「おら、100円。給料だ。」
神楽の手の上に落ちた銀色の物。
神楽は笑顔で礼をいい。
飛び出していった。
ソファーでテレビを見ていた銀時は神楽が出て行く音を聞きながら呟く。
「・・・気づいていないのかね?」
「おばちゃーん!酢昆布頂戴!!」
「ごめんよ。酢昆布は生憎今無いんだよ。」
「えー!?」
いつもなら買い置きがある駄菓子屋。
だが今日はそれが無いという。
「えー・・・んじゃ、こんにゃくゼリー10本頂戴。」
おばちゃんは笑顔で袋に詰めた。
神楽は100円払う前に袋の中を数える。
「おばちゃん。これ、一本多いヨ?」
「ん〜?これね。おまけ」
「え?」
「いつも買ってくれているから、ね?」
似合わない顔をしてウインクをするおばちゃん、神楽は100円だし
「ありがとっ!おばちゃん今日いいことあったアルな?」
笑いながら礼を言う。
手を振って神楽が見えなくなってため息をついた。
「気づいて、無いね・・・・」
「姉御〜〜!」
「あら、神楽ちゃん」
買い物をしたらしく、手の中にはにんじんやら卵が見えた。
「姉御重そうアルな・・・私が持ってあげるネ!」
「あら、いいのよ。それより、帰ったら一緒にバーゲンダッツ食べましょうか?」
「マジでか!嬉しいアル〜!」
いろんな話を弾ませながら道場に行く。
道場の前で新八がこそこそ道場から出て行く姿が見えた
「あれ?なんでここにいるアルか?」
「え!?あ、えーと。銀さんに来るなって・・・・でも!今から行ってもいいって・・・」
「ふぅん。ま、お前なんかどうでもいいネ」
新八を通り過ぎ、道場へと入っていった。
そのときに新八とお妙は眼を合わせ、お妙は頷いた 新八も頷き走り去っていく
弟が見えなくなるまで見ていたら
「姉御〜!どうしたアルか?」
道場の中から少女の声が聞こえる
「ううん。なんでもないわ」
お妙は返事を言うと、秋風の冷たさに体を振るわせた。
万事屋にもどった新八は玄関を開けて中に入る
「新八。あれ、持ってきたか?」
「はい。もちろんですよ、僕をただのメガネだと思わないで下さいよ」
「ん。そうだな、反省するよ」
「その発言は、今僕が言うまでただのメガネとして僕を見ていたんですね?」
「ん。そうだな、反省するよ」
「おいー!!!」
突っ込んでいる間に銀時はキッチンに行く。
新八は肩を落として、後を付いていく。
「ねぇ、姉御。」
「ん?どうしたの?」
バーゲンダッツを食べ終わった後、神楽はこたつに入ってテレビを見ていた。
視線はテレビに向けられたまま、お妙もテレビに目を向けている。
「今日、皆変アル。」
「え?」
「だって、なんか、皆おかしいネ。おまけしてくれるし、それに新八だって変だった。そして、姉御も・・・・」
神楽はチラリとお妙の方を見た。
この反応・・・もしかして・・・・忘れて・・・・?
お妙はびっくりした表情で時計を見て、ため息をつき、こたつから出た。
「ね、神楽ちゃん。いこうか?」
「え?」
「万事屋。」
万事屋の前に来て、チャイムを鳴らす。
しかも二回
いつもなら神楽がいればチャイムも鳴らさずに入るのに。
神楽は不思議そうにお妙を見上げる
笑顔でごまかされた
「んー。いいぞ」
何が?
鍵が開く音がしてお妙は開ける。
何で鍵を閉めてるアル?
そんな疑問は数秒後に分かった。
パンッ!!
クラッカーの音がした。
「「「「「「「「「誕生日おめでとう〜〜!!!!」」」」」」」」」
神楽はぽかんと口を開けたままクラッカーの中身が重力で落ちる様子と、皆の笑顔が並んでいるのを見ていた。
右からマダオ、、土方、近藤、沖田、山崎、新八、銀時。
「・・・・・・え?」
「いや、誕生日おめでとー・・って。」
「・・・・・思い出したネ」
「だろ?」
「でも、私の誕生日は昨日ヨ?」
その場に沈黙が流れた。
「えええ!?ちょ、えええええええ!?」
近藤が叫びだした
「テメー、煩せーんだよ!こっちだって叫びたいわ!!」
「でもでも!!今日だっておしえてくれたじゃん!お前じゃん!全部たくらんだのお前じゃん!しかも皆に言っちゃったじゃん!『今日は神楽の誕生日なんで、さりげなくプレゼントをよろしく』って!!」
「どっちも静かにしなせェ。」
沖田が珍しく仲裁に入る
「そうだよ、せっかくのパーティなんだから、ね?二人とも仲良く・・・」
「うっせーよ、マダオさんのくせに!」
「そうだよぉ!?マダオは黙っててね?」
「お前はただのゴリラじゃねーか」
長谷川は近藤に言った。
「ちょ、ちょっと!皆さんいい加減にしてください!」
「チャイナさんを楽しませる為にパーティをするのに・・・」
山崎と新八が止めに入るが皆やめようともせずに巻き込まれた
天井に飾り付けてあったおりがみで作った輪の鎖が神楽の頭に落ちる。
「・・・・・」
神楽はただ皆の事を黙ってみている。
「・・・・ケーキは・・・」
「へ?」
「ケーキはあるんだろーなっ!!」
神楽が笑顔で叫んだ 皆喧嘩は止まった。
「・・・ふふっ、あるわよ。」
お妙が机を指差した。
手作りらしい、ちょっと歪なケーキ。
そして、酢昆布が一本立っている 板チョコの上にホワイトチョコでこう書いてあった。
『神楽たんじょうびおめでとう』
そのケーキを見た神楽はゆっくりと近づいた。
ケーキを持ち上げる
「これっ、銀ちゃんが作ったアルか?」
「え?・・・うん。」
「ありがと、銀ちゃん」
神楽は微笑んでお礼を言う、心から言っている言葉だった。
「これ、皆で食べるアル!ぱっつぁん。包丁!」
「ぱっつぁん言うな!」
台所に行き包丁を持ってきた
「じゃ、切るアルよ〜〜!」
まず半分を切った。
お皿にその半分のひとつを乗せる。
「じゃ、これは私のアル。」
「おいおいおいおいおいおいおいおい!!!!!」
「どうしたアル?」
「ふっざけんな!俺が丹精込めて作ったケーキだよ?それをさー、半分も取っちゃって!ふざけてんじゃねーぞ!」
「こ・れ・は・っ!私の誕生パーティアル!私が主役ネ!だからいいアル!」
神楽はそう言い放つとフォークにケーキを突き刺して一口で食べた
「あっ!テメ汚ぇ!!」
「んふふ、ほひしいはふ」
んふふ、おいしいアル
「はけぇ!吐き出せ!!」
首を締め付けるが神楽が投げ飛ばした。
神楽の腕力によって壁にめり込んでしまった
「まったく!銀ちゃんは意地汚いネ!」
そうしている間にも沖田が食べようとしているのを見た新八
「あっ!ちょっと!沖田さん!?」
「あ、お構いなく。勝手にしまさァ」
「意味違うだろ!しかも分け分からねーよ!!」
新八が突っ込むが、沖田は4/1食べてしまった。
「あー!あと少ししかなくなっちゃいましたよ!」
「なんだとぉ!?・・・・んじゃ、これからは争奪戦といこうじゃねぇか」
銀時が眼を光らせて言った。
皆は頷き、戦闘態勢をとっている そこは戦場になってしまった。
だが、神楽は笑っていた。
戦いが始まった。
神楽も始まったとたんに入ってきた。
「私がケーキを貰うネ!!」
「はぁ!?っざけんな!俺のだ!」
神楽はケーキに手を伸ばした。
皆があーっと叫んだ。
「・・・・なんて、やると思ったアルか?」
「え?」
「このケーキは、今日のお礼ネ。」
にっこりと笑っていった。
「本当に、ありがとうネ!」
パピーへ
パピーは、私の誕生日を覚えていましたか?
地球の皆は一日違いだけど覚えていてくれました。
そして、パーティも開いてくれて、とっても楽しかったです。
皆で騒いで、皆で笑って。
プレゼントは貰えなかったけど、 その時間はね、すっごく、すっごく楽しかったの。
神楽より。
Happy Birthday!!