・ヘテロジノウス続編

 

 

 

 

 「チャオ、殺し屋だよん」

殺伐とした空気の中に、一つの声が投下された。舌を出しながら片手をひらひらと振りながら歩いてくる男に、ハルは更に鳥肌を増やした。

もしかして、この男達の仲間なのか、と、自分の四肢を押さえ服に手を伸ばしてきている男達を見る。

「真昼間っから盛ってるなんてさー、そーゆーのもてない男の代名詞だよ。」

片手でナイフをジャグリングしながら、街の賑わいと光を背に歩いてくる、ボーダー服を着た金髪の男。

染めていないと分かるその色合いにまぶしさを覚えながら、ハルはぱちぱちと瞬きをする。

分けの分からない闖入者に、ハルを押さえていた男達はニヤニヤと笑いながらサバイバルナイフを取り出した。

「にーちゃん、もしかして迷子になっちまったのかい?」

「やべーって兄貴、外国人には優しくしとかねーと国際問題になっちゃうよー、ぷくくっ」

「てかさ、これから楽しもうって時にいきなりヒーロー気取りで何言っちゃってんの?」

そんな下品に間合いを詰めてくる男達の言葉がよく分からないようで、耳をほじりながら、数秒の間を開けて、

「だからさ、俺最初に言ったじゃん?」

ナイフが一人の男の頬を掠めて、コンクリートの壁に刺さった。フォークを肉に刺したかの如く、あっさりと。

「殺し屋でーす。」

ぺろりとまた舌を出して、片手を振りながら。

初登場のテイク2を始めた。

 

 

 

「ふーん。じゃああのエース君にやられた奴らがー、腹いせにアンタを襲おうとした、って事?」

「いえ、・・・アレはハルが襲われて助けてくれたので、雲雀さんのせいでは・・・」

「すきなの?」

「何でそうなるんですか!?」

ストローでコーラを飲みながら、あっけらかんととんでもない事を言うベルに、机を叩いて立ち上がってしまった。休日の昼間、しかもファーストフード店の店内ではとても目立ってしまい、ハルは顔を赤くしながら座った。

最近はこんな事が多い気がする・・・と思いながら、バニラ味のシェイクをずず、と吸う。

「アンタも災難だね、あんな連中に昼間から強姦されそうになって。」

「はい、ありがとうございます・・・本当に・・・」

こんな人がたくさんいる中で危ない単語を使って欲しくは無いと思いつつも、ハルも裏路地に引き込まれた時の恐怖を思い出し身震いをした。シェイクはいけなかっただろうか。もっと他の暖かいものを頼めばよかった。

身体の芯から冷えてくる。

「この店寒い?何なら出る?クソ熱ぃーけど。」

「いえ、大丈夫です。」

ハルは眼の前の男に助けられたのだが、震えたのは襲われたという事もあるが、その後の血塗られた惨劇も関与している。最初来た時も、ナイフを扱っている手つきが軽やかで使い慣れていると分かるものだった。

男達の身体のいたるところに切り傷をつけていく様は呆気にとられた。襲ってきた男だからと言っても、誰かが傷つけられているのを見るのは見ているこっちが痛くなる。

だが、ハルは眼を離せなかった。

傷よりも、ナイフを投げる男の姿に見とれていた。楽しげに口元を緩ませながら、何度も何度も投げ続ける。軽やかに攻撃もかわしながら攻撃する様は、まるでダンスを踊っているようだった。

結局、男数人が逃げ出し、そのまま一人乱舞は終了し、何事も無かったかのように帰ろうとしていた所を、ハルは声をかけて止めた。

殺し屋という単語を口にしながらも、殺しはしていない所を見ると冗談なのかとも思うのだが、ハルはどうにもその事実は違うんじゃないかと思う。

そんな相手に御礼をしたくて、こうして一緒に昼ごはんを食べているのだが。

「俺、ファーストフードなんて初めて食った。」

「そうなんですか?」

「いっつもシェフの作ったもんばっかでさー、たまには庶民が食べるもん食べてみたくてさ。」

「・・・はあ・・・」

ちらり、と頭に乗ったティアラをハルは見た。

おしゃれ、といえばおしゃれなのだが、おしゃれじゃなくウケ狙い、とも言えばそうになる。

ハルの視線に気がついたのか、白い歯を見せながら笑い、頭のティアラを指差した。

「欲しい?」

「え、あ、」

「あげねーよ。ああ、でも俺の常連になったらあげてもいーけど。」

「・・・・え?」

王子に常連。その言葉が中々結びつかず、固まってしまったハルに首をかしげて、お互いに沈黙の後に笑い合った。

乾いた笑い声は同じくハンバーガーを食べている人間の中に溶け込むには簡単な音だったのだが、

「まさか俺の事覚えてねーとか言うなよ?殺すぞ?」

「あはははは」

軽やかに談笑する抑揚で殺意の孕んだ言葉を言われてしまえばハルは焦りながら乏しい記憶をたどり寄せる。まあ、乏しくなくなってきたのはあのホスト店に通ってからなのだが、

「・・・・・。」

ホスト?

「・・・も、もしかして・・・」

「思い出した?」

「・・・あの、ホストの・・・」

「そー、俺ベルフェゴール。つーかさ、普通にエース君の事知ってんだから気がつくだろ。」

「あ・・・」

あまりにも自然な会話に違和感を覚える隙が無かった。

ハルが乾いた笑い声を出すと、はあ、と溜息を吐き、

「頭悪い女。」

「う・・・」

一蹴されてしまったのだが、ハルには言い返す言葉もない。助けられた相手なので、我慢しなければと口を閉ざした。

コーラを飲み終えたベルはハルのシェイクを奪ってそれを飲み始めた。

「あっ」

「へー、こんなんあるんだ。次頼も。」

ちゅうちゅうと吸うベルを見ながら、ハルは飲むものが無くなりただそこに座っているだけの状態になった。ベルのトレイにはまだポテトが残っていた。

ベルが吸いながら窓の外を暫く見つめてハルに顔を向けた。

「声かけたのに忘れられるとか普通にショック。」

「ご、ごめんなさい・・・」

「ん、別にいいけど。」

本当に気にして居なさそうなベルの態度に、ハルはほっと胸を撫で下ろした。

一人でウィンドウショッピングをしているので、誰かと待ち合わせる事も無く、今日は一日休みなので時間もたくさんある。気長に眼の前のホストで自称王子のベルが食べ終わるのをただ待つ。

そういえば、携帯に登録されたBelphegor。あれはベルフェゴールと読むのか。違う人にメールを送るたびに眼にしていたのだが、あまり気に留めていなかった。

赤外線交換された時に、それよりも大きな問題が発生していてまったく覚えていなかった。

「・・・えっと、メールとかお電話とか、してなくてごめんなさい・・・」

「別に?あれは営業営業。ほら、そこの店員が笑顔になってるのと一緒。マジで電話かけてきてもらっても・・・ああ、まあ別にいーけど。」

ハルはベルをどうにもつかめない人だと思った。

全て、本当の事を言っているのだろうが、どうにも信用できないような、何処か引っかかるような言葉ばかりのような気がする。違和感は確実とした軽蔑やら嫌悪とは結びつかず、ただしこりのようなもやもやが会話の中に含まれている。

用は、苦手、なのだろう。

「アンタさ、俺見た目メチャクチャドストライクなんだよね。」

「・・・はぁ・・・」

これもホストの営業スマイルと同じ類のものなのだろうか。

「黙ってれば普通に好き。」

「それってどういう事ですか!」

「それってこういう事だろ。」

「ハルの中身を否定されたという事ですね。」

「うん。」

ぢゅー、と、ハルから奪ったシェイクを飲み干し、ベルは立ち上がった。トレイを持ち、

「これどーすんの?」

「あ、それはですね・・・って、誤魔化そうとしてません!?」

「気のせいだろ。とりあえず教えろ」

 

 

 

ベルは仕事とオフの時にスイッチを押して切り分けるタイプだ。たとえ街中で常連の女性客とばったり出くわしたとしても、普通にあしらうか無視するような人間だ。

ホスト店で接客している時とまったく違う反応に、驚き戸惑い怒る客もいるのだが、その中にはそんな所が素適。という人もいる。

だが、切り分けるといってもベルフェゴールの人間性はそう簡単に変わるわけでもなく、ただ店よりも王様気質が強くなるというだけなのだが。

そんなベルが自分の常連でもない女客と一緒に休日をぶらぶらとするのは、働いている店のbPホストの雲雀恭弥のお気に入りだからだろう。そして顔がドストライクという事もあるのだが、それでもこんなに興味はそそられないだろう。

「この服かわいいですー」

「ふーん。買ってやろうか?」

「はひ!?」

ウィンドウショッピングという言葉を知らないベルがそう言うと、ハルは大仰に驚いた。

その様子に意味が分からないと首をかしげながら、ハルが値札をベルの前に突きつけるように見せつけた。

「こ、こんな高い値段のものを、冗談でも買ってやるなんて言ってはいけません!」

「は?」

「そーゆー事言っていると、直ぐにお金がなくなっちゃうんですよ。将来の為にちゃんと貯めておかなくちゃ駄目です。」

「いや、俺王子だし、」

「ベルさんのジョークはおもしろくありません。」

一刀両断されたベルは何故か怒って先に進むハルを口をぽかんと開けて見つめて、そして直ぐについて行く。

大体御礼がしたいって言われて、あのファーストフード店に行き、もう食べて別れておしまいだったはずなのに、どうして一緒についていっているのだろうか。とも思うのだが、暇をしていたのはもちろんの事、あの雲雀と一緒にいるのだから、またあんな勘違いのリベンジ男が来るかもしれないと泳がせているのだが、

「お前、変。」

「ベルさんも大概に変だと思います。」

休日の街中で歩く二人はまるで恋人同士のように周りからは見えるのだろう。普通の服を着て歩くベルは、夜はホストをしているような風貌にはとても思えない。

だが、普通にサラリーマンとして働いているようにも見えない。

大きな窓硝子に映るハルとベルは、ハルをベルが追いかけているように見える。数歩先のハルに、ベルが自由気ままな猫のように、気まぐれについて行っている。手を頭の後ろに回しながらハルの後姿を見ながら、一人楽しそうに笑うのだ。

そのベルを引き連れて歩いているように見えるハルは、どうしてついてくるのだろうかと思う。

まだ何かしてほしいのか、それとも暇なのか、後者なのかもしれないが折角の一人の時間を邪魔されてしまっているハルとしてはとても気になり、さっさと帰って欲しいというのが本音だ。

それに、あの店のホストのイメージが、綱吉よりも雲雀のイメージが強く、誰も彼もが同じように見えてしまう。

偏見だといわれればそうなのだが、それでも、ハルが雲雀にされてきた事を思えば頷けるものだ。

そして思い出したのだが、ベルはスクアーロの怒りを前にしても飄々とした態度をとっていた。机を持ち上げたスクアーロの形相と怒鳴り声を思い出したのだが、それを直ぐに頭の中から消去する。

ツナみたいな人間も居れば、雲雀やベルみたいな人間もいるという事だ。

あの店のホスト達全員に悪いイメージを持つのはやめよう。

「俺休んでた時にさ、エース君から逃げたんでしょ?」

話題が無く、話しかけたのはそんな事だった。

ベルが軽く走り、ハルの前に回りこみながら言った台詞に、ハルはびくっ、と肩を震わせた。

「・・・・・・」

「ね、何で逃げたの?相手はあのエース君なのにさ、何が不満なわけ?顔はいいじゃん。」

「・・・人には好みというものが、あります・・・」

「まあね、そりゃそれを言ったら全部片付くけどさ、好みとかタイプとかって、恋愛になればあんまり意味を成さないんだよね。惚れたらもう好みタイプ、ぜーんぶなくなっちまうの。知らない?」

ハルはこの人誰かを好きになった事があるのだろうか、とまじまじと見つめる。

「ま、俺は誰も好きになったことないからわかんねーけど。」

「ないんですか!」

「恋愛感なんてそんなもんだろ?なんやかんやいいながら、惚れたら負けって事だろ?最終的には。」

都会の中から抜けるように、また裏路地を歩くベル。その後を今度はハルが突いていき、都会から少し離れた住宅街に出た。

「・・・ベルさんは、ハルと雲雀さんが付き合えばいい、って言ってるんですか?」

「別に。興味ない。俺はさ、そんなのどーでもいいわけ。」

くるり、と振り返ると、金髪とティアラが動いた。

口元の微笑は無邪気なものではなく、何か企んでいるような歪みを見せていた。

「たとえばさ、アンタが、」

「三浦ハルです。」

ハルが最初から気になっていた事をはっきりと訂正すれば、ベルは普通に話を続ける。

「ハルがさ、エース君に惚れたとして、両思いです。って結末にはならない。相手はホスト、甘いささやきが本物かどうかなんて分かるはずが無い。」

「・・・はあ」

ハルは最初から分かっている事を言われたので、薄い反応しか見せない。

ベルがなら、と言葉を改めて言いなおす。

「沢田綱吉の素の優しさが、本当にアレが本心で本物かどうかなんて分かるはずが無いって事だよ。」

「――――っ」

「あれ、さっきより反応いいじゃん。アンタ、やっぱりあっちの方がいいんだ?確かに好みは人それぞれって言葉当てはまるな。」

うしし、と白い歯が見えた。

歩みを止めたハルに向き合うようにして立ち止まるベル。住宅街の道には車も人通りも少なく、まるで夜中のように誰も出てこない。

またアンタというベルに何もハルはいわず、眉を寄せて下唇を噛んだ。

「嘘ばっかなんだよ、あの店は。いや、店じゃないな、ああ、でも店でもあるっちゃーあるけどさ・・・」

「・・・・」

「俺が言いたいのは結局、またあーゆー男達に狙われるかもしんねーよって事。たとえ演技だろうとなかろうと、エース君がアンタが今お気に入りの玩具みたいだし?」

ハルは、やっぱりベルの事が苦手だと改めて分かってしまった。

何が言いたいのか、最終的にはよく分からない。男達を蹴散らした時と同じように、口元には笑みを貼り付けてハルを見据えている。眼が見えないので本当にこちらを見ているかは分からないが、背中にじっとりとした汗が吹き出ている。視線を感じているからこうなるわけで、

「・・・ま、本音を言うと?エース君でも沢田綱吉でもどっちでもいいから本気にさせて、本気で付き合ってー、そして俺がアンタを攫うとか、さっきの男達みたいな事すれば・・・」

ナイフ二本を取り出しながら、

「本気で殺りあえるって事だろ?それってすっげー楽しいじゃん?」

「っ・・・」

「だいじょーぶだいじょーぶ。殺すわけねーじゃん。人気は無いとはいえ、流石にアンタ殺したら色々と面倒だから。あ、後始末とかじゃなくてもっと身内的な問題で。」

ナイフをしまって、友好的に歩み寄ってくるベルに一歩後ろ後ずさったハルだが、手首を掴まれ、また歩き出してしまった。

これで逃げる事も出来なくなってしまい、改めて、苦手な人と判別し、あまつ狂気めいたこのベルフェゴールから逃亡不可能と答えは出てしまった。

そして住宅街を歩いている足取りは迷いが無く、何か目的があって歩いているように思える。

不安の色を濃くしたハルの瞳は、さらさらと音をたてながら揺れるベルの後姿を見つめている。

「・・・・あの・・・」

「何?」

擦れた声がベルの耳に届き、歩みを止めぬままハルに僅かに顔を向けた。

「・・・ど、どこへ・・・」

「あー、うんうん。」

はぐらかすように曖昧な返事をしたまま歩き続ける。住宅街の道の角を曲がり、曲がり、突き進み。

そのまま都会の匂いも消えうせ、ハルが住むアパートの近くまでやってきた。

ハルのアパートが見えて、そこでベルが止まった。

「ふーん、ボロっちい家に住んでんだ。」

「な・・・・」

「んじゃ、もー帰っとけよ。お前すんげーのろまだから。」

「はひ!?」

簡単に手を離しながらベルがハルの背中を押す。階段へ向って押しているので、ハルの部屋が二階だという事も分かっているのか、それとも偶々なのか。

本当に殺しもしないようで、フレンドリーに手をふってバイバーイと言っている。

呆気にとられているハルが立ち止まったままでいると、痺れを切らしたのか、ナイフを見せて威しながら、さっさと入れといわれてしまった。

そのままハルは階段を上り、鍵を開けてドアを開ける。

一度下を見るとベルがじっと見ていて、

「・・・あの、」

今さっき恐ろしい話をしていたというのに、どうしてそんなに切り替えられるのだろうか。

「何?泊まってってほしいわけ?」

「ち、違います!」

「んじゃ鍵閉めろよ。」

「分かってます!」

「腹出して寝るなよー」

「ハルは子供じゃありません!」

熱り立ったハルは、ドアを大きな音で閉めて、鍵を閉める音もベルの耳によく届いた。

そのまま靴を脱ぎ、ベッドに倒れこむように横になる。折角の休日ももう夕暮れ時になってしまっている。また出て行く気にもなれず、時間も時間だ。

今日は早くお風呂に入ってご飯も食べて趣味の時間に没頭しよう。

押入れに入っているつくりかけのぬいぐるみの製作に胸を躍らせながら、風呂掃除へと向った。

 

 

 

どしゃ、と、濡れたものが落ちる音を聞いて、ベルが先を越されたと舌打ちした。

「エースくーん。それ俺の獲物だっての」

「そんなの知らないよ。」

殺気が溢れんばかりに漏れ広がっている。トンファーの鋭利な光が、裏路地で一際輝きを放っているのは何故なのか。ベルにはそれはどうでもいい事だ。

ハルをさっさと部屋に戻し、ずっとつけてきた男達を早く始末してしまいたかったのだが、更に尾行してきていた雲雀に油揚げを取られた状態になってしまった。

「ねえ、コイツ等何?」

「あー、三浦ハルを襲おうとしてた奴ら。」

「ふぅん。」

剣呑な光が鋭く瞳に宿り、地に伏せている男の頭を踏みつける。

「どうしてやろうかな。」

「てかさ、お前今日仕事だろ?何暢気にこんな所に居るんだよ。」

ハルを助けたベルが、一緒にファーストフード店へ向う途中に雲雀からの視線と気配、そして殺気を感じていた。ベルがハルからシェイクを奪い取った時に、隠そうとしていた殺気が勢いよく漏れ始めた時には驚いたが、これは確信できた。

やっぱりコイツは本気なんだ。

bPホストだなんだ言われてるけど、戦闘でも結構それなりだというのは分かっている。一戦交えたい所なのだが、いかんせん、オーナーのリボーンが店の中でいざこざを起こすのは禁止だと言われていて中々機会が無い。

本来ならば自分がやめて、一人一人喧嘩を売ればいいだけの事なのだが、あの店にはザンザスがいる。

ホストとしてじゃなくて一人の男として憧れるカリスマ性、そして力、権力を持っている。色恋の惚れたではなく、その存在に惚れた。

スクアーロほど忠誠心は無いが、それなりに従おうという気持ちはある。

「あの子にちょっかいかけないでくれる?」

「ハルを助けてやったのに御礼の一つも言えないわけ?」

「何で僕が御礼を言わなきゃいけないのさ。」

「へーえ。」

こんな事なら三浦ハルを帰すんじゃなかった。此処に一緒に連れてくるか、それともホテルにでも連れ込めば更によかった。

「・・・ま、今日は結構、じゅーじつしたデートが出来たから王子は満足。」

「噛み殺す。」

適当に挑発の言葉を言ってみただけなのにこの反応。見てよどーよ。

もしこれで三浦ハルを奪っちゃったりして、惚れさせたりしたら俺の勝ち、全部勝ち。

そうなれば楽しいだろうなあ。悔しがる顔やら怒ってる顔やら・・・

「会話してて分かったけど、ハルはエース君の事なんて眼中に無い見たいだけど。っていうかウザい存在。」

「そう、君もこの男達と一緒に沈められたいんだね。」

瞬く間に敵意むき出しにしてきた雲雀に、ああ、今このタイミングなら殺りあっても問題ない・・・

ぞくぞくとスリルと血の匂いで気分が高まってきた所に、一発の銃声が放たれた。

たとえ人気の少ない場所とはいえ、いとも簡単に発砲してくる人間なんて一人しか居ない。ベルが振り返ると、そこには空を打ったように銃口は上を向いている、そして拳銃を下に下ろし、ポケットに突っ込んだ手は出さぬままこちらに悠然と歩いてくる。

「ご法度だぞ、雲雀、ベルフェゴール。」

「なーんでこんな所いるんだよパート2」

「血の匂いと殺気には敏感なもんでな、折角のデートを途中で切り上げてきたんだぞ。」

裏路地は、よくボンゴレのホスト達が喧嘩に使う場所だった。時々男を連れて戦っている最中に、こびりついていた血の色をよく見る。煌びやかな街の光が強ければ強いほど、裏路地や店の裏側の闇は強く、人の眼にはあまり届かない。

「客との喧嘩いいが、ホスト同士で殺りあうのは許さねえ。顔に傷でもついたらどーするんだ。儲けが少なくなるだろーが。」

「・・・ちぇー」

ベルが素直にナイフをしまい、雲雀と距離をとった。譲歩したベルフェゴールの態度に、雲雀も闘志が萎えてきたのかトンファーを握る手の力が緩んだ。

溜息を吐いたリボーンが、雲雀を連れて店へ戻れと言われ、ベルフェゴールの横を通り過ぎてリボーンの元へ向う。

 

「ホストが客に本気で惚れるなんて馬鹿じゃねーの?」

 

ベルの悪戯な挑発に、雲雀は眼を閉じて何事も無かったかのように歩いていく。

反応を見せなかった雲雀に、つまらなそうにベルも夜を迎え入れようとしている空を見上げて歩き出した。

 

 

 

 

何故ベル。

意味分からん。ベル意味分からん。

全体的に不安定、ベルのキャラ安定してないー

 

何か後半臨也っぽくなってる気がする。気のせいだといいんですけど・・・

 

とりあえずベルはハルの容姿がドストライク、

雲雀さんはベルの言葉に本気で否定出来ない事に気がついて・・・。

なんてね!(←

 

 

22万ヒットありがとうございましたー!

 

 

 

title 泣殻