『我ら天使三浦ハル。いつも我らを笑顔にさせてくれるそんな彼女に、我らは近づく事なかれ。話しかける事なかれ。
我らは一丸となり、彼女の幸福を死守すべきことに専念すべきである。
三浦ハルの幸せは我らの幸せ。それを心に刻むべし。
天使の笑みを絶やす事、これすなわち我らの世界崩壊を意味する
それらすべてを了解とし、我らの仲間になる事を誓えるか。
我ら、三浦ハルの守護神』
一枚の紙切れにそんな文字が手書きで書かれていた。そんな紙を汚そうに指先で抓んで見ている雲雀恭弥。
はんっ。
鼻で笑い直ぐにゴミ箱に捨てられた。
風の噂で三浦ハルファンクラブというのがあるのは知っていた。しかもそれはすべて不良達で結成されているらしい。
ごついヤグザから新米の不良まで、幅広い人選が三浦ハルファンクラブに入会している。
それは何故なのか。何故そんな輩を引き寄せてしまうのか。
溜息を吐くしかなかった。三浦ハルは雲雀恭弥と付き合っている。そんな噂を流したというのに。そんな事に怯みもしない愚かな男達に制裁を与えたのはほんの少し前の出来事。
前々から知っていた三浦ハルファンクラブ。その存在は公にはされては居ないものの結構な人数が会員になっていた。
だから自分ではなく、風紀委員に制裁に行かせたのだが、その時の僕はまだ深く調べなかったのだが、風紀委員の中にも三浦ハルファンクラブの会員の人間が居たのだ。
報告には壊滅した。と聞いたが、本当は闇に紛れ、鼠のように生きていた。
暗闇の中から眼を光らせ、何処からか三浦ハルを見ていたのだろうか。廃墟の中を歩きながら思う。
そして、何と、三桁も越したのだ。
会員の人数が。
三浦ハル。何故あの子はこうも変な輩を引き寄せてしまうのだろうか。
頭を抱えたくなるような問題に直面して、自分で態々此処まで来たというのに。考えるだけで引き返して抱きしめたいと思う。
疲労に似た重さを感じながら廃墟を歩く。瓦礫の中に響く自分の足跡の中に、まぎれている男の野太い声。
嫌なオーラが漂うその曲がり角を曲がり、更に歩くと聞こえてくる。
「我ら!三浦ハルへの愛さえあれば!隕石をも打ち勝てる力を持つもの!!」
「おおーーー!!」
「そうだそうだー!!」
「三浦ハルーーー!!」
「守護するにふさわしき者達よ!今日の成果はどうだった!?」
「はい!今日も異常なく!学校に登校、そして家にたどり着いてました!」
「よし!その詳細を言ってみろ!」
「朝、7時半に学校に登校、途中電信柱に当たりそうになりました!そしてこれがその時の写真です!」
ぴらっと掲げたのは一枚の写真。おおー。よくやったぞ下っ端!俺はやれば出来る子だと思っていた!
など、飛び交う中で、写真に写っているのは電信柱の前であたりそうになり、慌てて離れて辺りを見回している写真。若干頬が赤い。
「かっ!可憐だ・・・!!」
「ああ!守りたい!今直ぐに其処に行きたい!」
「馬鹿か!俺は電信柱になりたい!そしてあたって欲しい!」
うおーーーーーー!!!
本人じゃないのに、気持ち悪いと思った。鳥肌がたった。
ありえない。何コレ。気色悪い。全身が震えた。歓喜以外で震えたのは初めてだ。
もう恐怖と言ってもいい。恐怖だろうが歓喜だろうが、この虫ケラをどうにかしなければハルが・・・
そう思うと無性に腹が立ってきた。そうだ。あの子は僕のモノだというのに、何でこんな奴らがいるんだ。何で生きているんだろうか。死ねばいい。
ああ。そうだ。噛み殺しに来たんだった。
あまりの気持ち悪さに何しに来たのか分からなくなってしまった。もうドアとも呼べないドアを思いっきり蹴る。
ぐあ!と叫んでドミノのように倒れるむさくるしい男ども。
こんな狭い場所によく集まったな。と思う。
換気も何もしないで、むさくるしい。息苦しい。臭い。
「あー!お前は雲雀恭弥!」
「何だと!雲雀!?」
「雲雀って前の集会場を爆破したって奴か!?」
「いや、バズーカだったと思うが・・・」
「ダイナマイトじゃないのか?」
「花火だろーが!」
「え、地雷じゃねーの?」
「ちげーよボケ!」
「あぁ!?誰がボケだと!?」
「お前だお前!」
「ッ、コノヤロー!!」
せまっ苦しいところで喧嘩なんか始めたら
「ぐぁっ!痛ぇ!!」
「しかたねーだろ狭ぇんだから!」
「なんだそりゃーよぉ!謝れテメー!」
「っつぁ!俺関係ねーだろ!」
「うわっ足踏むなぁ!!」
「このっ!」
「うらぁぁぁ!」
なんて事になるのは当たり前で。呆れながら見ていたが、風化などしていない怒りは残っていたので、乱入して一人一人気絶させ。
結構な数の人間が横たわる狭い空間は更に蒸し返し、歩く場所が無いので人を踏みつけて歩く。
下から聞こえるうぇっ、とか、うぉ、とか。そんなうめき声を背中に受け、携帯電話を取り出した。
「・・・ああ、草壁?ちょっと海に沈めてほしいものがあるんだけど。」
雪が気まぐれに落ちてきた直ぐ後に、曲がり角を曲がってきたのは二人。
マフラーを直しながらにこにこして見つめる。寒いのかいつものポニーテールはやめておろしている。
「珍しいですねー!雲雀さんがデートに誘ってくれるなんてっ」
「うん。祝祭だからね。」
「はひ?」
首をかしげて
「なんですか?祝祭って。」
「なんでもない。」
「えー。なんでもない事は無いでしょう?だって雲雀さんが誘うなんて、ありえなかったですし。」
「そう?」
「そうですよ。メール見て夢かと思って頬抓っちゃったくらいですもん。」
「ふーん。また変な事したんだ。」
「変な事って何ですかぁ!」
「だって今時頬抓るなんて君くらいだよ。」
「そんな事ないです!テレビでもしてる人いましたよ!」
「ドラマじゃないの?」
「はひ、何で分かったんですか?」
「・・・・・・。」
腕を絡ませて驚いた顔をしているハルを見下ろし溜息を吐いた。真っ白だった。
そして、その背後の裏路地からは
「・・・もしもし、こちらB地点。今憎き雲雀恭弥と我らが天使三浦ハルが一緒に歩いている。しかも・・・腕まで組んで・・・!!」
電話越しに聞こえる叫び声、そして
「後をつけろ!」
そんな声が小さく響いた。
あとがき
わけわかめ過ぎて今切腹しそうです
とにかく、ハルファンクラブは雲雀さんによってまたまた壊滅。復活。壊滅を繰り返して、雲雀さんのハルを守る戦いはまだまだ続く!(ぇ
リクエストありがとうございましたぁっ
title 星が水没