スカートが短いと感じていたのは中学も高校も同じで、マフィアになった今でもそれは思う。

あともう一つ。マフィアには女もいるが、それは極僅かだ。極めて少ない。

故に、此処を通る人間も男の確立が高いのだ。

そして更にしつこくもう一つ。窓から体を乗り出したら落ちるぞ。一般人のお前は。

「丸見えなんだよ馬鹿女!!」

ゆらゆらと揺れる黒いハイヒールを履いた三浦ハルの腰を抱きつくようにしてこっちに引っ張る。

此処は三階なんだぞ。テメー分かってんのか?あぁん?

そう睨みを利かしても三浦ハルは、あ。獄寺さんじゃないですか。とすっとぼけた顔で挨拶してきた。

この女は俺を怒らす天才だ。

今も昔もその才能は健在だ。

「あそこに猫ちゃんが居たんですよ。黒猫で可愛かったんですよー」

ほら、と指差すと、確かに黒い物体は見える。にこにこと笑顔ででしょ?と笑っていてもそれがどうしたといえばお終いだ。

「それがどうした。」

「こんな場所に猫ちゃんが紛れ込んでいるレアな体験をしたんですよ!?獄寺さんはなんの感慨も無いのですか!?」

「ねぇな。まったくねぇな。大体黒猫なんて演技が悪いだけだろ。」

「いいえ、外国では黒猫も幸せの象徴としてみている所もあるんです!」

「知るか!」

抑えていた怒りの声を爆発させると、三浦ハルも怒りを更に爆発させた。

「知らないんですか?獄寺さん外国人でしょう!?」

「知るかっつってんだ馬鹿女!それよりもお前どんだけその状態で居たんだよ!」

へ?と声を出して、今何時でしたっけと腕時計を見ている。そののろまな動きに苛々しながらも、大人になった獄寺隼人は大人しく待つ。足踏みをしながら、歯軋りをしながら。

「あれ?もうこんな時間・・・すみません獄寺さん。ハルちょっと書類が溜まってるものでいいですか?」

会話を成立させる姿勢を見せない三浦ハルがそのままハイヒールの音を廊下に響かせながら何処かに行くのを、あまりの出来事に固まっていた獄寺隼人は見つめるだけで終わってしまった。

三浦ハルはあまりにも破天荒で予測不能で、一般常識があるようでまったく無い女だったが。人との会話を遮り、どこかに行く人間だっただろうか。

確かに、獄寺隼人ならばそれはあっただろう。人の話を聞かず、無視して歩いていたり。

口より先に手が出たりした事もあっただろう。だが、今時間を経た今、成長し、人の話を甘受したり享受したりする事も出来るようになってきた。

その一般的観念を持った獄寺隼人は、前よりも破天荒で予測不能で、一般常識があるようでまったく無い女が、更にその負の力を蓄えている今のこの現状に、怒るでも無く呆れるでも無く放心していた。

だが、直ぐに怒りが沸騰し、この俺が話を聞いてやるというのに、待ってやるというのに。あの女は其れを跳ね返し走って行った。

何と言う事だろうか。

拳が震える。指輪がはめ込まれたごつい指がぷるぷると震える。

「っざけんなアホ女ぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

ふぅ。と、一息吐いて下にいる女に今の俺の心境を話してみた。

これがお前の罪状だ。ボケ。

「それとこれと、ハルが一体どんな関係があるというのですか!」

「ああ!?お前今の話で登場しただろーが!それだけで罪なんだよ!」

ムキー!なんですかそれ!と講義する三浦ハルは丁度俺の部屋の前を通って10代目に仕事の確認をしに行こうとしていたところだった。たまたまドアを開けると、おはようございます。と挨拶してきた馬鹿女を引きずり込み、日頃の鬱憤やら愚痴やらストレスやらを体に刻み込んでやろうと思った。

それは決して背徳的なものじゃなく、口喧嘩、言葉で罵り、手を出さず、言葉だけで相手をボロボロにしてやろうと思っただけだ。部屋に引きずり込んだのだって他の奴等に迷惑がかかるし、醜態をさらすのが嫌だったからだ。

それなのに、紳士な俺を抹殺したこの馬鹿女が悪い。腹立たしい事この上ない。

短いスカート履きやがって、綺麗な足しやがって、綺麗な顔しやがって。

中学生の時にはんな胸無かっただろうが、ボケ。

ギリッと奥歯と握る力を強めると、痛いです。と声が聞こえた。

それすら苛々するものとしかならず、どうしても激情を抑えられない。

「・・・だいたいな、お前が此処に来る事自体が嫌だったんだよ。」

マフィアになること自体が駄目だと思ったんだ。其れなのにコイツは右腕の俺と同等の仕事処理をこなし、あまつ綺麗になって。10代目が知り合いじゃなかったら完璧に娼婦まがいの仕事を回されているに違いない。

この体を誰か知らない親父に晒す事に――。

「・・・とにかく、ハルは忙しいんです。最近休日も貰ってないですし・・・だから、早く仕事終わらして寝たいんですよ」

だから、退いてくれませんか?と優しくたずねられる。

大人になったのは俺もコイツも変わらない。

そして、大人になったのは精神だけじゃない。

「・・・・お前、恋人居たか?」

「・・・・・はい?」

何故いきなり恋バナになるのだと言いたそうに眉を寄せられた。

「居たか?」

「・・・いえ、ずっとツナさん一筋で居ませんでした、けど・・・」

「じゃあキスは?」

「・・・・・獄寺さん。セクハラで訴えますよ。」

「いいじゃねぇか。」

「何でフレンドリーなんですか・・・・はぁ・・・あります、けど・・・」

溜息と吐かれた言葉に、矛盾が垣間見れた。

「あぁ?10代目一筋だったんだろーが。何で他の奴としてんだよ」

「・・・・事故ですよ・・・事故で、あったんですよ・・・」

視線を逸らし、複雑そうな顔をしてそう呟いた。

「事故って・・・なんだ?まさか倒れてそのままキスしちまったやらうんたらかんたら、みたいな、少女漫画みたいな事があったってか?」

「・・・・・・・」

「あったのかよ。」

無言で何も言い返さず、ずっと視線を逸らし続けている様子を見て其れが事実だと知った。

「誰だよ。」

「・・・・山本さん、です」

「・・・・・・・」

「・・・・」

「何で。」

「・・・・いろいろ、と・・・」

「・・・・・・・」

複雑すぎた。いろいろと。

あの野球馬鹿と事故とはいえキス。想像しても違和感バリバリ過ぎて直ぐに霧散してしまう。

それにしても、そんな雰囲気まったく感じられなかったぞ、この10年。

「じゃあ、処女か?」

「獄寺さん!!本当に訴えますよ!それかツナさんに言います!!」

抑えている腕が本気で暴れだしてきた。ヤバイと思いつつも、それを止められる力を持っている俺は最大限に利用して抑える。

「獄寺さんとお話しするのはいまだに珍しい事に分類されますが、こういうものなら却下します」

ジロリと睨まれる。その鋭い視線は変わっていない。

ふっと軽く笑う。

「こういうものって何だよ」

「・・・・・・本当、どうしたんですか?獄寺さん・・・」

「・・・・・」

「・・・・・・ごくで、」

腹立つ。コイツに心配されている。

「ひっ!?」

大仰な反応に気分が少し回復した。首筋に顔を埋めて吸い上げると、赤い痕が付いていた。ちゅっちゅっとリップ音を響かせながらスーツの上着のボタンを外して、中のブラウスのボタンを外す。

結構経験豊富な俺はこんなの片手だけでも出来る。

鎖骨が出てその下にふくらみが見えてきた。

「やっ・・・何してるんですか!」

真っ赤になって事の重大さに気が付いた三浦ハル。ずっと前から鈍くて天然とか言われているが、本当はただの馬鹿なだけなんだ、コイツは。

それを、知っている。

ブラウスのボタンを全て外し、広げるとくびれの曲線と胸の曲線が見事なものだと感心した。

これで、処女なのだろうか。

「いやっ!いやです!やめてください!」

涙眼になって悲願する三浦ハル。男を煽る方法を心得ている。これは無意識でやっているとわかるが、それでもムラムラしてしまう。もしこの方法が男を煽る方法として三浦ハルの脳にインプットされれば・・・一体どれだけの魔性女となるのだろうか・・・

末恐ろしいなと思いつつ、泣き顔を見つめる。

昔から女が泣くのは苦手だったが、こういう行為を覚えると自然とそれが嫌いじゃなくなった。

雄としての自分を引き出すものだという事を知ったからだ。

だが、コイツは俺の友人で、腐れ縁で同僚で。そんな奴が泣いてるのは、正直罪悪感に苛まれる。

ぎりっと掴んだ腕が軋みを上げると、その痛みで更に喚く。

「獄寺さん・・・?」

歯軋りの音で俺の表情を見る気になったらしく、顔を背けていた三浦ハルは不思議そうな顔をして見上げてきた。その顔が10年前のとまったく変わっておらず、チッと舌打ちした。

「馬鹿女。お前はこれからも、ずっと馬鹿女だ」

「・・・・はい!?」

わけの分からない言葉の羅列がどんどん口から漏れていく。変わってない。お前は昔も今も馬鹿でアホな女だ。

それを聞いてだんだんと怒りで真っ赤にした顔をつい見つめていたら

「最低!!」

自由だった足に精一杯の力を込めて、膝蹴りをしてきた。

九尾にずっ、と入った。

一瞬呼吸困難に陥って、それからの事は正直話したくない。

 

 

 

 

すみません。無理でした orz

獄ハルは書いたことがあまりないし・・・この流れで行くとちょっと私的には、私のイメージの獄ハル裏じゃなくなる気がしまして・・・(言い訳

申し訳ございません!裏に持っていく文才が無かったのです!(本音

あー。途中此処からどうしよう。と何度も手が止まりまして・・・(汗

リクエストありがとうございました!ですが、すみません・・・・ orz orz