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 どうでもよかった。

敵の守備の位置なんて、味方の声援の声なんて。

九回裏、ツーアウト。走者無しの追い込まれ。そして二対二の逆転チャンス到来。

バッターは我等がキャプテン候補。野球になると眼の色変えて、白球を睨み、叩き返す。

フェンス越しに、唾をごくっと飲み、味方も敵も緊張している。

あ、振りかぶった・・・・

ビュンッ

投手は最後の回に全力で、本当の本気で投げた。

バッターはそれを返した。空に

一瞬の静寂、フェンスを握り締めたまま固まったハル。あれ。ボールは?

向こう側。あっち。出て行った。

と、言う事は?

「は、・・・・はひーーーー!!」

「うおおおおお!すっげー!」

ハルと味方のベンチからの声が昼の空に高らかに響いたが、それに比例して、敵は皆呆然と立ち尽くして、白球が消えた場所を見ていた。

そんな敵の人達を簡単に素通りして颯爽と走る。爽やかな笑顔を振りまきながら、汗が輝いて見える。

「山本すげぇ!やっぱお前すげーよ!」

「はははっ!やりー!」

片腕を空に向けて仲間に叫ぶ。

爽やかな青春の一ページ。みたいなそんな笑顔に、感動とときめきを胸に秘め、試合終了の笛を聞いた。

 

 

 

「すっごかったです!」

ハルは大興奮と言わんばかりに両手をぶんぶんと振り上げる。それを軽く笑って

「そうか?」

と、まるで普通の事のように笑う。

「凄いです!だって、最後ホームランですよ!?サヨナラですよ!?もう、感動しないって方がおかしいです!」

あの白いボールは絶対に星になりたがっていたんですよ!と力説しだしたハルに、これも何も変わらずのほほんとした顔で、ハルって本当おもしろいのなー。と笑っていた。

そんな山本の顔を見て、剥れながら

「山本さんって、価値が分かってないと思うんですよね。」

両腕を組みながらうんうん。と一人頷いていた。

「どゆこと?」

「だってですね、ホームランばんばん打ちまくっている山本さんには、絶対に分かってないですよね」

「?」

いきなり不機嫌モードになったハルは近くにある公園に入っていく。夏休みだから子供が多い。じわじわとした湿気に諸共しない子供達は走り回っている。

ああ、汗が綺麗だなぁ。とか思いながら、山本はハルについていく。

「ソフトボールで三振して、皆に慰められていたハルなんて知らないんでしょうね・・・・」

開いていたブランコに乗ってふっと、哀愁漂わせるハル。

「アップダウン激しいな、ハル」

「急に思い出してしまいまして・・・感動がどんどん遠のいてしまいます」

「まーまー。忘れろって!な?俺折角勝ったのに」

「・・・おめでとうございます、でも忘れられません・・・どうしましょう?記憶消せないですかね?」

はぁ、と溜息を吐いてぎーこーぎーこーとブランコをこぐ、もう一つのブランコに山本も座って思いっきり漕ぎ出す。

ぐんっと足を伸ばして、直ぐに折りたたんで

「あー。気持ちよかったなぁ!」

「はひ・・・」

「すっげーやばくてさ、俺が最終打者で、これでホームラン打てたらいいよなぁとか思ってたらさ、本当に撃ててやんの!」

あっはっはっは。と、高らかに笑いながらブランコをこいでいく。このまま空に吹っ飛んで行きたいんじゃないかと思うくらい飛ばしていた。

ずっと笑い続けている山本に、壊れてしまったのか!?と思い、ブランコから退いて少し離れて叫ぶ

「ちょっと!山本さん!?大丈夫ですか?」

「んー?あー。ちょっとやばいかもなー!あははっ」

「・・・はひー!?」

ただならぬ雰囲気に、遊んでいた子供も集まりだす。

ねぇ、あのお兄ちゃんどうしたの

すっげー!早いっ!

きゃあっ!怖いぃ!

いけいけー!

何て、叫びながらも笑顔を絶やす事無く笑い続け、もう一回転するのではないかという所で

「ちょっと、退いてくれ!」

と、叫んでブランコから手を離して一回転、ブランコが、山本は二回転半、そして華麗なる着地。

ブランコは鎖ががしゃがしゃと鳴りながらゆらゆらと揺れていた。

呆気に取られていた観客は一瞬の静寂の後

おおおおおおおーーー!!

微妙に甲高い、子供特有の歓声が上がった。

グラウンドとはまったく違う声だった。もちろん、その中にハルの声が混じっていたのは言うまでも無い。

 

 

 

「すっごかったです!」

ハルは大興奮と言わんばかりに両手をぶんぶんと振り上げる。それを軽く笑って

「そうか?」

と、まるで普通の事のように笑う。

「凄いです!だって、ジャンプですよ!?ブランコですよ!?もう、感動しないって方がおかしいです!」

「何かさっきと同じじゃね?」

「いえいえ!もう感動です!感動がカムバックしてきました!」

「んー。ならよかった」

あはは、と、公園から出て山本家に向かっている道にて。今だ興奮が納まっていないハル。興奮がまた蘇り、どうでもいいソフトボールの思い出は無理矢理押し込んだ。もう逃がしてなるものか。

「それにしても、山本さんは本当スポーツマンというか、スーパーマンというか。すっごいですね!」

「ハル、さすがに照れてきた・・・褒めすぎだっって、それ」

「いえいえ!新体操をしているハルから見ても憧れですよ!凄いです!」

「サンキュー」

「そうです!アイス奢りますよ!暑いですし!」

「・・・・んー・・・・」

「アイス、欲しくないですか?」

「いや、違くて・・・・んー。」

「・・・・・・・?」

「・・・・・・あー、そうだ、それにしよう」

独り言を呟いて、また、あーそうだそうだ。うん。それにしよう。絶対それがいい。と付け足している。顎を掴んで頷いて、もちろんそんな姿に首を傾げてしまうのは当然の事だと思う。

「どうしたんですか?山本さん、アイスじゃないほうがいいんですか?ケーキですか?」

「んや、違くて・・・な、ハルちょっと行きたいところあるんだけど」

「はひ?いいですけど・・・」

「ん。サンキュ、じゃ、こっちな。」

にっこりと笑いながら指差して歩く。あまり歩いた事の無い道。

「何処に行くんですか?」

「んー?・・・んー。」

曖昧な返事が何回か飛び交った後、曲がって、歩いて、曲がって、歩いて、歩いて、曲がって。

「こっち、こっち。」

「・・・あのー。本当、何処に行くんですか?山本さん」

「んー?・・・んー。」

また、言葉を濁しながら曲がる。あ、こっちな。と呟きながら。もちろん、首をかしげる。一体何なんでしょうか。何処に行くんでしょうか。

ずっと疑問を持ちながら、山本の後ろを無心に歩いていると、急に立ち止まられ、背中に鼻が当たってしまった。

「山本さん・」

「あー。此処。」

「え?此処って、路地じゃ・・・」

ハルの顔に影が更に濃くなって、そのまま唇が触れ合った。

やっぱ、やわらけー・・・・やべ。本当このままラブホ行きてー。

などと思いながら腕を回してがっちりとハルを確保する

「んっ」

腕を掴まれたが、山本は負けるかっ、と、意気込み、舌を進入させてかき混ぜる。酸欠になったら負けなー。なんて、思っているのだろうか。とハルは思った。

「ふ、ん・・・っぅ」

ばんばん!

負け負け負け!!

叫ばれない代わりに肩を思いっきり叩く。野球の期待のエースにはあんまりしたくなかったのだが。

山本も肩をずっと叩かれっぱなしでキスをするのは、代価が大きすぎるんじゃないかと思ったのか、素直に唇を離した。

「ハルかわいいなー」

「はひっ・・・・」

息絶え絶えにしながら、いきなり言われた言葉に驚くしかない

「・・・もしか、してっ・・・これの事ですか・・・?」

「何が?」

「行きたい所って・・・」

「ははっ、そんなんじゃハル誘拐されちゃうぞー?」

「なっ・・・・!」

悪びれも無くそんな事を言う山本に。かあああ、と真っ赤になっていくハルの顔に大満足を通り越して、欲情してしまった。

「な、ハル。此処でやらね?」

「何を・・・・・・・しませんっ!!」

はっと気が付いて直ぐに全力否定した。

そんなハルを見て、軽く笑いながら

「アイス食わね?暑いし」

「・・・・山本さん、もちろん奢りませんよ。」

「わかってるってー、俺が奢るから」

怪訝そうに眉を寄せながら睨みつける。路地裏から出てから、暑い日の下で、背筋を伸ばしながら当たり前のように言った。

「・・・・何味にしましょうか」

「絶対ソーダがいい」

「ハルはやっぱりバニラですかね。」

楽しみですー。と、舌で唇を拭う姿に胸躍らせたのは隠さなかった。

「ん?バニラ?駄目駄目。ぜってー駄目」

「はひっ!何でですかっ」

「食うんなら俺んちで。な?」

「・・・んー・・・じゃあ、やっぱりチョコにします。」

「オッケー」

奢られるのだから文句は言えないハルに、心の中で笑いながらコンビニに急いだ。

陽炎がコンクリートの上にこびりついて離れていない夏の日。

 

 

あとがき

今更ながら、一貫性が無いと言うか。とにかく協調性?あれ。なんだろう

とにかくまとめる力が無いですね。私。

ずっと書いてて思ったのですが・・・・orz

 

これは黒山本なのだろうか。攻め攻めな山本というのは・・・・確かではありませんが・・・

むむー。これでいいのか、私。

山本=夏=青春=野球=山本という無限ループが生まれちゃって。

冬で夏の話を書くのはむずかすぃー。元々、山ハルがむずかすぃーよー。

あー・・・・グッダグッダだな。もう・・・・orz orz

 


title 泣殻