「よーッス。ハル」

ハルのお友達。山本武さんがひらひらと手を振って近づいてきた。

「はひ、おはようございます!」

書類を胸に抱えて小走りで近づく。肩にタオルを掛けているところを見ると朝練なのだろうか。

でも今は仕事する時間なのだが・・

「山本さん?あの・・・」

「ん?あー。そうそう。朝練してたら遅刻しちまった。」

軽く笑い、頭をかいている山本さんに苦笑。それなのにこんなに暢気にしていて良いんですか?

「あ、やべ獄寺に携帯で呼び出されたんだった・・・んじゃーな。ハル」

ぽん。

軽く、そう、挨拶のようなこの頭にぽん。これが山本さん式の挨拶なんです。

ボンゴレ本部にいる山本さんより小さい人にされる挨拶。だから獄寺さんもぽんってされるのですが、凄く怒って毎朝毎朝喧嘩しています。

それをどこからか見ていたらしいのです。

何処からか眼を光らせているか分からない。監視カメラのような人です

 

 

 

 

「ハル。」

「恭弥さ・・・っん!?」

呼びかけられ、振り返ると腕を引っ張られどこかの部屋に。多分この部屋は会議室だろう。真ん中に机しかないシンプルな部屋だから。

観葉植物が角に4つあるので、本当は角にしたかっただろう。

角だったら腕を壁についたらもう袋の鼠状態になるから。ハルを心配してくれたのだろうか。スカートから出てる足に観葉植物のあの棘に当たったらいけないって。

やっぱり優しいですね。恭弥さん。

此処までは部屋に無理矢理入れられ、壁に押し付けられるまでのほんの一瞬の出来事の間に瞬間的に思った事。

もっていた書類は何とか持っていて、散らばったら埃がついちゃいますもん。埃なんて落ちてないと思いますが。

「山本武。」

「・・・・はひ?」

「触られてたけど」

「・・・・・え?」

いつ?

別に触られた記憶は無いんですが

「・・・・・・・」

んー・・・と、考えているハルにだんだんと眉が寄っていき、顔もだんだんと近づいてくる。

「ねぇ。」

「・・・・・・」

「毎朝されてたの?」

「・・・・・・」

「ねぇってば。」

「顔が近いですって!」

「いいから。答えて」

いつからか、雲雀恭弥さんはハルを問いただす時には顔を近づけて拷問まがいの事をすれば大抵、いや、全部しゃべると言う事を判明してしまったのです。

頭がいいですからね。きっとそんなの簡単に思いついちゃったんでしょう。

「えぇっと・・・山本さん?」

「そう。」

「・・・・・触られたって・・・毎朝・・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「ちょ、ちょっとストップ!思い出しますからそれいじょうはっ・・・」

「・・・・・・」

ほんの数センチの距離がまた数センチ開いた。よかった・・・

「・・・・・あ。ああ!アレですか?あの、挨拶の」

「挨拶・・・?」

ぴく、頬が動いた。

「はい・・・でも、他の人にもしてますよ?」

「他人は関係ないよ。」

「・・・お、横暴・・・」

「何か言った?」

「いえ、何でも・・・」

少しドスの効いた声に、彼もやはりマフィアになったのだと思ってしまった。

「・・・あれは、挨拶で、キスよりかはましじゃないですかっ」

「・・・キス?」

「へ?」

ごんっ

「っ・・・・!!」

「キスが何?」

唇よりも先に、鼻よりも先に額が思いっきり当たった。その反動で後ろの角のへこんだ壁にも当たってしまった。

それなのに平然としゃべっている恭弥さんが凄く恐ろしい

「ぅーーー!・・・英国では、キスが挨拶って、言うじゃないですか!」

「へぇ。そうなんだ。」

「恭弥さんってば、骸さんの親友なのに知らないんですか?」

ごごんっ!

「!!」

「誰が親友?」

今度はさっきよりも力強く、額に当たった瞬間壁に頭をぶつけてしまった。ビリヤードみたいな感じです。痛いです。ものすごく、痛いです

「うっ・・・・いたい・・・」

こん・・・

「アイツの名前出さないでくれる?腹立つんだけど。」

3度目の正直というやつでしょうか。優しく額に当ててしゃべる。いや、正直も何も無いんですけどね。何が正直なんでしょうか。分からなくなってきちゃいました。頭ぶつけたせいでしょうかね?そうですよね。全部恭弥さんが悪いんですよね。

「あ。」

思い出した腕の中にある書類。早く出さないと

「恭弥さん。すみませんが、書類だしたいので・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・お願いします・・・じゃないと獄寺さんに頭殴られちゃうんです!」

さっきからごんごんやられて、もう多分もう一回で死んじゃうかも。知れないんですよ。

あれは先週の出来事だった。ボンゴレ守護者全員共同の冷蔵庫と言うものがある。その中で区分されているスペースがあるのだが。ハルと獄寺は隣同士。だが、入れるものがあまりにもお互いの趣味と正反対なので間違える事はまずなかった。

しかし。

来客用にとケーキを買ってきた獄寺は、急ぎの用事があったらしく、自分のスペースにケーキを入れて置いた。それをハルが自分のだと思い食べてしまったのだ。

冷蔵庫を開けるともちろん白い箱は在るわけも無く、冷蔵庫を開けたまましばらく固まり。

「・・・っ!アホ女ぁぁぁぁ!!!」

昔と何も変わっていない呼び名がボンゴレ本部に響いたのだった。

それからというもの、前よりも若干冷たくなり、時々睨まれたりしていた。

そんな中。ツナに関係のある書類。ちなみに今日提出しなければいけない書類を一分遅れてしまったらどうなるだろうか。

あの指輪がたっくさんの痛い。本当に痛い拳骨が待っているだろう。丁度つむじの所を的確についてくるから性質が悪い。

「・・・殴られる?」

「はい・・・だから・・・」

「いいよ。」

「はひ・・・」

引っ付いていた額がゆっくりと離れて頭を撫でられた。

「悪い虫は潰しといてあげるから。」

「へ?」

「・・・・・・」

「・・・・も、もしかして・・・いや、もしかしなくても・・・・噛み、」

「早く行かなくてもいいの?」

殴られるんでしょ?

「はひっ!それもそうですね・・・でも、あの・・・・・・・・・っ・・・いってきます!」

人間基本は他人よりも自分自身。それをモットーとして生きて来ているのだ。もし、数m先にある小石に躓こう人がいても、呼びかけ、危ない!と、叫んだりはしないのだ。

もし、飲んだ空き缶を後ろに放り投げ、ヤグザの頭に見事にヒットした所を目撃しても、逃げて!と、叫んだりはしないのだ。

もし、雲雀恭弥の怒りの矛先が我が友人に向けられても、自業自得と心の中で思って見捨てるのだ。

「あ。駄目です。山本さんが・・・」

約一名は良いとしても、ただの純粋な挨拶で暴力を受けるのは駄目だろう。あの人は仕方が無い。昔の事をずるずると引きずって、アレでも男ですか!?

ポケットから携帯電話を取り出し、掛けてみる。相手はもちろん山本武。

 

 

 

同時刻。ハルが向かった道の正反対の場所でガキンッ、キンッ、どごっ。などという効果音が響いていたのはハルは知らない。

そして、山本武の携帯電話は実は自室に置き忘れていていつまでも鳴り響く音は無人の部屋で響く。

 

「ちょ、ヒバリ!まてって、お!」

「煩い。とにかく黙って殴られてよ」

「それはいくらなんでもっ!間違ったら死ぬかもしれねーしっ!なっと!」

「チッ、ちょこまかと・・・」

「ハハハ!ヒバリやっぱつえーなっ!って、危ねー、ハハハッ」

「・・・やっぱり君、ムカツク」

 

 

追記。獄寺隼人氏。顔に無数の怪我を負い。三浦ハルを更に威嚇している模様。

 

 

 

 

あとがき

最初はもっさんだけだったのですが。もうごっきゅんも出しちゃいましたw(ぇ

話の中で出たからもうこれは出してやろうと!

葉月様、リクエストありがとうございましたw

 

・・・・期待はずれだと、言っても結構ですよ・・・?(ビクビク

 


title アマデウス