身を寄せて暖をとればいい。

原始的であるけれど、それは基本の基本で、基礎として太古の昔からあるわけで。

そっと肩に頭を乗せてみれば触れている部分は少ないというのに、どうしてこんなに熱く感じるのだろうか。

触れた部分からじんわりと広がる熱の波。頬にまで押し寄せて熱い。

 

「なー、寒くね?」

「はい。」

「だったら中に入ろうぜ。」

「いえ・・・もうすぐ雪降ってくると思いますし・・・」

「別に部屋から見ればいいじゃん。」

「いえ、降る所が見たいんです。」

 

吐く息は白かった。空から白が降るのを見たいと言う少女は曇天をきらきらとした眼で見上げていた。

重ねられた手の先は、仄かに血の色が見えた。皮膚の下、熱とは反対側の冷たさを示す赤色にそっと、こちらも冷たい指先をかぶせた。

決して温かくは無い部分を触れ合わせて、暫くするとじんわりと暖かくなった。

巻かれたマフラーに口元を埋めるようにして空を見上げる。

曇天は何も落としてはこない。

 

「ココアが飲みたくなってきてしまいました。」

「うっわ、我儘。」

「だって・・・暖かい飲み物が欲しくなって・・・」

「入ろうぜ。」

「いえ、でも、天気予報では降るって言ってたので・・・」

「それが後5分後か1時間後かわかんねーだろ?」

「・・・でも・・・」

 

ハルが冷たい指先を動かしてベルの手の甲を撫でる。

頬が赤く色づきながら、ベルから視線を逸らす。

 

「此処まで待ったんですし・・・」

「王子寒い。王子死ぬ。」

「無敵のプリンスが凍死してしまうのですか?」

「かっちーん。お前部屋に戻ったら殺す。」

「デンジャラスな事言わないでください!」

「お前だって十分デンジャラスな事やってんじゃないの?」

「何処がですか?」

「こんなクソ寒い日にずっとベンチに座らせてる事。」

「心頭滅却すれば火もまた涼し、ですよ。」

「日本の諺なんて知らねーよ。」

 

息を吐きながらもずっとそばに居てくれているベルにハルは顔を隠して笑った。

ハルが編んだ長いマフラーは二人一緒に巻ける程長い。ハルはベルの肩に頬を寄せて、満足そうに眼を閉じた。

 

「眠るな。死ぬぞー」

「ベルさんがいるので大丈夫ですよ。」

「なんだそりゃ。」

 

遠慮がちに絡まった指と指が桜色のように色づいた。吐く息はまだ白く、ベルは眼を閉じたハルの代わりに顎を突き出して曇天を見上げた。

灰色に視界をすべて染め上げられた。

空からひらり、と鳥の羽のように白い雪が一つ落ちてきた。

 

 

 

まとまりもなく終わらせた。

ベルハル意外と難しい・・・