三浦ハル。中学生の時に沢田綱吉に惚れ、マフィアの妻となるため修行をしていた。がんばった。振り向かせる為にはどうすればいいかとか。料理の腕を上げていつでも嫁いでも良いようにとがんばったというのに。

あっさりと、笹川京子と結婚してしまった。

ショックだった。一人取り残されてしまった。そして、これからどうすればいいのか。

三浦ハルには沢田綱吉がすべてで、これからも、過去もすべてのはず。だからこれからが分からない。

真っ暗闇に放り出された気持ちだ。

だから、どうしようもないから。付いていく事にした。結婚できなくてもいい。隣に立てなくてもいい。とにかく、貴方がすべてならいい。と、そう思い。裏の世界に足を踏み入れた。

最初はボンゴレボスの秘書としてやっていたのだが、ひょんなことからボンゴレヴァリアーに左遷。

ああ、なんて、何て残酷。

 

 

「入れ、カス。」

ハルの手には数枚の紙切れという名の書類がある。部下が一生懸命にまとめてきた書類を持ってきたというのに。ドア越しながら、その苦労を叩き割っているように聞こえる。

新しい上司は、暴君のような傍若無人の化身のような人だった。

机に足を乗っけるわ、部下に乱暴するわ、気に入らない事があったら直ぐに切れるわ。

手に負えない。

だが、部下は上司を選べない。選べていたらずっとツナの所に居たはず。

「ボス、昨日言われていた書類です。」

「・・・・・・」

黙って受け取り、そして黙ってみている。何でなのだろうか、とハルは思う。書類を見る姿も何処か見下しているように見える。偏見。なのだろうか

「どうですか?何か問題は?」

「無ぇ」

「そうですか。それでは、失礼します。」

「待て。」

「はい・・・?」

振り返ると、今まで書類を見つめていた赤い眼がこちらを見つめている。一瞬ライオンを思い出した。

「何ですか?」

「さっきあのカスと何話してた」

「・・・・はひ?・・・・」

「さっさと言わねぇとカッ消すぞ」

「別に、たいしたことじゃないですよ。」

「・・・・俺の言う事が聞けねぇのか?」

ギンッと睨まれ、身体全体が凍った。

「なっ!・・・ドラマですよ。ドラマ!」

もう思い切っていつもの調子で言ってみる。だが、べーっと舌を出してしまった。

「ああ?」

「今流行ってるドラマなんです!一体誰がどうなるだとか。一体誰が死んじゃうんだろうかとか。です!」

「・・・くだらねぇ」

「だったら聞いてこないでくださいよ!」

馬鹿にするように吐き出された言葉に、怒りを覚えないはずが無かった。

ふんっ。

流れのままにドアの開けて、大きな音を立てて締めた。そのまま歩いて、角をまがって歩いて歩いて自分の部屋。

バタン、

「・・・・・・・・・」

ずるずる・・・

「・・・ハル、明日死んじゃうかもです・・・」

ずぅん。とのしかかる後悔の嵐。ああ、日頃のストレスの性で、ストップが効かなかった。

ボスはハルが気に入らないんでしょうけど。そんなプライベート、でも無いかもしれませんが、そんな事まで聞いてくるなんて

というか。スクアーロさん好きなんじゃないですか?あれ。聞いてきたりするとか。

いや、其れは無いです。絶対にありえませんね。うん。

少し震える身体を落ち着かせようと、眼を閉じて、深呼吸。けどまぁ。本当に怒っているのなら、ハルの部屋に押しかけてきて殺すはずだから。

せめて、命は明日に持ち越されたというわけだ。よかった。

 

びくびくしながら起き上がった朝。いつものように制服を着て、部屋を出て、いつでもボスからの攻撃が来てもいいようにいつも神経を張り詰めていたのだが、何と。今日はボスは居なかったらしい。

「何で早く言ってくれなかったんですか!?」

「えー。だって、そんな事が有ったなんて知らなかったし・・・」

「ああ、すみません。八つ当たりですから・・・」

「つーかよく言ったなぁ。すげーぞ。」

「凄くないです。無謀なだけです。」

「大丈夫よ!ハル。だってボスだもの。ボスがハルを殺したりなんか・・・ねぇ?」

「あ゛あ゛、それは絶対ぇ無いから安心しろ」

「何でそう言えるんですか。不機嫌になったら直ぐに気持ち切り替わっちゃって・・・ハル、骨も残らないかもです・・・」

今日は三人でお茶。神経を張っていて疲れたので、ココアにした。

仕事が一段楽したスクアーロもやってきて、ルッスーリアはさらに張り切り、ブラックコーヒーを入れた。

「とーにーかーく!ハル安心なさい?」

「無理ですよー・・・」

「そんな事しても無駄なだけだぜぇ?」

「無駄って何ですか!ハルの命はそんなものなんですかぁ!」

「人の話を聞け。」

うわぁぁ。と、泣き崩れるハルを見て、二人は顔をあわせ、溜息を吐いた。ありえないといっているのに。あのザンザスが殺すなど、微塵も無い。

それよりか、ハルを殺そうとする者がいれば逆に殺してしまう。

まったく気が付いていない。不器用なザンザスの愛情表現に。

「ハル、どうしたらいいんですかぁぁぁ!」

「知るか!って、俺に抱きつくな!鼻水がつくだろーがぁ!」

「酷いです!スクアーロさんの馬鹿ぁぁ!」

「う゛お゛ぉい、いい加減に・・・・」

ガンッ

「うごっ!」

「はひっ!」

抱きついていたハルも巻き添えになって机の残骸と共に地面に落ちた。ルッスーリアは自分のカップだけは死守したが、他のカップは無理だったようだ。

頭を抑えながら起き上がるスクアーロの下で、ハルも起き上がる。

丁度陽射しがいい場所で、逆光に見える犯人を睨む。

「何すんだぁ!」

「煩ぇ。カスが」

またもう一回殴られた。

「スクアーロさん!・・・いつもどうして・・・・はひ!」

首根っこをつかまれてそのまま立ち去ろうとしている。壊れた机と蹲ったスクアーロ、カップを片手に持ってこっちを見ているルッスーリア

あ、もしかして、殺されるんですか?ハル

「ルッ・・・ルッスーリアさ・・・」

擦れる声で助けを求めると、サングラス越しで分からないが、確かにウインクした。

口が動いた

 

がんばってね。ハル

 

何をですか!?

そう突っ込んでも無意味で、猫のようにただ大人しくしているしかなかった。

 

ボスの部屋に行くまでにいろんな事を思い出した。

今までのハルの行動。ツナさんへの思い。あの店のケーキおいしかったなぁとか。獄寺さん、喧嘩ばっかりしてましたけど、いいお友達でした。山本さん、まだ野球してるんですかね?京子ちゃん元気ですかね?花ちゃんいい彼氏見つかりましたか?スクアーロさん大丈夫でしょうか。ルッスーリアさん、ハルは何をがんばればいいんですか。絶望しかないじゃないですか。

本心気味にぽけーっとしていたら、廊下の真ん中で急に立ち止まり、おろした。

不思議に思いながら、掴まれていた襟を気にしつつ振り替える

「自分で歩け。」

貴方が勝手に持ち上げましたよね?

とは、言えない。大人しく返事をして付いていく。

あ、此処曲がったらプライベートルームじゃ?

とも、言えなかった。プライベートだろうが仕事だろうが、今のハルに選択肢は無い。

それに、どちらとも地獄の入り口には変わりは無かった。熱湯地獄か針地獄かという事だけだ。魔界の入り口が二つあると言う事だけだ。行き着く先は皆同じ。

思い足取りで豪華な扉の中に入っていく。

あー。やっぱり扉が豪華なだけあって、中はさらに豪華ですねー。なんて、思ってみたりして

さようならの時間です。最後の景色がこんな綺麗なところでよかったですよ。何処かの路地裏じゃなくて

大きなベッドが眼の前にあって、自家用の冷蔵庫は此処は厨房ですか?と思うくらい大きなものだった。

「カス。」

「・・・はい」

「お前を監禁する」

「・・・・はい?」

「じゃねぇとあのカス共とつるむだろ」

「はぁ?」

「手錠つけろ。」

「・・・はぁぁぁ!?」

普通に手渡された手錠を見て、一体何がどうしてどうなってこうなったのか、ハルは切実に説明が欲しかった。

いや、でもこれでいいのかもしれない。良くは無いが、これが罰と言う事なのだろうか。

でも、せめて一思いに殺して欲しい・・・

「・・・ボス、一思いに殺してください・・・監禁なんて・・・ハル・・・無理です・・・」

「あ?」

「生き地獄は嫌ですー!!」

手錠を投げ捨て、苦悩するように頭を抱えて蹲った。嫌です。無理です。殺してください!そんな屈辱耐えられませんんんんん!!

アホか。何言ってんだ。いいから顔あげろカス

わあああん!ごめんなさい!もう暴言なんて吐きません!ボスに逆らいませんからどうか許してくださいーーー!!

「・・・・るせぇ」

 

 

 

 

「ボスは直ぐ怒るのが悪いんです。アレを直したらダンディーな男性になるのに、酷いです。もう。」

「しししっ。いんじゃね?頭はたかれただけなんだろ?」

「女の子にまで手を上げるなんて・・・吃驚です。」

「ボスは女でも容赦ないけどー?」

「ですよね。酷いです。」

「男とおんなじ扱いするし、普通に殴ったり殺したり。」

「はひ!デンジャラスな事言わないでくださいよ!」

「・・・俺は言わないから。もー此処まで着たらボスが言うしかないしね。王子偉ぇー。」

「何言ってるんですか?ベルさん」

「んや、何でも。でも何で俺に愚痴ってんの?カマと鮫は?」

「それが、入院してるんですよ・・・だからこんな愚痴言うのもどうかと思いまして・・・」

「ふーん・・・・あり?それって俺今やばくない?」

ふと気が付いた事実に、頬杖をやめて立ち上がろうとしたら、背中に殺気が具現化でもしたのか、ナイフのようなものが刺さった。

恐る恐る振り返ると、自室から庭を睨んでいるヴァリアーのボスの姿が

紅い眼光にとらわれ、そのまま固まってしまった。

「ベルさん?」

「・・・・・ハル、お前さ、やっぱり監禁されたほうがいいよ。つーか監禁されろ。」

「はひ!?」

 

 

 

あとがき

意味不明ーーー!!

すみません。ツンデレってなんでしょうか!?ツンって何?デレって何!?

ボスのツンデレはドメスティックバイオレンスしか・・・

異常な愛情とか。しか。ねぇ?

 

すみませんでしたぁぁぁ!!

 


title 星が水没