むぎゅーっと抱きしめられると、どうしていいか分からなくなる。
イタリアの人だからとか、大人の男の人だからとか。
いろいろとあるのですが。
この腕が他の女の人も知っていると思うと。
ぎゅうっって、心臓が掴まれたようになるんです。
指と指を絡めて、ごつごつした骨の感触に感激する前に、すぐに感じるのは恐怖しかなかった。
手を繋いでいたのだろうか。手を繋いで、こうして歩いたのだろうか。
と、服かわいいな!と笑顔で言われているのに、作り笑いしか出来なかったり。
肩を寄せられて驚いて、視線を向けるとニカッと笑われても、また感じるのは恐怖だった。
ちょっとだけ、な?と言われても、映画の光に当たる自分の顔はまたもや作り笑い。
どうしていいのか分からなくなる。
激情に駆られて、どうしていいのか、どうすればいいのか分からない。
嫉妬に満ちたこの感情を持て余して、これからもちゃんと付き合っていけるのだろうか。
ちゃんと、ディーノさんに幸せになってもらえれるのだろうか。
そんな不安ばかりが押し寄せてくる。
これがカタルシスとなって、刃を向けられなければいいのだけど。
「そんなに怖かったか?」
一気に呼び寄せられた現実の世界に一瞬だけ自分を見失いかけた。
バッと横を見れば、不安そうな顔をしてこちらを見ているディーノさんが居た。
「・・・・はひ?」
「さっきの映画、結構怖かったから・・・違うのか?」
「あ、いえ・・・映画を見た後の余韻で・・・すみません」
「そっか、ならいいんだけど・・・気分悪かったら何処か寄るか?」
そう言ってちらりと見た喫茶店、あそこはたしかケーキがおいしかったはず。
「行きましょう!」
「お。いきなり元気でたな。」
また爽やかににっこりと笑われて、心臓が跳ねた。そして恐怖で冷たくなった。
万物全てが私の敵なんじゃないかと危惧してしまうくらい不安なんです。
夜も眠れず、朝も不安で始まって、夜は不安で終わってしまう。
そんな毎日のサイクルに、いい加減に終止符をと考えました。
あまりにも不安定な、アンバランスなこの世界に、平行線の上をたどる人生をお願いしますなんて、ナンセンスだと思ったんです。
すべてがほしくて、アンバランスと平行線を足して二で割りたいくらいに貪欲なんです。
金髪の髪の毛をほしくて、手を伸ばせば笑って頭を垂れてくれるような。
でも、そんなの機械でも人形でも出来る事なんです。
言葉を話してほしいんです。
言葉で、体で、心で、愛をハルに注ぎ込んでほしいんです。
「それおいしそうだな、俺もくれよハル」
「はひ?」
今まさに考えをめぐらせながらも、ケーキを口に運び込もうとした瞬間に、最初の一口をぱくりと食べられてしまった。
掴まれた手首がなんと恐ろしい事か。
鉄板の上に落ちた肉のような。
一気に頬に熱が集中してしまった。
「っ、」
「あ、わりーわりー。つい食べちまった!一口目だったのにな」
まったく悪びれた様子を見せない笑顔で言われても、問題は其処じゃないのに、と心の中で溜息を吐いた。
「ディーノさんは、」
フォークをケーキに差し込んで、今回はやっと自分の口の中に入れた。
「ハルと一緒に居て楽しいですか?」
「・・・・へ?」
「楽しいですか?こんな年下で、煩くて、可愛くも無い。煩くて。」
「煩いって二回も言わなくても・・・」
「けど事実ですもんっ」
ヤケクソとばかりに大きくフォークで切って口の中に運んだ。
生クリームとスポンジの濃厚な香りが鼻腔を擽って、喉に詰まりそうになる。
「楽しいけどな?今だって面白い顔して・・・ほら、水」
「っ、っ・・・・っ、ぶはっ・・・ふひ・・・」
「俺結構いい時間過ごしてるなー。って、いっつも思うんだけど・・・?」
その台詞。
その台詞を、ハルじゃない誰かに言っているんじゃないかと思うんです。
今現在進行形で付き合っているハルのほかに、誰か居るんじゃないかとか。
その人が本命なんじゃないかとか。
その手で、誰かの手首を優しく掴むんじゃないかとか。
ハンカチで口を拭きながら、不安に駆られているハルはとにかく何か言わなければと思った。
「・・・・ディーノさんなんて、嫌いです。」
「俺は好きだぜ?」
それも、誰かに言った、リサイクルされた言葉なんじゃないかと思うんです。
ああ、これって、恋の無限ループでしょうか?
悔しくて、ディーノさんを睨みつけたら、お得意の笑顔で誤魔化された気がする。
最終的に何のオチも見出せず、終止符も打てなかった愛夢です。
いやぁ。ディノハルって・・・私、どれだけ書いたの?
片方の手だけで大丈夫な気がしてきましたよ!?あわわっ
故に、こんなクオリティーの無い文になってしまったのです。はい。すみませんっ!!