「ねえ、聞いてるの?」

彼はおしゃべりが嫌いだ。口を動かすたび、言葉を吐きだすたびに眉間の皺が深く、視線も剣呑になっていくが、彼女は気にしていない。

腕組をした男の顔を覗き込むように問いかける。ぴくっ、とこめかみが動いたのを見えた。

「ねえってば。」

「煩ぇ」

「聞いてるのね。それでね、」

アルコールも入っていないと言うのに、よくもまあそこまでしゃべれるものだと、紅が引かれた唇を凝視し続けた。

その視線に気がつきながらも、今は不在の恋人の浮気への愚痴をしゃべり続ける。

「女の子と腕組んで歩いてる彼氏を見かけたらどうするべきだと思う?」

「殺してしまえばいい。」

「あら、アンタすっごい優しいわね。」

「何故そうなる。」

「?」

本当に分からないようで、彼女は小首をかしげる。ふわり、と大きな頭が柔らかく揺れた。

大体、と彼は思う。男の浮気でとやかく言う前に鏡を覗き込んで見ろと言いたくなる。お前のその頭は、自分自身の性格なんじゃないのか。爆発したような馬鹿みたいな頭を乗せていれば、男も萎えたのではないか。

根本的には女への悪口になっている事に気づき、そしてそんな事を言う必要性も感じず彼は口を閉ざし続けた。

必然的に彼女の口はマシンガントークをやめる事無く、眉を吊り上げて話し続ける。

「でも私その時何にも持ってなかったのよ。あーあ、今度からはマシンガン持って出かける事にするわ。」

「・・・・・」

「あ、マシンガンと言えば重力室にマシンガンというか、レーザービームをつけるってのはどう?」

「そんなもの修行の足しにもならん。余計な事をする暇があれば重力をもっと上げろ。」

「は?何言ってんの?私は外につけようって言ってるのよ。防犯として。」

「・・・・・」

先頭民族のサイヤ人がいるというのに何が防犯だ。

「マシンガンはねー、ちょっとアナログ臭いかしら?」

「・・・・」

「やっぱりレーザービームがいいわね。素敵。」

彼の脳裏にはかつて支配していた者の指先から出る攻撃を思い出していた。

もう傷跡も残っていない胸を見下ろす。

「・・・あれ、怒った?」

ぴりぴりとしている空気が、一気に凍りついたかのように固まった。彼女はまたそっと覗きこむが、何も言わない。

怒ったのか呆れたのか一体どんな心の機微があったのかは予想できないが、庭のテラスの椅子から立ち上がり、また重力室へ足を向けた男の背を黙って見送った。

何がいけなかったのだろうか。

覚めた珈琲に口をつけながら思案するが、我慢するように眉毛と眉間の皺しか動かなかった表情を思い出して顔を綻ばした。

「ほんっと、アイツってかわいいわよねえ・・・」

彼氏の浮気の憤りなど消え失せ、冷たい珈琲を嚥下したにも関わらず暖かい気持ちになった。

 

 

 

本当なれそめとか鳥山先生書いて欲しいわぁ・・・

あるんだったら是非教えてほしい・・・!

それにしても危ない・・・(文章的な意味で

 

 

 

title Dark Blue