驚した。
まだかまだかと思って待っていると、寝てしまったらしく、ベッドに座っていたためにそのまま布団もかけなかったのだが、スクアーロさんがしてくれたのだろうと布団を見る。
さて、今日もまたあの二人が来るのは眼に見えている。
スクアーロさんが来るまでに考えたいろいろな手段を試してみようと計画を立てている。
「ふぁー」
欠伸が出て、ぼさぼさの髪の毛をブラシで梳かしながら鏡に映る自分の格好を見る。
昨日休日を貰ったというのに、まったく疲れが取れていない。
明らかな疲れた顔。こんな顔でボスに会わなきゃいけないんですか・・・
「はう・・・」
憂鬱に浸るも、悩みの種は尽きてはくれない。
洗面所から出るとベッドの上に無かったものが座っていた。
「ハールセンパーイ。あっそびーましょぉー」
「おいハル、俺の相手しろよ。」
昨日とまったく同じ台詞で朝から遊ぼうと誘われる。
お母さんは今から家事があるのよ!なんて、息子に言いたくなるような気持ちになった。
「朝から・・・」
「今日はですねー。トランプもってきましたよー」
「王子がわざわざ持ってきてやったんだから遊べよ。」
フランちゃんが持っているのはトランプで、べルさんが持っているのがUNO。
箱を投げて遊びながらベッドの上で暇そうに怠惰に足を伸ばしているベルさんを見て脱力、ベッドに腰かけてこっちを見ているフランちゃんとは大違い。
「せめて、朝ごはん食べてからにしましょうよ」
「はぁ?王子がせっかく朝から来てやったのに」
「わかりましたー。」
北と南。右と左、上と下、天国と地獄。こんなにも違う二人の反応を見てまた溜息。
どっちが年上なのか分からない。
「ベルさんっ。フランちゃんがこうやっていう事聞いてるのに・・・年上でしょう?我侭言っちゃ駄目です!」
「ちぇー。」
「って、布団被らないでください!」
布団を引っ張っていると、後ろからじーっと見ているフランちゃんに気が付いて
「手伝ってください!」
そういうとしばらく固まってふい、と顔を背けてしまいました。その反応に驚いて、手の力を緩めた。
そのままそっぽを向いて出て行ってしまった。
一体・・・・
「うししし。こんなんでスネてやんの。ガキー」
布団から顔を出して、ドアの方向を見て楽しそうに笑っているベルさん。すぐさま布団を取って腕を引っ張り立たせる。
いろいろ言いたい事はあるのですが。
「スネるって、なんですか」
「ヤキモチっつーこと。」
「やきもち?」
「俺を構うからじゃね?」
「構ってなんか無いですけど・・・?」
「・・・・・・・」
そう言うとベルさんの楽しそうな相好が普通の真顔になってしまい。フランちゃんと同じように黙ってドアから出て行ってしまった。
その反応を連続で見させられて、ハルは朝からどうすればいいんですか。
とりあえず、崩れた布団を直して、早く朝ごはんを食べなくては。
「なーなー。お前なんでハルの事がすきなんだよ。勝ち目なくね?」
「そっちこそまったく眼中なしじゃないですかー。なのにどうしてアタックしてるんですかー」
「べっつにー。王子は不毛な事が嫌いじゃないだけだから」
「分け分かりませんねー。だったらハルセンパイじゃなくてもいいじゃないですかー」
「そっちだろーが。」
「ミーはシャイですから。ガールフレンドなんて居ないんですよー。純情だから。」
「繰り返す所が胡散臭すぎるだけど、うしし・・・し・・・」
「う゛お゛ぉぉい!朝っぱらからウゼーぞぉ!」
「一体何なのだ、朝飯がまずくなる!」
「恋に悩む青少年は、朝から懊悩してご飯も喉を通らないのよ、レヴィ」
「たのしそーだなぁ。ルッスーリア。」
「色恋沙汰は楽しくて楽しくて・・・しかもベルちゃんとフランでしょー?うふふふっ」
「だが机にうなだれるのはやめてもらわねば、もう直ぐボスがいらっしゃるというのに・・・」
何なんだこれはぁぁぁぁぁ!!
何か甘さが控えめというか・・・・・・
もやもやするなぁ・・・
でも、こんな感じだよ。私って・・・
由叶様、リクエストありがとうございました!