どうしよう、何を言えばいいのか分からない。
とにかく、何でもいいからしゃべらないと。
「・・・・棗。風邪引くで?はよ部屋に戻らんと。」
平然と言ったつもりだ。
だけど、今の自分がどう見えるのかは分からない
不自然かもしれない 眼が笑っていないかもしれない
それでも、この空気から早く逃れたかった。
あ、喉が痛くなってくる
早く、戻って水分を・・・・
「・・・・棗。風邪引くで?はよ部屋に戻らんと。」
にっこりと笑って言った。
作り笑顔だって事は分かる。
不自然だってのも分かる だけど、それを口にしなかった
冷たいベンチは、俺の体温ですこし暖まってきた
だけどやっぱり冷たい
風もまだ吹いている
髪がなびく
あいつの髪の毛もなびく
栗色の髪がさらさらと背中から右に動く、風が止むと髪が背中に戻る
今気が付いた、コイツ、鼻が赤くなっている
そっか、コイツも寒いのか
だったらなおさら早く戻らないと
「言われなくても、そうするとこだ」
俺は冷たいベンチから腰を上げた
立ち上がってまた感じた
寒ぃ・・・・
「言われなくても、そうするとこだ」
嘘 絶対嘘や、ずっとそこにいるような雰囲気やったやん。
でも、それは言わない。今行こうとしている。
だったらそれでいい
早く、その傷を癒せたらいいのに
カーディガンをぎゅっと握り締め棗の赤い眼を見た
赤かった、血のように。
でも、とっても綺麗だった
それが、なぜかとても悲しく、泣きたくなった
何事も無かったかのように部屋に戻り、今度は普通に眠れた
その次の日に、孝助が来た。
暗闇にて
始まりの合図
あとがき
転校生の蜜柑と棗バージョンw
書いてみたかったw