「ハル、お前俺の愛人になれ」
「アホ女とドジ男が一緒に居たらとんでもない事になるに決まってるぜ。だから俺んとここい。」
「んー。ディーノさんが悪い男とかそーゆーんじゃないのなー?とにかく俺以外の男が駄目なんだわ。」
「ねぇ、君あの跳ね馬の何処がいいの?さっさとやめてこっちきなよ。」
「クフフ、ハルさん、僕と甘い人生を過ごしましょう」
悪魔のような囁きを毎日毎日この純粋無垢なハルに言う男の所なんかに行くなよ!
と、情け無く真夜中に汗だくで目が覚めた二十歳を超えた俺。
はっ、はっと、走ってすら無いのにどうしてこんなにも動悸が激しくなるのか不思議でたまらない。一人のホテル。遊びに来たジャッポーネは悪魔の巣窟だった。
唯一信頼していいのはツナだけだ。確かにハルが片思いしていたのは分かるが、ツナは違う女に惚れている。
それだけ分かれば十分だ。
汗で引っ付いたシャツをぱたぱたと風を通しながら、冷蔵庫にはいていたミネラルウォーターを飲み干した。
一気飲みしたせいで顎に伝った水を袖で擦る。空のペットボトルをゴミ箱に捨ててまたベッドに戻る。
ベッドに寝転ぼうとした瞬間に足が滑って顔面からベッドに倒れこんだ。
ぶつけた額を手でさすりながら、電気つけりゃよかったぜ。と一人心の中でぼやきながら就寝した。
「ハル、お前俺の愛人になれ」
「アホ女とドジ男が一緒に居たらとんでもない事になるに決まってるぜ。だから俺んとここい。」
「んー。ディーノさんが悪い男とかそーゆーんじゃないのなー?とにかく俺以外の男が駄目なんだわ。」
「ねぇ、君あの跳ね馬の何処がいいの?さっさとやめてこっちきなよ。」
「クフフ、ハルさん、僕と甘い人生を過ごしましょう」
やべぇよ。何だよコレ。何かの宗教なのか?
どこかで聞いたことあるなー。とぼーっとしていたら現実に居たハルが俺の腕に絡めた腕の力を強めたことにより戻ってきた。正夢だったのかあれ。
歩いているだけで、お前等ストーカーか?と疑いたくなるように曲がり角に潜伏していた男共が其処に居た。
一人は塀の上で片手にエスプレッソを飲んでいたり、一人は電柱の影から現れたり、一人はジャージ姿でランニング中だったり、一人は見回りでいきなりトンファーで殴りついた後に何事も無かったかのように口説いてきたり、一人は薔薇の花束を持って跪いて俺の眼の前だというのを知っているのか知らないのか手をとって口付けたり。
誰か、なぁ。誰か・・・!と、道路に這いつくばっててを伸ばすと、光が見えた。
「あ、ディーノさん」
「ツナァァァァァ!!」
六道骸にはキレて鞭を振るったものの、まったく当たらずかわされ、しかもその鞭が自分に全部振りかかってしまった精神的ダメージ、そしておまけのように六道骸がハルの肩を抱いて引き寄せていた姿を眼球に焼き付けてしまった。
「どうしたんですか・・・・って、骸!?」
「お久しぶりですね、ボンゴレ」
「ああ、うん。久しぶり・・・って、そーじゃなくて!何やってんだよ!」
「何って、見て分かりませんか?」
「ハルはディーノさんの彼女なんだぞ!」
「それが?」
「それがって・・・」
「略奪愛。これも愛の一つです」
「いや、そんなビアンキみたいな事言っても・・・」
何故か頬を染めてそういう六道骸に若干引きつつも、肩を抱かれても何にも言わないハルに不安を覚える。もしかして、俺よりそのナルシストの六道骸の方がいいのか・・・?
道路に這いつくばって勝ち誇った顔をしている六道骸を見上げる。
「・・・あの、ディーノさん・・・そろそろ立ち上がりましょうよ」
「あ・・・ああ・・・」
ツナに見下ろされてそう言われ、素直に頷いて立ち上がる。
「ハ・・・ハル?」
「・・・ディーノ、さ・・・」
俯いた顔をゆるりと上げると、不安げな声が漏れた。小さなかすれた声が確かに鼓膜に響いて、頭の中でハルの感情を推測した。
怯えている。
「クフフ、ハルさん一時間ぶりですね」
「はひっ!」
肩を抱く力が更に増したのを視覚で確認して、ハルの尋常じゃない怯え方に何があったのかと見つめるしかなかった。
隣のツナも同じだった。
「・・・ハル?どうしたんだ?お前・・・」
って、どうしたもこうしたも男に肩抱かれて平常心な女は居ないだろうよ。ツナ。
「骸さん・・・ハルが出かけようとした時に居て・・・」
「おやおや、昨日ハルさんの部屋でも会ったじゃないですか。詳しく言えば更に学校から帰る時も、休憩時間も登校した時も、朝起きた時もお会いしましたでしょう?」
クフフ、嫌ですね。忘れてしまったのですか?寂しいです。と言いながらクフクフ笑い続ける六道骸に普通に引いた。今の会話の中で完璧に分かるのは、コイツ
「お前、それストーカーだろ!!」
それだ!
ぱちんっと指を鳴らしてツナを指差す。
「侵害ですねボンゴレ。僕はハルさんの守護者として役目を果たしているだけですよ。」
「守護者はツナのだろーが。」
ふっと笑ってさも当たり前の事のように話す六道骸の真横の塀に、いきなり出没したリボーンに驚きながらも、救世主だ!とばかりに期待に安堵の息を漏らした。だが、
「へなちょこだな。女一人も守れねぇのかテメー」
ざくっ!と刺さった男のプライド。それは思ってたさリボーン。だがな、正直六道骸と戦うのは気が引けるんだよ。今調子悪いし・・・
「死ぬ気になって守ってみろ。ツナですらこの場面であったなら守るぞ。」
ざくざくっ!胸に実際に衝撃が来たように、よろよろと後ろに一歩ずつ下がる。
「だ、大丈夫ですかディーノさん・・・」
「・・・ツナ・・・俺って、やっぱりへなちょこなのかな・・・俺、男として最低なのかな・・・」
「ディーノさん!?おいリボーン!いいからハルを骸から助けてやれよ!」
「そんなの言われなくても分かってるぞ。何処ぞのへなちょこ彼氏とは違うんだからな」
「ぐはっ」
「ディーノさぁん!!」
完全に倒れてしまった俺にツナが支えるが、ダメージは回復できない。
「骸、さっさと帰れ。」
「まったく・・・アルコバレーノ、君はいいですよ。ハルさんの直ぐ傍に居て・・・でも僕は実体化する時間が限られ、しかも会う確立は百パーセントじゃないんですよ?少しくらいいいじゃないですか」
「何が会う確立だ。ストーカーが言う台詞じゃねーな。」
「そうだよ!お前さっきもハルとめちゃくちゃ会ってただろー!」
「ハッ!そうだ、俺よりも会ってんじゃねーか!どういう事だ!」
「まったく、男のクズは黙っててくれませんか?君みたいなのがハルさんの彼氏というのが未だに信じられませんね。」
「俺もだな。」
六道骸が髪を掻き揚げる仕草をすると、ハルが眼を光らせて其処から抜け出した。おや?と声を漏らしても、ハルは怯えた表情で倒れている俺に抱きついてきた。
「ディーノさん!」
そうだよな。ストーカーに捕まって、俺何も出来なくて、ツナやリボーンが居ても中々助けてもらえないし・・・
「悪ぃ、ハル」
「はひ・・・」
お互い見つめあって甘い雰囲気になったというのに。
「クフフフフ。さて、ハルさんをそろそろ帰してもらいましょうか?」
「なっ!」
「返さねーが。その光景は気持ちいいもんじゃねーな。離れろ。」
「おい、骸、リボーン・・・お前等いい加減に――」
ドォン!と、爆発音が響いた。爆風は骸のいる場所で起きたもので、咄嗟に俺がハルを抱きしめて回避した。
自爆か?それとも誰かが爆弾を投げたのか?
そう思って当たりを見つめると人影が揺らいだ。
「きょ、恭弥!?」
「今ムカツク影が見えたから、この間獄寺隼人から没収したダイナマイト使ってみたけど・・・煩いね。」
「はひっ」
煩わしいように耳を塞いでいる恭弥がハルの存在を確認すると舌打ちした。
「悪かったね。君がいるなんて知らなかったから」
「あ、いえ・・・それより骸さん・・・」
ストーカーなのに心配するハルに感動するやらムッとするやら・・・
優しいのもいけないなと思いつつ。
「アレくらいで死なないでしょ。パイナップルだし。」
「おい、ヒバリ。」
「やぁ、赤ん坊。」
「投げるなら投げるって言え。」
「君なら言わなくても避けてたでしょ?現に今も。」
「俺じゃなくてツナだ。ったく、治療が面倒くさいんだぞ。」
じゃあしなきゃいいじゃない。と会話を続けている二人を見つめて、今のうちに逃げるぞ。と手を引いて其処から立ち去ろうとしたが、いつの間にかいたパイナップルの影に足を止めた。
ヤバイ、と思ったが、顔色が悪いのが少々気になる。
「・・・ク、フ・・・」
ふらり、と倒れると、クローム髑髏に変わっていた。
呆気に取られていると、更に後ろでは何故か恭弥とツナが戦いを始めていて、この住宅地の真ん中でいいのかと思いながらも、これだけ騒いで人の悲鳴も聞こえないなら大丈夫かと、気を取り直してハルの手を握る。
「早くいかねーと怪我するかもしれないから、な・・・」
今逃げるしかハルを守れる選択肢が無い事に言い訳をしながら。
「そうですね・・・行きましょう!」
その言い訳に素直に頷いて走り出したハルにつられて走り出す。
ああ、そういえば、と後ろを振り返ると、リボーンがクローム髑髏の顔をぺちぺち叩いていた。
それなら大丈夫か。と前を見て走るのに集中する。
だが何回も転んでしまって、大きな音が小さくなっていくのにそうとう時間がかかってしまった。
スランプ中です故、こんな事に・・・・orz
ああ、リクエストくださったのに、折角の企画なのに!
どうして私はこういう時に限ってスランプになってしまうのでしょうか・・・!
申し訳ないです・・・
総受けになると必ずグダグダになってしまいます。
ディーノさんとハルはデートするのは部下がいる前提とかいつもやってたので。でもやっぱりデートは二人だよなぁ。とか思ってるとヘタレディーノさん登場!となってしまいました・・・
リクエスト、ありがとうございましたー!!