ご主人の名前を少し弄って出来た自分の名前、それが凄く誇りに思っている事なんて、誰も知らない。

肩に乗ったり頭の上に乗ったりしていつもご主人を見てるんだ。ご主人の視点から見るものがとても興味があったから。ご主人が大切にして守っている並盛町。

ずっと前、独り言か分からないような事を言っていたけど、あれは自分に向けられて言ったのだと信じている

これが、僕の並盛。秩序を乱したら許さない。

頭の上に乗って屋上から見下ろす並盛町を見てぽつりと呟いた。その言葉に何故かわくわくした。ドキドキした。

こんなに広くて大きくて、どうする事も出来ないはずなのに、一人の人間が自分のと堂々と言えるご主人に、一生付いていこうと思った。

この思いが届く事は無いのだろうけど。

 

ご主人と一緒に居た応接室は、いつの間にかもう一人増えていた。最初来た時は凄く驚いた。ご主人もだ。元気でかわいい女の子、どうするんだろう、と思ってご主人の頭から離れると

「はひっ、やっぱりそうでしたか!貴方がこの子の飼い主さん!」

「は?」

「ずっと前飛んでいるの追いかけてたら後姿が見えまして、ツナさんに聞いてみたら此処だと言っていましたから」

だから来ました!と、無邪気な笑顔にご主人と自分はまた驚いた。ご主人の場合は呆れていたというのが正しいのかもしれない。

ご主人との付き合いは長いとは言えないけど、こんな子は傍には居なかった。

その時に、想像してみたりした。今の無邪気な笑顔とご主人の獣のような眼が一緒に居るのを。

けどそれは無理だった。普通にありえなかったから。でも、

「委員長さん、この子の名前はなんていうんですか?」

「それよりも君出ていきなよ」

「はひ?もしかして名前が無いんですか?」

「噛み殺すよ」

「委員長さんの名前は?」

「人の話を聞いてる?」

そんな二人の会話をドキドキしながら聞いていると、何だかご主人の機嫌が悪くなってきたので

「ヒバリ!ヒバリ!」

と叫んだ。

それはご主人を止めるという意味と、この子に名前を教えるという意味を込めて。

「はひ?ヒバリ?」

「ヒバリ!ヒバリ!」

「小鳥?」

「誰が小鳥だって?」

「はひ?・・・・あ、もしかして委員長さんの名前ですか?」

「だったら何。」

「そうですかー・・・・んー」

「それよりも君、」

「あ!そうです!」

またご主人の言葉を聞かない。本当に殺されるかもしれないと冷や冷やする。何で自分がこんなに冷や冷やしなきゃいけないんだろうか。

「ヒバードちゃんにしましょう!」

「は?」

「この子の名前ですよ、ヒバリさんなのでしょう?だったらヒバードで決定です!」

「・・・・・・」

ご主人は何も言わなかった。

そんな事があってから、ハルは毎日来るようになった。自分と遊んでいるときに感じる殺気。それに気が付いていないハルに、幸せものだなぁーと思いながらご主人の視線を無視する。最初はご主人<自分だったのが、一緒の時間を過ごすうちにご主人>自分になっていた。

別に、寂しいとか、そんな事は言わないけど。ご主人が今までに無いくらい楽しそうで。びっくりして、でもやっぱり嬉しくて。

そんな二人に気を使って出て行ったり。

本当は自分も混ぜて欲しいんだけど、ね。

 

「はひー!ヒバードちゃん、今日もプリティーでかわいいですねー!」

といって撫でてきた。最近変なんだ。ハル。いつもならご主人としゃべったりして楽しそうに笑うのに、眼をあわすだけでふいに逸らす。

自分がそれに気が付いているのなら、もちろんご主人も知っているはずで。

いつからか消えた殺気がこっちに向いている。何があったのか、まったく分からない。別に喧嘩したとかそんな事無かったはずなのに。

そうしているとご主人は風紀副委員長の人に呼ばれて出て行った。ぱたん、とドアが閉まったとたんにハルは息を吐いた。

本当にどうしたんだろう。顔も赤いし。

「・・・・ヒバードちゃん、どうしましょう・・・」

ハル、雲雀さんが好きみたいで、どうしていいか分からなくて。昨日気が付いちゃったんです。ふいにすきなんじゃないかって、ああ、どうしましょう。顔も見れなくなっちゃって、でも、見たくて、でも恥ずかしくて。雲雀さん、気が付いちゃったのかも知れません。好きとかそういうんじゃなくて、ハルが雲雀さんに何か思ってるって事、隠してるって事とか、それで不機嫌になっちゃって、そんな顔して欲しいわけじゃないのに。でもでも、恥ずかしくて、顔赤いし。

 

しゃべっているハルのいう事があまり分からなかった。ご主人が好きなの知ってるし、ご主人だってハルの事好きなのに、何で顔が赤くなっちゃうんだろう。病気?だから?感染したらいけないって思ってるのかな?

ご主人だったら、別に感染してもいいって言うと思う。

寂しそうで、何だか辛そうで、だから殺気飛ばしてみたりして、でもハル殺気とか気が付かないから。

ご主人も聞けないんだ。きっと。どうしよう、何て言えばいいんだろう、どうやって伝えればいいんだろうか。

「スキ!スキ!」

好きなのは分かってるよ。ご主人だってきっと

「ヒバリ!ハル!」

ねぇ、何だかすっごく不安なんだ。二人が一緒じゃないと。すごく寂しくて、ご主人じゃないけど辛いんだ

「・・・・あははっ、慰めてくれてるんですか?」

ありがとうです。といってまた頭を撫でてくれた。何か勘違いしてるけど、まあいいや。元気になってくれたみたいだし。ハルは何とかいいとして、次はご主人。

窓際に止まって窓を嘴でこんこんと叩くとハルが開けてくれた。

其処から飛び立って屋上に飛んでいく。ハルは不思議そうな顔をしてたけど今は無視。ごめんね。

屋上に行くとやっぱりご主人が居て、寝転がって珍しく寝てない。ずっと空を見てる。ふとこっちを見て気が付いたらしい。眼が鋭くなった。

ご主人の近くに降り立って、ご主人にもどうやって伝えようか。それよりも、ご主人、どう思ってるんだろう。

辛いとか寂しいとか、全部自分の想像で思ってしまったから、本当の所は分からない。でも、やっぱりいつも二人で居るときは凄く楽しそうで嬉しそうで、ご主人、そんな顔できるんだって思って。

「ハル!スキ!」

ご主人だってハルが好きなんでしょう?

「ヒバリ!ハル!スキ!」

好きだからそんなに不機嫌で、自分に殺気飛ばしたり、威嚇したり、って。どっちも同じだね。

「・・・何言ってるの。」

「ハルガスキ!」

「・・・・・・・・」

眼を見開いているご主人、始めてみた。

「・・・煩い」

また睨まれた。ぞくっ、と血の流れが逆流している感じ。考えるよりも先に羽を広げて飛び立った。あまりにも怖かった。恐怖だ。

それでも帰る場所は恐怖なんだけど。ご主人以外にご主人は居ないから。

それよりもどうしよう。二人好きなのに好きだって分かってないみたいだし。どうしよう。どうしよう。

空高く飛んでいる時に気が付かなかった。遠くから屋上のドアが開いたのと、応接室にハルが居なかったのを。

 

次の日、ご主人のいる応接室に帰ってみると、机の上に小さなクッションがあった。

「これ、君の。」

一瞬この部屋に誰か居るのかと思ったけど、此処には今ご主人と自分しかいない。

「ハルが君にって、作ったらしい。」

眼を合わせずに淡々と言うご主人。驚きと嬉しさが混じってしばらくクッションを凝視していると

「いらないの?」

といってきたのでクッションの上にぽすっ、と乗ってみる。柔らかくてハルとご主人の匂いがした。ご主人を見ると凄く嬉しそうな顔をしていて、それが自分に向けられているのがとっても嬉しくて恥ずかしくて。

クッションに丸まって顔を隠した。

 

チェックメイト

ああ、ご主人様

 

あとがき

愛さん・・・リクエストに添えてなくて本当にすみませんでした。本当すみません!orz

ハルが母親で雲雀さんが父親で、ヒバードちゃんが子供。と無意識に家族だと思っているヒバードちゃん。

ウチのヒバードちゃんは単語しか言えないと思う、あの並盛校歌は雲雀さんがめっちゃ教えて覚えたと勝手に思っております。